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ストーリー代表・CEO

6次産業を実現する酪農家の次なる目標は、優秀な社員を輩出する「人材のファーム」

代表_秋葉牧場 

コロナ禍、牛舎の建て替え、組織改革。
7代目社長が事業継続のために取り組んだこととは

株式会社秋葉牧場ホールディングス(成田ゆめ牧場)
代表取締役社長
秋葉 秀威 / Hidetake Akiba

生乳本来の味を届け続けて135年

株式会社秋葉牧場ホールディングス(以下、秋葉牧場)の始まりは、1887年。搾乳専業牧場として創業以来、135年にわたって牛乳づくりに向き合い続けてきた。自社で飼養する乳牛から搾乳した牛乳をもとに、乳製品の企画・製造、販売までを一貫して展開する、6次産業化を実現。さらには、年間30万人の来場者がある「成田ゆめ牧場」や自社製品を販売する直営店舗を運営するなど、酪農事業をベースとした多様なビジネスを手がける。

「6次産業化を実現する当社だからこそ製造できる、質の高い乳製品をお客様に届けたい」と、代表取締役社長の秋葉秀威は話す。

「6次産業の強みは、消費者の声を、生産の段階から反映できるということ。当社のケースでいうと、牛乳の味わいを変えたい場合は、餌の種類や飼育環境などから変えられる。製造工程で加工をしたり添加物を加えたりすることなく、市場で求められている製品をゼロからつくることができるのです。消費者目線での製品開発や品質担保を実現する、誠実な会社であると自負しています」

そうした6次産業を武器に、順調に業績を伸ばしてきた秋葉牧場も、2020年には新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた。成田ゆめ牧場は、開業以来初めて2カ月間休園。18店舗あった直営店舗は、6店舗が閉店を余儀なくされた。それでも秀威は気落ちすることはなかった。

コロナ禍前から実施していた、手指や靴裏の消毒徹底や広大な敷地ゆえのソーシャルディスタンス確保など、感染リスクにおける安全性をしっかりとアナウンス。マスク不足の時期には、「地元の安全を一番に守りたい」と、会社の備蓄用マスク約1万枚を行政へ寄付した。こどもの日にはお菓子を配り、未曾有の事態に不安が広がる地域住民の心を安らげた。そうした動きは、成田ゆめ牧場の再開後に奏功。「あのときは助かりました」と感謝の気持ちを伝えに来るお客様が後を絶たなかった。

またコロナ禍は、「牧場の本質を再発見するきっかけとなった」と秀威。牧場再開後、コロナ禍前に実施していたサツマイモ掘り大会や赤ちゃんハイハイ競争といったイベントは、感染拡大防止のためほとんど中止に。エンターテインメント性は半減したが、自然の豊かさや動物の愛らしさといった牧場が持つ本来の価値を、スタッフ一同が再認識したという。

「今まで牧場のイベントも事業における新たな取り組みも、良かれと思ってどんどん増やしてきましたが、中には的を射ていないものもありました。不要なものをそぎ落とすことで、本当の価値が明確になったのです。もちろんお客様が待ち望むコンテンツは再開、継続する予定ですが、コロナ禍は牧場の本当の姿を知ってもらう期間となり、事業のスリム化も図ることができました」

2021年12月には、装いを新たにした牛舎の正式稼働を開始。「50年に一度あるかないかのビッグプロジェクト」だった牛舎の建て替えにより、2022年9月までに乳牛頭数を現在の約60頭から220頭まで増やす予定だ。そして秀威が入社以来、目標としていた300頭を目指す。

牛舎建て替えの構想を練り始めた2019年から完成までの2年間、秀威は常にプロジェクトメンバーに寄り添い続けた。

「このプロジェクトを完遂するには、スタッフのメンタルサポートが一番重要だと考え、8人いるプロジェクトメンバーと何度も対話を重ねました。大変だったのはモチベーションの維持。『本当に自分たちにできるのか』といった不安感や焦燥感に駆られるスタッフも少なくありませんでした。一人ひとり考え方や価値観が異なるため、通り一遍ではなく、それぞれの心に響く言葉や伝え方を工夫しながらアドバイスしました。

結果的に、みんな走り切ってくれて本当に感謝しています。これが少しでも彼らの経験値になればいいですね。牧場の核である牛舎の建て替えは、誰もが経験できることではないですから」

新牛舎を設計する上で重視したのは、動物福祉や持続可能性の観点。従前と大きく変わったのは、牛の管理体制だ。1頭ずつつないで飼育する個別管理から、パドックに放牧する群管理へと刷新。まぶしさを軽減できる照明や暑さ対策の散水設備を導入、通気性にもこだわり、「牛たちが心地よく、ストレスフリーに過ごせる空間」を意識した。さらに牛舎内で働くスタッフが効率的に動ける動線づくりにも配慮。135周年の節目を迎える秋葉牧場が、150年、200年と続くことを想定し、舎内で過ごす動物とスタッフ双方の快適性を優先した新牛舎が完成した。

慎重になり過ぎた経験から得た変革の重要性

高校時代の祖父母の他界をきっかけに、家業継承を決めた秀威。経営に不可欠だと考えた営業と経理の仕事やMBA取得を経て、2013年に秋葉牧場に入社。社内で経験を積み、2018年に7代目社長に就任した。

2021年は社長就任以降に課題ととらえていた組織体制の改善に取り組み始めた年でもあった。その一環として、共に組織改革を進める中核メンバーを新たに採用。大手企業に長年勤務し経験を積んだマネジメントと、経理のプロフェッショナルを1人ずつ迎え入れた。

