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ストーリー代表・CEO

厳しい外出制限の中見いだした「新しい変化のチャンス」海外向けO2O支援サービス「JAPAND」で日本の中小企業を支援

代表_菱沼貿易株式会社

コロナ禍で見えたECの可能性
「日本の中小企業が海外で認知される機会を創出したい」

菱沼貿易株式会社
代表取締役
菱沼 一郎 / Ichiro Hishinuma

貿易取引を通じて、日本の中小企業の未来を切り拓く

「商社機能やノウハウは、中小企業にとってこそ重要ではないか」

商社マンとして世界中を飛び回っていた菱沼一郎がそんな思いを抱き、生まれ故郷の大阪で菱沼貿易株式会社を興したのは2009年のこと。以来十数年、東南アジアや中国、台湾、ヨーロッパに向けて、海外取引を試みる中小企業を支援している。

現在の菱沼貿易は事業全体の9割を輸入業が占めており、ヨーロッパでは主に製品の買い付けを、東南アジアでは現地の工場でOEM生産を展開する。日本の顧客から受注した製品を現地工場で製造するOEM生産では、製品の製造に適した工場を現地で探すところから、製品の試作、品質、納期、顧客の倉庫への納品までを同社が一気通貫で管理する。

輸出業では、国内の鉄鋼メーカーが製造したステンレス製のシンクや、病院の壁などに用いられる不燃化粧板といった建材を、台湾をはじめとするアジアの建材ディストリビューター(中間卸売業者)に卸している。

創業当初から、BtoB向けの輸出入支援事業で成長してきた菱沼貿易。2012年にシンガポールに現地法人を設立し、翌年には菱沼自身も現地に居を移した。そして2020年3月には、イギリスに現地法人を設立。順調な門出を果たすはずだった。

予想だにしなかった新型コロナウイルスのパンデミック
厳しい外出制限の中、ECに活路を見いだす

イギリスに現地法人を構えたのは、奇しくもWHOが新型コロナウイルス感染症のパンデミックを宣言した2020年3月。1年ほど前から市場調査や現地スタッフの採用、オフィスの契約に奔走し、ようやく設立にこぎつけたところでロックダウンが始まった。

商社時代にSARS(重症急性呼吸器症候群)の影響を目の当たりにした菱沼は、新型コロナウイルスが拡大する様子を見て、「あのときのようになったら大変だな」と漠然と感じていたという。パンデミックが宣言される直前まで精力的に海外出張を続けていたが、シンガポールでも同年4月、ロックダウンに相当するサーキットブレーカーが発令。外出が禁止され、同居の家族以外に会うことを制限された。

「親元を離れて暮らしていたら、親にも会えない。恋人にも会えない。外出といえば、スーパーマーケットで買い物をするくらいしか許されません。警察とソーシャルディスタンス・アンバサダーと呼ばれる赤いポロシャツを着た人たちが、街中で目を光らせているのです」

当然、ビジネスにも影響が出始めた。東南アジアやヨーロッパの工場は減産か稼働を停止。日本から新しい製品を製造したいと要望があっても、工場が稼働していなければ引き受けるわけにはいかない。他国への渡航ができないために、現地へ行って品質を管理することもできなくなった。同社では家庭用の生活用品を扱っていたため、幸いにも巣ごもり需要で売上が下がることはなかったが、新規のビジネスは停止を余儀なくされた。

サーキットブレーカーが発令されてから数カ月。厳しい状況が続く中、生き残る道を模索していた菱沼。コロナ禍でも積み重なっていくビジネスモデルとは何か、熟考の末、会社としてeコマースに注力することを決めた。日本にいるスタッフとオンラインでミーティングを重ね、ECを運営していこうと伝えたところ、ここでもまた問題が持ち上がった。

「2020年秋頃からeコマースのビジネスモデルを始めたいと伝えたところ、弊社で長年働いてくれていた社員が、立て続けに二人退職してしまったのです。私のコミュニケーション不足がまずかったと反省しているのですが、二人は会社の創業当時から在籍していたベテランであり、一番の理解者でした。私が日本にいなくてもフォローをしてくれていた社員が二人ともいなくなったことは、大きな衝撃でしたね」

新型コロナウイルスの渡航規制が緩和された2021年2月末、菱沼は急遽日本に一時帰国した。採用活動を行い、これまで培ってきたBtoB向けビジネスだけでなくeコマースの知見がある人材を採用。社員全員が腹落ちするミッション、ビジョン、バリューを改めて見直し、各自の目標を定めてチームビルディングを行い、コロナ下で再始動する体制を整えた。

コロナ禍でコンシューマー向けビジネスをスタート
中小企業の海外進出を後押しするO2O支援サービス「JAPAND」

シンガポールにサーキットブレーカーが発令され、実店舗での買い物はスーパーマーケットかドラッグストアに限られた。そんな中、菱沼貿易は、eコマースで日本のメーカーがつくる梅酒やフレグランスの販売を始める。

「このECにサービス名をつけて、現地で日本の商品を売る仕組みをつくっていこう」

こうして誕生したのが、O2O支援サービス「JAPAND(ジャパンド)」だ。世界における日本の中小企業の認知度を高めるために、EC以外にも現地の百貨店内にポップアップ店舗を出店したり、イベントを企画したりと、オンラインとオフラインの合わせ技で商品を販売する。

特に日本の「食」は海外からの問い合わせも多い。酒や香水といったライフスタイルを彩るものは価格競争になりにくく、また日本のユニークさを表現できるため、海外向け商品としての親和性が高いという。

現地における販売からクレーム対応、在庫の移動といった現地での裏方作業はすべて同社のスタッフが行うため、商品を出品する中小企業の負担は少なく済む。シンガポールだけでなく、イギリスでもJAPANDを展開し、オンラインで日本製の商品を販売する体制を構築した。

