
真面目におもしろいことをしよう!企業のビジネスが輝くような“世界観(ストーリー)”を世に展開し、顧客とのコミュニケーションを力強く後押しする
株式会社キュービック
代表取締役
世一英仁/ Hidehito Yoichi
スマートフォンの普及により情報を簡単に手に入れられるようになった一方、信憑性の高い情報を見極めるのが難しくもなってきた。
不確かな打開案や曖昧なアドバイスがネット上を横行しているのも事実だ。
だからこそユーザーインサイトに寄り添い、根本から課題解決を行おうとメディアを運営している会社がある。
それが、株式会社キュービックだ。
運営するWebメディアは現在20以上。債務整理の基本を誰でも分かるように発信する誰でも分かる債務整理「Relib(リリブ)」、交通事故示談の疑問やトラブルを解決するノウハウを発信する誰でも分かる交通事故示談「ResQuレスキュー」、職場の悩みを抱えながら働く人のための転職支援サイト「HOP!ナビ」、薬剤師の「働く」を応援する「ココファーマ」など、他人へ相談するハードルが高く、情報格差の大きい領域がメインだ。
「根の深い課題や悩みというのは、自己解決しづらい場合が多いんです。例えば、法律相談。いきなり弁護士事務所へ問い合わせるよりは、ある程度事前にWebメディアで調べて知識を得ておくと、相談するときの安心材料になりますよね。専門家とユーザー間において、ギャップの大きい分野ほどWebメディアの役割が重要になってくると思っています」
そう話すのは、キュービックの創業者であり代表取締役社長の世一英仁だ。
2006年の会社設立以降、Webメディアの広告主となるクライアントを着実に増やし、会社をスケールアップしてきた。
デザイナー、企画、エンジニアなどさまざまな職種のスタッフがWebメディアごとにチームをつくり制作に携わっているが、中でもメディアの成長に欠かせないのが「マーケター」と呼ばれるメンバー。アクティブユーザー数やコンバージョン率の向上、有益かつ健全な情報提示、コストパフォーマンスの高い広告運用など、多角的な視点を持ってメディアの分析・改善に取り組んでいる。
「活躍してるマーケターは大きく分けて2タイプですね。1つ目は、職人タイプ。ひとつの物事に没頭して技術を磨いていくような性格で、ゲームなどをやり込んでいた経験を持つメンバーも多いです。探求心や判断力がマーケティングの仕事に活かされていると感じます。2つ目は、リーダーシップタイプ。コミュニケーションスキルが高く、クライアント、代理店、他部署の社員それぞれと丁寧にリレーションを築き、指揮をとれるタイプです。持っているスキルや強みはそれぞれ違いますが、彼らがいてくれるからこそ高品質なコンテンツを提供できています」
キュービックの組織における特色のひとつに、学生インターンがある。インターンが終わった後、正社員として入社に至るケースも多い。お互いの良い点も悪い点も理解した上での採用になるため、入社後のミスマッチが起きないのが利点だ。
インターン・社員問わず、会社の魅力について皆が口をそろえて答えるのが「気持ちのいい人が多い」という点。それはキュービックの経営理念「ヒト・ファースト」という考え方に通じている。
「私たちはWebメディアを運営している会社でありながら、データや数字に頼りきらないということを大切にしています。メディアのターゲットユーザーに直接インタビューをすることもあれば、ひたすら行動を観察してユーザー自身も気付いていない深い本音を取りに行くこともある。インサイトを獲得して、共感を呼ぶコンテンツを提供するためには、一見地道でアナログなフィールドマーケティングは欠かせません。それは対ユーザーのみならず、対社内メンバーにおいても同じことで、コミュニケーションには惜しみなく投資しています。社内イベントも多いですし、チャットやメールで済ますのではなく、直接コンタクトを取る重要性も伝えています。その甲斐もあり、私利私欲主義の社員はいないですし、お互いを思いやり助け合う風土が根付いてきました。泥臭く頑張れる人材が活躍しているのは、最大の強みです」
3人兄弟の長男として育った世一は、幼い頃から起業志向があったわけではなかった。
大学4年生のときには弁護士を目指し、司法試験の勉強を開始。
合格に向けて司法浪人をするかたわら、勉強代を捻出するためにWebメディア構築に携わったのがキュービックの始まりだ。
大学時代に所属していたサークルのホームページ運用によりWebサイトの知識を習得していた世一は徐々にWebメディア制作の面白さにのめり込み、熱意の高まりと比例するようにビジネスとして利益を上げるようになっていった。
そうした流れからずっと追い続けていた弁護士の夢を思い切って諦める決断をする。
そして、2006年10月にはそれまで個人事業としておこなっていたメディア制作を法人化へ切り替えた。
「会社員の友人は着実にキャリアを積んでいる」「経営状況を安定化させたい」設立してしばらくは焦りや不安も抱えていた世一だが、心配をよそに収益は右肩上がり。
