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ストーリー代表・CEO

都市緑化の技術で、クリエイティブする空間で、人と人とをつなぐコミュニティをつくる

最新ストーリー代表_東邦レオ株式会社

CSV経営を基盤とし、人が主役になり場の価値を高める「コミュニティ・ディベロップメント」に取り組む

吉川 稔 / Minoru Yoshikawa
東邦レオ株式会社
代表取締役社長

自分のためではなく社会のための仕事を。創業時から約60年続いてきたCSV経営

床材や壁材に使用される建築材料「パーライト」の製造・販売・施工を手がけるメーカーとして、高度経済成長期の1965年に誕生した東邦レオ株式会社。その後、パーライトの土壌改良効果に着目した2代目の社長が緑化事業を立ち上げ、屋上や壁面などの都市緑化で業績を拡大してきた。

2016年、3代目代表取締役社長に吉川稔が就任。「グリーン」を軸に、インフラ、カルチュアルエンジニアリング、ディベロップメント、ライフスケープの4領域を掲げ、集合住宅の植栽管理やパブリック空間の活性化、コミュニティづくりなど、さまざまな事業を展開している。

社長就任前、東邦レオの会社顧問を務めていた吉川。月1回東邦レオを訪れ、社長(当時)と新規事業の立案や今後の方向性などを話し合っていた。その中で発した一言がきっかけで、社長を任されることになる。

「東邦レオには長年培ってきた都市緑化などの技術があり、盤石な財務力がある。ここにクリエイティブを足したらきっとおもしろい会社になる」

急展開ではあったが、吉川は「絶対うまくいく」という確信があったという。

「もともと創業者と私の考え方が見事に一致していたんです。創業者は自分のためにお金儲けをするのではなく、『会社のお金をいかに社会のために使うか』を考えている人でした。私も、社会的に意義のあることで事業を成したいと思っていました」

創業時の社是である「吾々は社業を通じて社会に貢献することを第一の生きがいとしよう」が、今でいうCSV経営そのものだと気付いたのは、実はごく最近のことだ。CSVとはCreating Shared Valueの略で、「共通価値の創造」と訳される。

「仕事を通じて自分を成長させ、仕事を生きがいにしていく。それは今の時代に求められている働き方です。自分らしい生き方のために仕事が存在する。自分のためにする仕事よりも、誰かのためにする仕事の方がプライドを持てるし、深い達成感を得られる。創業者の思いを想像し、その心と一体化させる。いわば“イタコ型”の経営なのです」

エキサイティングなファッション業界から、本当にやりたい仕事探しへ

吉川は1965年、大阪生まれ。学生時代は農学部でクローンの研究をしていた。研究室はいつも研究費が足りないと困っていたため、将来はクローンやバイオテクノロジーを専門にしたベンチャーキャピタルを起業しようと考えていた。

まずはお金の勉強をしようと銀行に就職。仕事を通じてファッション業界の人脈が広がり、32歳でライフスタイルビジネスのベンチャーキャピタルを起業した。その後、投資先企業だった世界的高級ブランドのセレクトショップの経営を担うことに。東京・六本木できらびやかな日々を送っていた。

転機となったのは2011年の東日本大震災。吉川45歳の時である。

「ファッションの世界はおもしろく、毎日エキサイティングでした。しかし同時に、ぜいたくや虚栄心を満たすためのビジネスに少し疑問を感じ始めてもいました。東日本大震災をきっかけにその小さな疑問が明確なものになったのです。何のあてもありませんでしたが、会社を辞め、フリーランスになりました」

車がほしい、服がほしい、家がほしいといった所有欲がなくなっていく――。吉川は世の中の風向きが変わってきたことを感じ取っていた。事実、古着やフリマアプリが流行るなど、若い世代を中心にモノに対する執着は薄れている。

「代わりに、お金では買えないもの、例えば『人とのつながりの場』や『コミュニティ』、あるいは『環境』、そういった人々の心に訴えるものが重視されるはず。そこに関わるビジネスをやりたいと思いました」

その後5年、吉川は東邦レオの社外顧問をはじめ、上海の開発プランニングなど、請われるままにさまざまな仕事に従事した。人々が求める“風”をとらえ、そこから発想して仕事にする。トレンドに着目するという意味では、吉川にとってはファッションと同じなのかもしれない。

緑化自体が価値を生み出すのではなく、そこから育つコミュニティが価値を持つ

都市緑化で第二創業した東邦レオは、断熱建材の責任施工と都市緑化資材の販売を主業務としてきた。第三創業では、単に緑の量を増やすだけでなく、集中豪雨時の雨水対策に緑地を活用するなど、防災や減災対策としても「グリーンインフラ」の技術・サービスを提供する。植物の生育、土壌の調査・分析、植栽の基盤整備のすべてにおいて、35年以上にわたって蓄積したノウハウが活かされている。

また、技術の提供だけでなく、緑のある街、空間をつくり「コミュニティ・ディベロップメント」に取り組む。建物や空間などのハードを利用する人々を主体としたコミュニティの企画・開発である。建物ありきでスタートするのではなく、まずはイベントなどを開き、どれだけのスペースが必要でどんな業態をやるべきか、実際に集まった人々を見て、時間をかけて開発計画を立てる。

