行動によってしか人生の充実は図れない
ランサーズ株式会社 代表取締役社長 秋好 陽介

ランサーズ株式会社

秋好 陽介Yosuke Akiyoshi

代表取締役社長

2015.10.06

「発注者」と「受注者」のパイプを作る

高校生の頃、パソコンに初めて触れた私は、その正体は謎ながら「何かものすごいものだ」と魅力を感じていました。その後、大学時代にローンを組んで初めて手に入れたパソコンは、さしたるスペックでもないのに35万円。あの時、もしゲームなどを買っていたら、今の自分も当社もなかったでしょう。

その後、一からプログラミングを学んだのですが、20歳くらいで時間も体力もあったので、一日15時間くらいはパソコンの前に座っていたと思います。知識も技術もどんどん吸収していくと同時に、インターネットの持つ可能性に強烈に惹かれていきました。

その後、学生ベンチャーとして、ポータルサイトの運営や企業向けのホームページ制作を請け負うように。大阪に住んでいましたが、だいたい東京の会社から仕事をもらい、かなりの報酬を得るようになりました。

もっとも、私はとにかくインターネットの世界が好きでしたし、何よりも自分が求められていること、役に立っていることが大きなやりがいでした。自分の運営するサイトに数十万人の人たちが集まってくる。無名の学生フリーランスでもそういう体験ができることに、インターネットのすごさを実感していました。

卒業後に就職したのは、大手インターネットサービスプロバイダです。年収は学生時代の5分の1程度になりましたが、やはり仕事はお金ではありません。私はインターネットの最前線に立ち、企業でビジネスをしてみたかったのです。

担当したのは、新たなインターネットサービスの創出です。といっても、私が直接作っていたわけではなく、プロデューサーやディレクターのような存在でした。エンジニア、デザイナーなど20人近くのスタッフを束ねて、ニュース、地図、ブログといったサービスを企画・制作していました。

その当時のことです。仕事を外部スタッフにお願いする際、大手企業としては信頼できる外注先にしか仕事を任せられませんでした。しかし、私は自分が「受注者」として仕事をしていた経験から、優秀な個人が世の中には数多くいることを知っていました。しかも、個人に依頼した方が、コストも、納期も、クオリティもメリットが大きいのです。

ところが、企業側はどうすれば個人に発注できるかを知りませんし、個人側は大手企業から仕事を獲得する方法を知りません。両者にとって非常にもったいない現実があったのです。そこで、私はひらめきました。「企業と個人とを繋ぐサービスを作ろう!」。こうして私は同社を3年で退職し、7年前に日本初のクラウドソーシングサービス「ランサーズ」を立ち上げました。

「働く」を便利にして生き方を豊かに

クラウドソーシングとは、簡単に言うと、企業という「発注者」と、個人の「受注者」をインターネットでつなぐサービスです。企業と個人が「ランサーズ」に登録しておき、企業は依頼したい仕事と対価を開示します。それを見た個人が何らかのプランやアイディアを示し、一番魅力的な個人に仕事を任せるという仕組みです。

現在、登録している個人は20代から40代までで約7割を占めます。仕事は実に多彩でデザイン制作、ウェブ制作、ライティングなど144種類にものぼります。半数はフリーランスの人ですが、主婦、会社員なども多数登録しています。

インターネットがないと、個人はなかなか自分のスキルを仕事にできません。たとえば、過去に一級のクリエイターだった女性が、結婚を機に仕事を辞め、子育てをしている。第一線で働くのは難しくても、そのポテンシャルを活かさないのは非常にもったいないことです。そんな時にクラウドソーシングを利用すれば、全国どこででも好きな時間に仕事ができます。発注側も一級の人に任せられますから、双方がハッピーなのです。

実際、私が期待した通りのことが起きています。現在、登録企業は10数万社以上ありますが、5割以上は東京の会社です。ところが、仕事を受ける個人の8割近くは地方在住なのです。つまり、東京で発生する仕事が地方に再分配されている。これにより労働人口の減少を補完できたり、地方創生につながることを期待しています。

ところで、私がこのサービスを考えた時、「こんな便利なサービスはすでにあるだろう」と思っていました。そこで、ひたすら検索。私はエンジニアですので検索力は高いとの自負があるのですが、インターネットのどこを探してもこんなサービスはありませんでした。

起業を決断したのは、だからこそです。とにかくインターネットが好きで、誰もやっていないサービスを提供したかった。それがクラウドソーシングだった。そんな感じです。現在、クラウドソーシングを手がける会社は200社くらいありますので、今ならば絶対に手をつけなかったでしょう。

設立当初はかなり苦労しました。新しいサービスで全容がつかみにくいため、企業も個人もなかなか登録者が増えません。そこで、自分たちで集めた仕事を個人に発注したりして双方を繋げていきました。また、ロゴマークのデザインは比較的仕事が集まりやすく、デザイナーも多かったため、それを端緒に利便性を訴えていきました。

正直、折れそうになった時期もありましたが、鎌倉に会社があったことでかなり救われました。東京近郊ですが、良い情報も悪い情報もあまり入ってきません。東京だと色々な誘惑があり、「ソーシャルゲームをやってみるか」などと考えたかもしれません。

しかし、儲かることをやるのではなく、誰もやっていないことをやるという軸はぶれませんでしたし、「諦めたら起業した時の自分に申し訳ない」とも思っていました。

会社を辞めた時、私は想像以上の感覚を味わいました。朝起きて、どこにも行くところがない。会社に行く必要がなく、電話もかかってこない。誰からも必要とされず、何か世の中からぽつんと取り残されたような感覚でした。

イメージしたのは、海にそそり立つ崖です。風が吹き荒れて、高波が打ち寄せるのを見ながら、自分は崖の突端に立っている。そこで飛びこむもよし、引き下がるもよし。誰も気にしないし、心配してくれる人もいない。そんな感じです。そういう場所に自分を追いこんでまで始めた仕事なのに、途中で放り出すことは絶対にしたくありませんでした。

結果的に4年前くらいから事業が軌道に乗り、うれしい声もたくさん届いています。

たとえば、離婚して母子家庭になったものの、パートくらいしか仕事がない。そんな時ランサーズに出会い、安定した収入が得られるようになった。あるいは、東京でウェブ制作をしていた人が、実家の農業を手伝うことになり帰郷。ランサーズを利用して、空き時間にウェブ制作も続けている。このように、ランサーズが人生を変えるきっかけの一つになっていることが、何よりもうれしく思います。

当社のミッションは「時間と場所にとらわれない新しい働き方をつくる」。「働く」を効率化して自由にすれば、余暇や家族との時間も増え、豊かで幸せな社会生活に結びつくでしょう。当社では今後も「働く」を便利にすることで、働くこと以外の価値も提供していきたいと考えています。

秋好 陽介

Profile

1981年、大阪府生まれ。2000年頃にインターネットと出会ってから、インターネット大好き人間になる。2001年頃から学生ベンチャーとして活動。2005年に株式会社ニフティに新卒入社し、サービス企画/開発を担当。2008年に株式会社リートを創業。2012年に社名をサービス名であるランサーズ株式会社に商号変更。現在に至る。
ランサーズで活躍するフリーランスの方々を紹介「THE LANCER」
http://www.lancers.jp/magazine/

Contact

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東京都渋谷区渋谷3-10-13 TOKYU REIT渋谷Rビル9F
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