もともと経営理念やビジョンなどを明確に掲げていなかったが、事業性が確立してきた段階でメディアポリシーを決めたり方向性を定めたりと企業のスタイルを構築した。
そこで直面したのが「組織拡大」の壁だった。
「現状維持で細く長く続けていくのか、思いきりアクセルを踏んで規模拡大に挑むのか岐路に立たされました。なかなか踏ん切りをつけられずにいた私の背中を押したのは、あるエンジニア社員でした。少し頼りない一面のある彼に『社長は思う存分やってください。もし駄目でも僕たちは大丈夫なんで』と言葉をかけられたんです。そんな台詞を言うようなキャラじゃない彼にそう言われたので拍子抜けしました。(笑)でも気持ちに火は付きましたね。自分に大きい会社の経営ができると思えず躊躇していましたが、できるできないで決断するのではなく、やりたいかやりたくないかで決断することが大事だと痛感しました」
2年でスタッフを150人以上採用し、オフィスも大型ビルへ移転。売上も好調だった。
順当に会社のスケールアップを果たし、順風満帆とも思えるが「常に経営する重みやしんどさを身をもって感じている」という世一。
2018年は、社員数の急増により個人に対して目を向けきれなくなり、社員とすれ違いが生じ、不甲斐ない想いが募る一年だった。
働きがいや風通しのよさを大切にしたい世一は、社員とのギャップを埋めるためにはまず、経営メンバーとの心の距離を近づけ一枚岩の結束を得ることが重要だと考え、毎朝それぞれのアジェンダやミッションを共有するミーティングを実施。
接触頻度を上げてお互いの理解を深めることで、経営としてどのように動いていくかを複眼的に意思決定していけるよう努めた。
「スタッフが数十人から数百人に増えたのであれば、社長の私も動き方を変えていかなければなりません。組織が大きくなればなるほど、コミュニケーションの場を積極的に設ける重要性は高まりますし、そこに時間やリソースをかけて社内の構図を把握するべきだと思います。上手くいかなければ要因を考えて内省する。それが経営に必要だと気付かせてもらいました」
今後ますますWebメディアの市場規模は拡大し、可能性は広がっていくと考える世一。
一方で、良質なコンテンツに触れたユーザーの目は養われていき、価値のないメディアはどんどん淘汰されていく。
主要デバイスがパソコンからスマートフォンへ移り変わったことで、検索エンジンで閲覧されるのは上位サイトに偏っている状況だ。
その中で生き残っていくべく、世一は新規事業開発にも力を入れている。
「現在はさまざまな商品・サービスを比較する第三者的な立ち位置でメディアを運営しています。でもこの先情報を得る手段は多様化し、アプリや音声スピーカー、もしくは新規デバイスなど、その形はどんどん進化していくことでしょう。もしそんなときが来ても、私たちのインサイト獲得技術を活かしてユーザーの課題を解決する。そして、そのヒトの前進を促せる存在でありたい。デジタルマーケティングでノウハウを培ってきたキュービックだからこそ提供できるサービスを生み出したいですね」
未来を担う若手たちの活躍は世一も目を見張る。入社して3年目以内にもかかわらず社内で表彰される新卒社員も少なくない。
エースプレーヤーに共通しているのは「会社のビジョンやミッション、ユーザーのニーズにとことん向き合う姿勢」だ。
組織のDNAが色濃く宿っている社員ほど、力を発揮している。
「表面ではなく深層心理への理解が、私たちが最も大切にしている価値観です。対社員、対顧客、対ユーザー…誰に対しても関心や興味を持って想像力を働かせなければ人の心は動かせないと思っているので、そこへ熱心に取り組める人とともにビジネスを伸ばしていきたいです」
社員数を超える規模の学生インターンが活躍する組織として知られる同社。世一さんが東大在学中に学習塾講師のアルバイトを長くされていたと伺い、育てる企業風土や、デジタルマーケティングながら生身の人間とのコミュニケーションを重視する姿勢など、その源流を見た気がします。『世一塾』とでも言うべき空気が、好奇心を持って学び、成長する企業文化を成立させているのだと感じました。
1981年埼玉県さいたま市生まれ。東京大学法学部卒業後の2006年に株式会社キュービックを創業、代表取締役に就任。キュービックにおいては、全社戦略策定・実行の他、創業以来Webメディアの新規企画・開発・グロースを牽引。Webプロモーション全般を専門領域とし、転職支援メディア「HOP!ナビ」や薬剤師向け人材事業、リーガル領域の法律相談メディアなどをハンズオンで立ち上げ、現在の事業の礎を築く。人事・組織領域においては、マーケティングフレームワーク「CUEM(キューム)」の開発を通じ社内人材の育成に携わる他、人事制度設計や採用実務、全体コミュニケーションの設計などを担当。グロービスマネジメントスクール講師。
インタビュー、編集:垣畑光哉、堤真友子、西野愛菜
撮影:田中振一
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