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「人」「食」「社会貢献」を起点にビジネス総合力を身に付け、即戦力として活躍
株式会社engine
代表取締役
轟 貴弘 / Takahiro Todoroki
「空間デザインを依頼されたら、必ずその店を繁盛させる、という想いがある」
そう話すのは株式会社engineの代表取締役社長、空間デザイナーの轟貴弘だ。
空間デザインを中心に、物件探しから設計、施工管理に至る建築デザイン事業を主軸としているengine。小売店、クリニックなどから大規模なオフィス、ホテルまで、手がけるジャンルは幅広い。中でも得意としているのが飲食店だ。開業から10年で9割が廃業するといわれる飲食業界だが、同社がこの20年で担当した飲食店135店舗のうち、110店舗は現在も営業を継続。一般的な廃業率に反し、8割以上のクライアントが店舗経営を維持している。
轟自身もまたラーメン屋、バル、焼き鳥屋などさまざまな業態の店舗を運営。客層や立地など、多角的な視点から飲食ビジネスを分析し、実体験を通して集客のノウハウを学んだことで、人気を集める店作りのメソッドを習得した。
店舗をデザインする際、轟がもっとも心に留めているのは店を訪れる客、つまりカスタマーの存在だ。
「飲食店のメインコンテンツである料理の味やメニューと同じくらい、空間が生み出す雰囲気はカスタマーにとって大切です。トレンドだけを追いかければいずれ陳腐化するし、ゴージャスに作り込めばいいというものでもない。その店でしか体験できない、心地よくて印象に残る空間、そしてオリジナリティの高いオンリーワンな空間を作らなければ、何十年も続く店にはならないんです」
飲食店だけでなく、ホテルやオフィスでもベースの想いは同じだ。利用者のことを第一に考え、その人たちが快適な時間を過ごせる空間作りに努めている。どういったシーンでもカスタマーファースト、ユーザーファーストの姿勢を貫く轟。その想いが強すぎて、時にクライアントとぶつかることもある。
「主役となるのはクライアントではなく、その場を訪れるお客様です。だからエゴや主観的な意見ばかりのクライアントや、カスタマー目線を無視した要望に対しては、はっきり『できない』と伝えます。それで怒りを表すクライアントももちろんいます。でもお互い、『たくさんのお客さんに愛される空間作り』という共通の目的があるはず。思いの丈をぶつけ合うことは、いいものを作るためには不可欠です」
弁護士を目指し法学部に進学した轟。しかし「自分の本当に好きな道に進みたい」と、幼い頃から身近にあった音楽のプロになる夢を抱き、在学中に渡米。ブルースミュージシャンとしてオーディションを受け続けたが、思うようには芽が出なかった。夢半ばで帰国しようとした頃に訪れた、洞窟の中に作られたバー。その、自然の岩肌がむき出しになった内装に強い衝撃と感銘を受け、轟は建築の世界に入ろうと決意する。それが空間デザイナー轟貴弘の原点だ。
帰国後、独学で建築士資格を取得。就職したインテリアデザイン会社の倒産を機に独立、後のengineを設立した。会社に勤めていたのは3年ほど。実績も経験も足りない自覚があったが、長年打ち込んできた音楽作りの考え方を空間作りに置き換え、武器にした。
「曲は聴き手を思い浮かべながら作るものです。テンションを上げたいときに聴く音楽ならさまざまな楽器音を入れてテンポよく仕上げるし、落ち着いた場面で聴く音楽なら緩やかな曲調の優しいメロディラインにします。空間デザインも同じ。その場所を訪れる人の感情にフィットした空間を作ればいいのだと思いました。かなり我流な方法で今日まで来ましたが、だからこそ唯一無二の空間を作り続けてこられたという自負もあります」
轟はその活躍の舞台を海外にも広げている。JINYAブランドの海外進出1号店を、土地探しからサポートし、2010年にハリウッドでオープンした「RobataJINYA」は、海外セレブも多数訪れる世界的名店となった。これを機に海外企業からのオファーが急増。上海のバー「Speak Low」などの飲食店だけでなく、キャリアショップやリゾートホテルなど、多様な空間作りに取り組んでいる。
海外のプロジェクトに携わって轟が痛感したのは、日本建築の緻密さだ。「ディテールに神が宿る」と教わりながら育った日本の建築家や職人は、一目では分からないような細かな作業にも手を抜かない。
「正直どの国の施工会社も適当なんです。見た目が一緒なら造り方は何でもいいだろうという考え方。現地の人たちにジャパンクオリティを理解してもらうのは大変ですが、それだけ日本の技術は素晴らしいんだと、誇りにも思います」
国内外問わず、その名を馳せた轟だが、夢は尽きない。コロナ禍の収束後にはアメリカ・中国・ヨーロッパに拠点を置き、世界中のオファーを受けられる体制を整える構想だ。
「海外の仕事は本当に楽しい。これからも世界中を動き回って、一生デザインの仕事をしていくつもりです。そして他国と比べても突出して素晴らしい日本のデザイン力やクリエイティブ力を、当社を通して世界に発信していきたいですね」
インタビュー・執筆:堤真友子/編集:勝木友紀子
撮影:後藤敦司
「人」「食」「社会貢献」を起点にビジネス総合力を身に付け、即戦力として活躍
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