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時期尚早と言われても、信じた道を進め。ビジネスチャット「Chatwork」誕生秘話

最新ストーリー代表_ Chatwork株式会社

国内利用者数No.1*のサービスは、
社内の猛反対にも負けず、たった一人で始めたものだった

山本 正喜 / Masaki Yamamoto
Chatwork株式会社
代表取締役CEO

社運を賭けた新規事業で大失敗。もう次はコケられな

コロナ禍で一気にリモートワークが社会に広まった2020年代。ビジネスチャットツールを多くの企業がコミュニケーション手段として利用するようになった。現代において必要不可欠になりつつある、ビジネスチャットの開発・運営会社として大きな存在感を放っているのが、Chatwork株式会社だ。同社が展開するプロダクト「Chatwork」は、国内利用者数No.1*。導入企業は354,000社(2022年3月末日時点)を突破し、特に従業員300名以下の中小企業において圧倒的シェアを誇る。

「Chatwork」は、同社で代表取締役CEOを務める山本正喜が、CTO時代に発案したものだ。今でこそ人々は当たり前にチャットを使いこなしているが、山本が「Chatowork」を企画した2010年当初は、ビジネス専用のチャットツールは世の中に存在しなかった。そんな時代にまったく新しいプロダクトを考えられたのは、同社にある社内環境がヒントになっている。

「当社はインターネット黎明期の2000年に、まだ学生だった兄の山本敏行を中心に創業した会社です。当時、兄はアメリカのロサンゼルスにおり、私は東京。海を越えて仕事のやり取りをするのが当たり前の環境でした。国際電話は気軽にかけられないし、メールだとタイムラグがある。そこで使い始めたのが、個人向けに提供されていたSkypeでした。テキストでタイムリーにやり取りができるおかげで、業務に欠かせないツールになりました。ただ当時のチャットはITに詳しい一部の人たちが使うもので、一般向けではありませんでした。そこからおよそ10年で技術は大きく進化。2010年頃には最新技術を応用すれば、よりたくさんの人が安全にビジネスで使える予感がしました。チャットの便利さを一番に分かっている私たちなら、社外に向けても良いプロダクトがつくれそうな気がしたんです」

「Chatwork」は、同社がそれまで約10年にわたって社内で使い続けてきたからこその発想。社内の運用ルールなど、単に技術のことだけではなく、ビジネスに活用していくうえでの豊富な知見を保有していることも大きなアドバンテージになると考えた。しかし、山本が企画した2010年当初は、役員・社員のほとんどが賛同してくれなかったという。

「当社は創業期に検索エンジン登録代行事業や、SEOツールの提供、ウイルス対策ソフトの販売代理業などを手がけ、コンスタントにヒットを出し続けていました。しかし、社運を賭けたある新規事業でビジネス化に失敗。大きな損失を出してしまった時期があります。事業成長に急ブレーキがかかったことで、社内のムードが一変。なんとかこの状況を打開したいものの、次は失敗できないという閉塞感から、新たなチャレンジに踏み出しづらい時期でした」

* Nielsen NetView 及びNielsen Mobile NetView 2021年4月度調べ月次利用者(MAU:Monthly Active User)調査。調査対象47サービスはChatwork株式会社にて選定。

社内の猛反対にも挫けず、たった一人で開発をスタート

「商品としての価値はある。でも事業として成功させるには時期尚早なのではないか」

社内の反対意見はこうしたものだった。しかし、山本はどうしても諦めたくなかった。ほかの誰も目を付けていないうちに始めることが、自社が成功するためには欠かせない要点だと考えていたからだ。

「チャット自体は以前から存在したものですし、当社がやらなくてもいずれ他社が世に出してくる未来は予見できました。実際「Chatwork」をリリースした3カ月後には、個人向けのチャットアプリとして「LINE」がリリースされています。トレンドが来るのを待ってから始めるのでは遅いんですよね。私たちはリソースが限られているベンチャー企業でしたし、学生起業をした会社ですから、輝かしい経歴のエンジニアや経営陣が集まったスタートアップでもなかった。他社と同じスタート地点ではトレンドの波に追い付けません。誰も考えていない時期に始めて、先行優位を得ること。それしかないと思っていました」

なんとか認めてもらおうと、役員を一人ずつ呼び出し説得。ようやく「社内システムとして開発する」という名目で承認を取り付けた。ただし、さらなる条件も突き付けられる。当面、起案者の山本一人で開発し、ほかのリソースは割かないこと。既存の業務は従来通り遂行し、CTOとしての責任を全うしたうえで行うこと。たった一人で、仕事の合間を縫って取り組み始めたプロジェクトだった。そこで山本が最初のマイルストーンに置いたのは、社内で「Chatwork」のファンを増やすこと。そのために3カ月という短期間で、「Chatwork」のプロトタイプを開発した。社内でリリースし、社員のリクエストに次々と応える中で改善を図った。

「急ピッチでつくったので最初はバグだらけ、機能も最低限でした。当然、『使いにくい』『不具合がある』という声が上がってきた。そうした意見をリアルタイムで取り入れていったんです。『もっと絵文字がほしい』といった細かな要望にもすぐに対応。すると、『この絵文字かわいいね』などと好意的な反応が返ってくるようになり、少しずつ面白がってくれる人が増えていきました」

