
真面目におもしろいことをしよう!企業のビジネスが輝くような“世界観(ストーリー)”を世に展開し、顧客とのコミュニケーションを力強く後押しする
「1番で勝つ」
「人の期待に応え続ける」
成果にこだわり続ける
「競争プログラム」によって
自律した社員を育成
株式会社ディプレ
代表取締役
中西 誠/Makoto Nakanishi
近年、多くの企業の経営者や人事担当者を悩ませている問題がある。それは「ゆとり教育による弊害」だ。昨今の新入社員は、優劣や順位をつけない教育方針のもとで育ってきたことから、「競争」に慣れていない。しかし、社会に出れば、競争にさらされ、優劣をつけられることは避けられない。
これまで「競争」というものを体験してこなかった新入社員は初めての競争に戸惑う。そして、そういった新人を教育する立場にある先輩・上司もまた、自分たちの感覚とはまったく違う後輩や部下に対してどう指導すればわからない。どちらもが壁にぶつかり、頭を悩ませているのだ。
そんな悩みを解決するために、新入社員に「競争の体験」をさせる社員教育を提供しているのが、株式会社ディプレだ。
同社が開催する「チームビルディングアカデミー」では、「チームビルディング合宿」「幹部社員研修~教えるチカラ」「マネジメントゲーム」「ビジネスマナー研修」など100を超えるプログラムを提供。リピート率が高く、参加者の9割以上が良い効果を実感しているという。
特に強みとするのが、新入社員と中堅社員向けにそれぞれ開発された「チームビルディング合宿研修」。このプログラムでは、異なる会社から集まった社員がチームを組み、他のチームと対戦する。内容は、パズルを組み立てるなど数十秒で終わるゲームから9時間以上かかるウォークラリーまでさまざま。体力的・精神的にプレッシャーがかかる内容だ。そんな体験型研修の特徴を、代表取締役社長・中西はこう語る。
「私たちの研修では、必ず順位をつけるようにしています。それまで競争をしてこなかった人に対しては、まず自分の成果が数値化され、結果と向き合う状況を作り出すことが大切なんです。競争は社会の擬似体験です。競争をしないと、誰が強くて弱いかもわかりません。そんな中途半端な状態だと、本当の意味での助け合いやチームワームは生まれませんし、知識や技術をいくら教えたところで身に付かないでしょう。まずは、研修を通して競争にさらされ、勝って本気でうれしい、負けて本気で悔しいという『体験』をする。それを通じて、仕事に対する基本的な考え方や価値観を学び、『仕事ってこういうものだったんだ』『可能性はまだまだ無限にある』ということを実感してほしいですね」
ディプレの研修は「一番で勝つ」を目標に掲げ、「人の期待に応え続ける」「周囲と関わり合い、互いを高め合う」「何事にも本気で一生懸命取り組む」という理念のもとで運営されている。この体験により、参加者の「行動変容」を促す。
行動変容とは、「自発的になった」「前よりも主体的に質問するようになった」というような、実際の行動の変化を指す。こうした「体験型」の研修に参加した人からは、研修後に「最初は無理だと思っていたが、途中から本気で変わりたいと思うようになった」「ここまで深い人間関係を築けたのは、人生で初めて」「自分の可能性を実感した」といった声が聞こえてくる。
また、新入社員を研修に参加させた企業の経営者や人事担当者からは、「業績が上がった」「離職率が下がった」「新入社員が去年の同時期の先輩の成績を抜いた」といった声が多く寄せられているという。さらに、一度に2~20社が集まる公開型の研修が基本であるため、経営者や人事担当者同士でも横のつながりができ、ネットワークが築けるメリットもあるようだ。
教育について熱く語る中西だが、自身は決して優等生ではなかったという。高校時代はやんちゃで、部活のバスケットには熱心に取り組んだものの、授業中は寝てばかりいた。
高校時代から水商売のバイトを始め、卒業後はフリーターに。19歳のときには勢いでクラブ経営にも手を出した。海外からもアーティストを呼ぶなどして話題になったが、勢いだけではうまくいくはずもなく、成人式を迎える頃には1000万円弱の借金を抱えることになる。以来、アルバイトに明け暮れ、借金は2年で完済。当時のバイト先のひとつだった人材派遣のベンチャー企業に就職したのが、現在の道につながる転機となった。
その人材派遣会社では、工場、家電量販店、コールセンターなどに派遣スタッフを手配する営業職を務め、さまざまな企業を見てきた。顧客企業の中には、求人広告を出しても採用に至らず、やむをえず派遣スタッフを利用する企業も多かった。
「採用がうまくいかない、あるいは採用した人が定着しない理由は、やはりその会社に魅力がないからですよね。では、魅力のある会社とはどんな会社か…と考えると、『文化』を持っていることが大切なんだと気付いたのです。そして会社の文化を創るのは『教育』だと、この頃に実感したんです」
