教育は百年の計―空室利用で、未来を担う子どもたちに充実した英語教育を

株式会社リノヴェ 代表取締役社長兼CEO 柏木 陽佑

柏木 陽佑Yousuke Kashiwagi

株式会社リノヴェ

代表取締役社長兼CEO

2016.04.12

英語教育と教育業界をリノべーション

アメリカの大学を卒業後、現地の出版社を経て日本の大手英会話学校に就職した私は、語学教育をライフワークにしようと心に決めていました。そして、当時勤務していた会社が倒産したのをきっかけに、英語教育事業を中心に行うリノヴェを立ち上げました。

社名であるリノヴェは、英単語の”RENOVATION”が由来です。この名には、いくつかの思いを込めています。まずは、既存の英会話教育の枠にとらわれず、国際感覚を育くみながら、英語でコミュニケーションをとれる子どもを育てたいということ。さらに、当社だけでなく、教育業界を働きやすい環境に刷新したいという願いもあります。現在、「ブラック企業」という言葉をよく見聞きします。じつは、語学学校や塾などには、そうした企業が多いのです。残業代が支払われない上に長時間労働が常態化するスクールも少なくありません。そんなところで働く人が全力で教育に向き合えるでしょうか。

だからこそ私は、従業員がやりがいを持って働ける環境づくりをしたいと考えています。
実際、後述の保育園で働く従業員の給料相場は、周辺の同業種の従業員よりも2割ほど多く設定していますし、福利厚生にも目を向け、定着率は非常に高いといえます。

また、安定した教育を行うには、コストコントロールにも配慮しなければなりません。そこで考えたのが、空き家の活用です。英会話教室はスペースさえあれば、大がかりなリフォームをしなくても開業できます。当社の第一号教室「5Star英会話 阿南本校」は、もともとおもちゃ屋だった場所を教室に転用しました。オーナーにも喜んでいただけていて、1年間のフリーレントの上に、相場の半額以下で貸していただいたりと、優遇を受けています。

子どもをバイリンガルに育てるインターナショナル保育園

現在、当社で力を入れているのは、保育所や学童保育と英会話レッスンの組み合わせで
す。昨今、子どもたちの習い事として、英会話への関心が高まっています。ベネッセ総合
研究所のレポートによれば、小学生のうち18・8%が学校外で英語教育を受けているそうです。そして、英会話のレッスンを受けていない生徒の中には、共働きで送迎が難しいなどの事情で断念している人もいると考えれば、潜在的なニーズはもっと大きいはずです。

また、同研究所は、私立幼稚園のうちおよそ47%が、英語教育を取り入れているとも発表しています。共働きの夫婦では、やはり保育所を利用する方が大多数なので、英語教育の機会を残念ながら失っているというケースも多いでしょう。女性の社会進出の必要性が高まる今、家庭環境に関係なく、子どもが英語にしっかりと触れられる環境づくりが必要です。それを可能にするのが当社のような教育施設なのです。

2014年4月には「5Starインターナショナル保育園」を開園しました。こちらは、バイリンガルの保育士や、ネイティブスピーカーの外国人の先生が在籍し、基本的にすべてのコミュニケーションを英語で行う保育園です。現在は多数の園児を預かり、収支の面でも安定した運営ができています。

ただし、ここまでに至る道のりは平坦ではありませんでした。「5Starインターナショナル保育園」の前身として、私たちは同様のインターナショナル保育園を運営していたのですが、コストの面などでうまくいかず、運営体制が二転三転するなど、非常に苦労していたのです。

とはいえ、実際に運営してみることで、インターナショナル保育園の社会的な意義を実感することもできました。なぜなら、預かっていた子どもたちが急速に英語を理解し、半年ほどでネイティブスピーカーの言っていることを理解できるまでになっているのを目の当たりにしたからです。彼らは、日本語能力を落とすこともなく、日本人のお友達ともしっかり仲よくできる、ごく自然なバイリンガルとして成長していました。