JAPANDのサービスを始めた理由はほかにもある。中小企業の海外進出をサポートするために、経済産業省、各自治体、日本貿易振興機構(ジェトロ)や中小機構といった行政では、海外で展示会を開催したり、海外のバイヤーを日本に呼んで商談会を開くといった取り組みをしている。

こうした展示会にブースを出展すると、イベント会期中は行政からサポートを受けられるのだが、展示会が終わった後は事業者自らが顧客をフォローアップしていかなければならない。実際の取引につなげるためには、展示会が終わった後のフォローアップが肝心であるが、多くの中小企業では、言葉の壁や、貿易実務を理解していないために、「その後」の商談が続かない。しかし、展示会の場所をECプラットフォームに移せば、コンテンツが残る。コンテンツを積み重ねることで、それがブランディングにもなり、顧客の資産になっていくのだ。

「例えば、日本酒の『獺祭』がこれだけ海外に認知されたのは、マーケティングやプロモーションにしっかりと投資をしてきた結果です。日本の事業者さんの中には、『飲んでもらえば美味しさが分かる』『使ってもらえば良さが分かる』と言う人がいます。しかし、どうやって飲んでもらうのか、どうすれば使ってもらえるのか、その視点が抜けています。だからJAPANDを使って、まず海外の企業に認知してもらう。それから、出品されている製品をブランディングしていきたいと考えています」

同社では、自治体や経済産業省と意見交換をしながらJAPANDの取り組みを進めている。設立後すぐにロックダウンに見舞われたイギリスの現地法人では、2021年10月に新しいダイレクターが就任。シンガポールと同様にJAPANDを展開し、日本の中小企業がイギリスでも認知されるよう精力的に活動している。

1万社とともに「最初の1億円」を築き、
海外に1兆円の市場を生み出したい

菱沼貿易は2022年で創業から13期を迎える。菱沼は今期を「第二創業期」と位置づけ、次世代に向けた礎を築こうとしている。そんな菱沼は、コロナ禍の2年間を「新たな変化のチャンスだった」と前向きに振り返る。

「新型コロナウイルスのパンデミックがなければ、従来通りの方法でしかビジネスをしていなかったかもしれません。見方を変えれば、コロナの出現は変化のチャンスだったのではないかと思います」

同社は今後の国内市場の縮小を懸念し、輸出事業を拡大していきたいという。

「ご存知の通り、日本はこれから一層少子化に向かっていきます。数字で見れば一目瞭然で、2060年までに約32%も人口が減り、全体の約40%を65歳以上の高齢者が占めると試算されています。日本の少子高齢化率は、世界でも群を抜いて高いのです。

一方で、この30年間、日本では平均所得が増えていません。そんな状況で社会保障費が増えれば、一人当たりの可処分所得は目に見えて減っていくでしょう。国内のマーケットが縮小する中で、国外の市場に向けてものを売る仕組みを構築する必要がある。そのために、eコマースを活用しながら、オンラインとオフライン、両方のチャネルをつくっていきたいですね」

海外に打って出たい中小企業に対して、最初の一歩を踏み出す手助けをすることが自分の使命だと、菱沼は明言する。

「私たちの仕組みを使って、お客様と一緒に『最初の1億円』を作っていきたいのです。それを1万社に提供して、1兆円の市場を生み出すことが私たちのミッションだと思っています」

新たなミッションを果たすために、eコマースの知見を持った専門家や商社で経験を積んだ人材の採用を進め、さらなる実績作りに邁進する。少しでも多くの中小企業に自社のサービスを認知してもらえるよう、信頼を積み上げていく。

「少子高齢化で国内の人口が減少することは確実ですが、そこに危機感を持っている企業が少ないように感じています。少子高齢化は、コロナ禍のように一瞬で世界が大きく変わるわけではなく、じわじわと変化していくので切迫感が持てないのかもしれません。

『国内の目先のビジネスがうまくいっていないのに、海外進出に取り組むのは時期尚早だ』と考える人もいるでしょう。しかし、今後は国内ビジネスのみで事業を伸ばすことは、困難になっていきます。国外の市場に出るために、時間とお金を投資することが大切です。チャレンジできるときに、第一歩を踏み出してほしいですね」

公開日:2022年3月31日

Profile

1969年大阪府生まれ。2013年よりシンガポール在住。幼少の頃、父の仕事の関係で香港で暮らす。高校受験直前に父がシンガポール転勤となり、全寮制の高校を選択し、一人日本に残り家族はシンガポールに。大学卒業後、総合商社に勤務、日本を拠点にASEAN、東アジア、欧州各国企業とのビジネスを通じて、信頼関係構築の重要性を痛感する。商社の機能、ノウハウは中小企業にこそ必要とされるものだと考え、「貿易取引を通じて日本の中小企業の未来を切り拓く」をミッションに掲げ、2009年大阪市に菱沼貿易株式会社を設立。2012年にはシンガポール法人、2020年には英国法人及びシンガポールに持株会社を設立。3拠点を軸に貿易ビジネスを展開中。新型コロナ発生前は毎週のように飛行機で世界各国を移動しながら、その土地の美味しいものをいただきつつ、仕入先、販売先を訪問するライフスタイル。趣味は読書、ウォーキング、タッチラグビー。


Contact
< 2022 年7月まで>
大阪市中央区淡路町2丁目5番8号 船場ビルディング2F
< 2022 年8月より>
大阪市中央区備後町2丁目5番8号 綿業会館5F

Staff

インタビュー:垣畑光哉/執筆:宮原智子/編集:山田富美
撮影:正畑綾子

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