「ノウハウを持ち合わせたキーマンとなる人材が入社したことで、ようやく組織改革のピースが整ったような感覚です。彼らと課題認識の共有をしてからは、トップスピードで走り出しました。新たな制度や仕組みを構築できるアイデアを出し合う日々。事業や社員にとって有益な変化をもたらせる組織改革を目指し、尽力しました」

そんな秀威にも、「変化を恐れていた時期」があった。社長就任の直後、事業は全般的に順調だったこともあり、「何かを変えることで、代々継承されてきた経営基盤が壊れてしまうのでは」と慎重に静観していた。すると事業が停滞期に突入。若い社員の離職率が上がり、組織としてどんどん活力を失っているのを実感した。そこで「次のチャレンジをするためには、守るだけでなく壊すことも必要」と、ダイナミックな変革を決意。組織内の課題を洗い出し、具現化に乗り出した。

まずは、事業ごとの子会社を傘下に設置するホールディングス体制への変更を機に、人事評価制度と採算管理方法を改善。人事評価制度においては、多角的な評価軸によるフラットかつ明瞭な評価制度にシフトし、成果や期待値を給与に反映することで社員のモチベーション向上につなげた。また、これまで部署間でルーズになりがちだった物流や仕入れに関するお金のやりとりを可視化するために、採算管理を徹底するように。「組織構造を見える化、数値化し、細かい課題や目標をはっきりとさせることで、本業にかける時間が多くなった」という。

もともとフランクな社風だった秋葉牧場だが、組織改善により、ボトムアップ化をさらに促進。社員が発信する意見やアイデアは、面白いと認められれば、発案者本人が主導するプロジェクトチームを組成できる。周りを巻き込む推進力とやり抜く力を持っている社員が、活躍する仕掛けだ。

「嘘をつかないこと、言い訳をしないこと、誠実であること。この三つさえ守ってくれれば、キャリアや社歴は関係ありません。新卒入社だと美大出身者、中途入社だと元編集者や元ホテルマンなど、さまざまな業界経験者が在籍していて、酪農や牧場の基礎知識はゼロ。周りの社員から得るもの、学ぶものも多いと思います」

メード・イン・ジャパンの乳製品を世界へ

多くの動物たちを広大な牧場で伸び伸びと育ててきた秋葉牧場。今後目指すのは、人材育成においてもファームとなれる企業だ。牛舎の建て替えや組織改革に取り組む中で、今まで以上に組織内部を見つめた秀威は、改めて人材教育の重要性を感じたのだ。たとえ社員が転職するとしても、その企業から「秋葉牧場出身の人材なら採用したい」と価値を認められる人材にまで育て上げたいと意気込みを見せる。

「当社に入社した人材は、絶対に一人前にしたい。これからの時代、画一的な教育体制では人は育ちません。一人ひとりの性格や成長スピードに応じ、さらには社会的変化や時代性も考慮した、カスタマイズした教育を実践していくことが求められています。また今までは新人育成ばかりに意識を向けていましたが、マネジメントを担う中間層の成長がなくては新人も育たないと気付きました。ポジションや役職のフェーズに適した教育体制を、柔軟に取り入れていく必要があります」

そして社員たちに「まだ見たことのない景色を見せたい」と、活躍の舞台を幅広く用意する。その一つが海外での事業展開だ。現在ベトナムやタイをはじめとする東南アジアでの生産・製造を計画中。長期的視野に入れているヨーロッパ進出の弾みとして、フランスの有名ショコラティエとのコラボも構想する。海外からの評価が高い「メード・イン・ジャパン」の底力を見せつける。

海外展開においても、6次産業化の姿勢は崩さない。「酪農から行くか、製造から行くかは地域やタイミングによる」としながらも、生産量や供給量を自らコントロールでき、マージンコストの削減や柔軟な価格設定といった利点を活かしながら、6次産業ならではの高品質な製品生産を目標に定める。

「私自身チャレンジ精神が旺盛なため、社員にもあらゆる場面でチャンスを与えられると思います。日々の業務においても、プロジェクトにおいても、高いレベルのマネジメントができる人材を輩出していくつもりです。今までもこれからも酪農事業一筋に取り組んできた当社だからこそ、そうした人材育成が社会貢献につながり、国力を高める一端を担えると信じています」

公開日:2022年3月7日

リスナーの目線

経営者としての力強さとともに、牧場が持つのどかさに似た温厚な雰囲気あふれる秀威社長。「私がいなくても会社は問題ないですよ」と冗談めかして話されていましたが、その言葉からは、社員への絶大な信頼感とトップ層のみに頼らない組織の強さを感じました。目指すは世界。苦難を乗り越えながら努力を続けてきた秀威社長のもと、着実に夢の実現に向かっていくことでしょう。

Profile

1981年生まれ、千葉県出身。2005年、成蹊大学経済学部卒業後、大日本印刷株式会社に営業職として入社。チームで社長賞を受賞するなど、優秀な成績を残す。その後、株式会社オリエンタルランドに転職し、グループ会社の経理職に従事。退社後、イギリスのBirmingham Business SchoolにてMBA取得。Swiss Hotel Management School、シンガポールの5つ星ホテルGoodwood Park Hotelでの経験を経て、2013年に父親が経営する株式会社秋葉牧場ホールディングス(当時秋葉牧場)に入社。2018年7月、同社代表取締役社長に就任。

Staff

インタビュー・執筆:堤真友子/編集:室井佳子
撮影:新見和美

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