「これまで、緑化の技術で社会貢献をしてきましたが、緑の量を増やしても、それは根本的に価値を生み出しているわけではありません。街の中にある緑はあくまでも脇役。緑があって人が集まる。そこに人と人とのつながりができ、コミュニティが育つことで場の価値が高まる。集う人たちが主役なんです」

緑に人が集まり、人と人がつながる幸せな場をつくりたい。吉川の考えるCSVを最初に形にしたのが、東京都千代田区九段北にある「kudan house」である。1927年に建てられたスパニッシュ様式の旧山口萬吉邸を、歴史的な趣を残したままリノベーションし、2018年、会員制のビジネスイノベーション拠点としてオープンさせた。約290坪の広大な敷地には、建物のほかつくり込まれた日本庭園も残る。

「日本は、地価が上がってきたら古い建物を潰して建て直すスクラップアンドビルドの国。それが一番儲かるので、当たり前に行われています。でも、私はそれでは駄目だと思っています」

高度経済成長期にできたニュータウンの高齢化問題にも取り組む。全国各地にあるニュータウンでは、50年前に入居した住人たちが高齢になり、空き室が増え、寂れ、街として衰退している。九州最大級のニュータウンだった「日の里団地」(福岡県宗像市)もその一つ。

東邦レオはその再生プロジェクトに参加し、1棟を丸ごと買い取ってリノベーションした。もともと居室だったところにクラフトビールの醸造所や保育所、カフェなどをつくり、2021年、地域の交流拠点「ひのさと48」として生まれ変わらせた。

古い建物をリノベーションして保存活用し、収益を生むものに価値を高めていく。日本の「捨てる文化」に一石を投じた事業だ。

社会的に意義のある仕事をし、社会のためにお金を使うことが格好いい。そんな文化をつくりたい

吉川には、日本文化を世界に広げたいという想いがある。例えば日本庭園は、日本ならではの美として、世界の富裕層にリスペクトされ愛されている。庭づくりの技術を使った日本的な空間の使い方で、世界中で街づくりのプロデュースを展開したいというのだ。

「庭師は土地の持っている景観、空気をどう表現するかを、職業的にやっていて、その技術はまさに芸術です。日本庭園にあるような葉の音や匂い、鳥のさえずり、セミの鳴き声、湿度。目に見えるものよりも見えないもの、五感に訴えるものが空間の価値を生みます。形のある建物だけでなく設計では描けないもの、そこに存在する空気をデザインしたいのです」

さらに建築家の隈研吾氏と組み、リアル空間だけでなく、メタバースをつくる構想も進めている。国内だけでなく世界にある複数のリアルな場所をメタバース空間につなぎ、商店街のような人と人をつなぐリアルコミュニティを創ろうとしているのだ。編集力で人のつながりをどう開発するか。目指すのは、不動産を持たない新しいタイプのディベロッパーである。

「Uberは会社自体で車を持っていない、Airbnbは宿泊施設を持っていない。それでも成り立っています。つまり、同じように不動産を持たないディベロッパーが、これから絶対存在することになるでしょう。私が社長としてやれる期間、10年以内には、半分以上の利益が日本国外で成り立つ企業に変貌させていきたいと考えています」

実は、吉川が社長に就任して以降、売上は30%近く下がっている。それは仕事を選び、人を選ぶことを徹底してきたからだという。

「誰と仕事をするかが大事。儲かるか儲からないかよりも、意義があるかどうか。この人とだったらやりたい、もしくはこの意味のある場所だったら絶対やりたい。儲かるけどほかの会社でもできることなら、そちらにお任せします。それはCSVと同じで、自分たちにとって価値のある仕事を厳選するということです」

吉川は東邦レオを大きくすることを目的にはしていない。しかし、「技術と財務力にクリエイティブをかけ合わせることでブランドになる」という持論を実証するためには、成長しなければならないとも考える。

「ブランドになれば会社は伸びるし、働いている方々もやりがいを持てます。そのうえで、得られたお金を自分のためでなく、社会のために使うことが格好いいんだという文化をつくりたいですね。儲けたお金を意味のあること、価値のあることに使う企業であれば、多くの人から愛されて残っていくと信じています」

公開日:2022年12月23日

Profile

1965年10月、大阪生まれ。
1989年、神戸大学農学部卒業、住友信託銀行に入社。
2001年、セレクトショップの株式会社リステアホールディングス取締役副社長。バレンシアガジャパン取締役。
株式会社リステアインベストメント(ゴールドマンサックスとJV)代表取締役。
2010年、クール・ジャパン官民有識者会議委員。
2016年7月、株式会社NI-WA創立。代表取締役社長に就任、現職。
2016年11月、東邦レオ株式会社代表取締役社長に就任、現職。

Contact
大阪府大阪市中央区上町1-1-28

Credit

インタビュー:垣畑光哉/執筆:松井明子/編集:室井佳子
撮影:後藤敦司

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