ユーザーからの感動の声を聞き、覚悟が決まった

こうした山本の取り組みもあって、「Chatwork」の社内認知度が急上昇。半信半疑だった周囲もビジネスチャットの可能性に注目し始めた頃、転機となる出来事が起こる。

「当時、世の中ではUstreamのライブ配信がトレンドで、自社でもチャンネルを持っていたんです。でも、毎週配信していたのでだんだんとネタに困ってきて……。そこで、当時の社長が『社内でこんなツールをつくりました』と『Chatwork』を紹介したら、視聴者の皆さんから『これはほしい!』とコメントが殺到したんです。予想以上の反響に手応えを感じ、事業化のGOサインが出ました」

プロジェクトは4人体制に増員。急ピッチでプロダクト開発が進み、2011年3月1日に「Chatwork」は正式リリースされる。当初はフリーランスのエンジニアやクリエイターなど時間や場所に縛られない先進的な働き方をしている人たちが、続々とファンになってくれた。しかし、まだ業務コミュニケーションにチャットを使う文化がない時代。BtoBサービスである「Chatwork」は、空前のSNSブームの陰に隠れ、一般ユーザーはおろかメディアからの反応もあまり良くなかったという。

「そもそもニーズが顕在化していない状態からスタートしていますから、ただ宣伝をしても興味を持ってくれないんです。ビジネスチャットの文化を根付かせるような記事広告を中心に、地道にメディア掲載をしていました」

世の中でビジネスチャットが注目され始めたのは2014年頃のこと。それまではじっと耐える時期だった。この事業はブルーオーシャンだと信じて船を漕ぎだした山本自身、「本当に市場はあるのか……」と不安になったことも1度や2度ではない。しかし、トレンドの波もビジネス的な収益も上がっていない2012年にある決断をしている。

社名をそれ以前の「EC Studio」から「ChatWork」(現在は「Chatwork」に変更)へと改めたのだ。売上がほとんどなかった段階で、社名をプロダクトと統一するという覚悟を持てたのには理由がある。

「ユーザーからの声が従来の事業とは明らかに違ったんです。これまでのサービスでも、『便利ですね』『良いサービスですね』と喜んでくれるユーザーはもちろんいました。でも、『Chatwork』を使ったユーザーの反応はそんなものではなかった。『長年の不便が解消された』『働き方がまったく変わった』と感動の声を上げてくれた。ここまでのレベルで賞賛されたのであれば、売上や利益はいずれついてくるはずだし、世の中に広めていくべきプロダクトだと決意できたんです」

中小企業のビジネスを支えるプラットフォームとなり、日本のDXを推進する

チャットツールは「LINE」など、個人利用のものから市場が広がった。その後は徐々にセキュリティやコンプライアンスの観点から、ビジネス専用のチャットツールを求める声が上がり始め、一気にビジネスチャット市場がレッドオーシャン化していく。一時は週に1社ずつ競合が増えていくような時期もあったが、トレンドの波が来る前から粛々とプロダクトを磨いてきた「Chatwork」にはすでに顧客のニーズを満たした揺るぎないプロダクトがあった。サービスの淘汰が進む中で、国内有数のビジネスチャットとしてのポジションを確立していく。

その後の成長がすべて順風満帆だったわけではない。経営スタイルの転換、システムアーキテクチャの刷新、グローバルへの挑戦、株式上場など。時に痛みも伴いながら、数々のハードルを乗り越えてきた。その過程で山本は兄から社長を引き継ぎ、現在は約260名を統括する経営トップを務めている。(2022年3月末時点)

「私たちが目指すのは、中小企業にとってのデファクトスタンダードになること。あらゆる業種・職種の人に共通して使ってもらえるアプリケーションって、実はチャットくらいしかないんです。だからこそ、『Chatwork』はビジネスのプラットフォームに発展させていくことができる。『Chatwork』を起点に、あらゆる業務を遂行できるようなビジネス版スーパーアプリを構築していきます」

Chatwork社が中小企業にフォーカスした戦略を展開するのは、同社のミッション・ビジョンにも紐づく。「働くをもっと楽しく、創造的に」。このミッションを実現するには、日本の大部分を占める中小企業のデジタルトランスフォーメーションを進め、「すべての人に、一歩先の働き方を」提供する必要があるからだ。

「コロナ禍によりDXは5〜10年早まったと言われています。けれど、変革のリソースが乏しい中小企業は、どうしてもこの動きに遅れがちです。だからこそ『Chatwork』で中小企業のDXを支援することは、日本全体のDXに寄与することだと思っています。この戦略を掲げた今は、新たな“ゼロイチ”と言えるフェーズ。大きなチャレンジをしている今が一番スタートアップな環境だと感じます」

公開日:2022年9月8日

Profile

大阪府寝屋川市出身。電気通信大学情報工学科卒業。2000年、大学在学中に兄と共にEC studio(現Chatwork株式会社)を創業。以来、CTOとして多数のサービス開発に携わり、「Chatwork」を開発。2011年3月にクラウド型ビジネスチャット「Chatwork」の提供開始。2018年6月、Chatwork株式会社の代表取締役CEOに就任。2019年9月、東証マザーズ上場。2020年1月、「第45回経済界大賞」にて「ベンチャー経営者賞」受賞。

Contact
東京都港区西新橋1-1-1 WeWork 日比谷FORT TOWER

Staff

インタビュー・執筆:森田大理/編集:佐々木久枝

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