中西が入社した当時は7人だった会社は、急成長を遂げ、上場を果たした。組織が拡大する中で、中西はマネジャーに昇進。部下の指導・マネジメントも経験し、自信を付けた30歳の頃、1人で起業した。
これまでの経験を活かして、教育事業を行うと決めたが、これといった商品やサービスはなかった。そこで、企業に片っ端から電話をかけ、『社員教育なら何でも請け負います』とアピール。依頼を受けると、そこからそのテーマを勉強したり専門家と連携したりしてプログラムを作った。もちろん、専門性が高すぎて応じられないテーマもあったが、多くの企業からの要望を聞くうちに、共通して抱える課題が見えてきた。その課題を解決するため、「チームビルディング」という現在の研修テーマに絞り込んだのだ。
しかし、ただ企業のニーズに応えているわけではない。中西には、プログラム参加者に伝えたい想いがある。
高校時代はやんちゃだったという中西だが、実は幼少期は小児腎炎で身体は弱く、2歳から小5まで入退院を繰り返していた。食事制限が必要だったため、給食は1人だけ特別食。そのせいでイジメにもあった。運動も制限され、プールの時間は1人で見学していた。
治療費が家計を圧迫し、生活も苦しかった。そんな環境の中で、印象に残っているのは両親の姿だ。
「貧しかったけれど、寝ずに働いている母や父が、意外と楽しそうだったんですよ。その姿から、『大切な人を守る、支える』という動機があるのは強いな、と知らず知らずのうちに教わっていたんでしょうね。良い働き方をすることは、良い人生を形づくることにつながるんだ、と。そして何より自分自身が、成長と共に健康になり、それまでの制限から解放されて、全力で生きられるようになった。全力で生きてこそ味わえる感動を、多くの人に体験してほしいと思うんです」
ディプレという社名は、「Deligt&Pleasure」を縮めた言葉。「喜んでくれてうれしい」を実現したいという想いを込めた。事業ミッションとして掲げたのは「人と組織の可能性をポジティブに変える」。社員の方々を預かり、良質なチームづくりを指導していくと、「働き方=生き方」に通じる。自分の限界を自分で決めず、自分の可能性を1mmでも広げていくと決めている。
ディプレが今後力を入れて取り組むのが、参加者の成果を管理するシステムの開発だ。
ディプレの研修では、参加者の行動や成果に対し、「衆目評価」を行っている。これは、トレーナーやリーダーなどが参加者を評価するのではなく、対戦しているチームの様子を他のチームが評価し、優れていると思う人を評価するというもの。多くの人が「いい」と思ったことが評価に反映されるようにすることで、結果が偏ることがない。客観的な評価であれば、評価される本人にも納得感が増し、良好な結果にモチベーションも高まるというわけだ。
自社から参加した社員がどんな評価を受けたのか、上司や人事担当者は当然ながら気になるところ。そこで、参加者への評価を上司や人事担当者にフィードバックし、自社内での人事考課の参考にしてもらえるようなシステムの開発を進めている。
同時に、トレーナーの育成も進めていく。ディプレのプログラムにおけるトレーナーの役割は、参加者の様子を観察し、変化を察知し、フィードバックしていくというものだ。
「教育は、継続することで企業文化を創造し、醸成できる。だから、私たちが提供している研修は、一過性のもので終わっては意味がありません。この研修プログラムをこの先何十年も続けていくために、トレーナーを育て、メソッドを継承していきます」
いずれは、クライアント企業のメンバーにトレーナーのライセンスを供与し、会社内で独自にプログラムを実践し、継続していけるようにしたいと考えている。
「教育ができる仕組みを、企業自身がつくっていけることが大切。その取り組みを支援していきたいですね」
「学生時代はドレッドヘアで、生活指導も受けていた」という過去が想像できないほど、教育への想いを語る姿には実直で、真摯な印象を抱きました。ご自身が病気や借金返済などの苦境を乗り越えてきたことで、全力で取り組んで克服する=「勝つ」ことの喜びを誰よりも実感していらっしゃるのでしょう。その想いが込められたプログラムだからこそ、受講生たちを変える力を持っているのではないでしょうか。
1976年大阪生まれ。大手人材派遣会社に創業期から携わり、営業およびマネジメント人材育成に携わる。2006年、株式会社ディプレを設立。代表取締役に就任。企業の社員教育に関わるプログラム開発から実施を一貫して行っている。チームビルディングアカデミーという社員教育サービスを中核に愛をもって厳しく接する講義には受講者が途絶えることがない。
インタビュー・編集/青木典子、宮本理司 撮影/後藤敦司
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