こうした環境をつくることは、子どもたちそれぞれの未来の選択肢を広げるだけでなく、今後、より国際化が進む日本社会に不可欠な人材を育てることにつながっている。そう確信した私は、インターナショナル保育園を続けるために、どうにか予算を確保する方法を模索しました。

まず思いつくのは行政からの補助ですが、インターナショナル保育園は認可外であるため、それを受けることはできません。かといって、一般的な黒字運営のインターナショナル保育園にならうと、保育費が月額20万円にのぼるなど、気軽に通うことができない値段設定になってしまいます。

いろいろと調べてたどり着いたのが、事業所内保育所でした。これならば、認定保育所ほどではないにしても、国からの助成金を受けることができるのです。

次に、提携する企業を探しました。当時の当社の社員数では、自社の事業所内保育所として申請するには少なすぎて認められなかったからです。パートナーを探しているところに、病院を運営する医療法人の関連会社、有限会社樫の木商会(医療法人樫水会)と、株式会社岡部機械工業が手を上げてくださり、ようやく開園のメドがたちました。事業所内保育所といっても、社員の家族は一人だけでも問題がないため、現在は一般の方の子どもも広く預かっています。

ところで、事業所内保育所というくくりでみると、全体のおよそ9割が赤字運営です。ですが、それは子どもをただ預かるだけでほかに付加価値がないため、園児がなかなか集まらないことが理由の一つです。あるいは、そのせいで高い保育料をいただくことができず、赤字運営せざるを得ないのでしょう。

一方、「5Starインターナショナル保育園」にはバイリンガルの保育士がいてネイティブな英語に触れ合うことができるという付加価値があるため、たとえ保育料を高めに設定しても、市外からも多くの園児が集まり、保護者の方にも満足していただけるのです。

「5Starインターナショナル保育園」に続いて、2015年には、愛媛県松山市に拠点を置く総合不動産業者の三福ホールディングスとパートナーシップを結び、「三福5Starインターナショナル保育園」を開業。祝日もオープンし、英語での保育サービスを提供しています。

現在は、保育士不足といわれていますが、当社の運営する施設に関しては、その心配もありません。なぜなら、周辺よりも高い賃金を提示できるため、多数の応募者が集まるからです。求人をかけると定員の4倍ほどの応募があり、辞める保育士もほとんどいません。働きやすい環境もつくれていると自負しています。さらには、園児の保護者から「子どもが英語を理解できるようになった」「国際感覚が身についた」というお声をいただくだけでなく、当社の施設に子どもを預けることができる病院や機械メーカーからも、母親世代の定着率が高くなったとの評価を受けています。


書籍「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言 」から掲載】


Profile

2011年3月、英語教育業界を変えたいという思いから創業。同年4月に、第一号となる英会話教室「5Star英会話 阿南本校」を開校しました。この教室は、もともとおもちゃ屋だった空きテナントを活用し、大家さんの協力を得ることで、ランニングコストの削減に成功。2014年には、同代表が運営する「株式会社英語保育所サービス」が、英語で保育を行う「5Starインターナショナル保育園」を開園。さらに、2015年6月には、英語の学童保育サービス「5star英語学童クラブ」を開始するなど、保育と語学教育の融合に力を入れています。

関連書籍のご案内

書籍
「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言」

日本社会が抱える課題の一つに空き家、空きビルなどがある。この課題解決に必要なのが発想の転換、アイデアである。人口が減少し、若者たちのワーキングスタイルが変わりつつある今、スペースの用途を単に住まいやオフィスに限定する従来型の発想では、本当の意味での課題解決には結びつかない。外国人や企業、シングルマザーなど入居困難者や介護、保育、クラウドソーシングなどといった用途で空きスペースを必要とする人が増えている現状を鑑み、自由な発想でスペースを活用していく事こそが解決の糸口となる。そして、こうした取り組みは空室問題の解決だけではなく、女性就労や子育て支援、医療、介護、インバウンドなど、一見空室とは関連性がないようにも思える様々な日本の課題を一括して解決する可能性を秘めている。そこで、本書では画期的な発想で空室問題の解決にあたる20社の実例や知見、ビジネスモデルを紹介する。

ご購入はこちら

週間アクセスランキング