どんな環境でも生き残れる
「人間力」の高い人材を
育て上げる

ITカンファ―株式会社

鈴木 義経Yoshitsune Suzuki

代表取締役社長

チャンスをつかめていない人、失敗した人にも「挑戦できる環境」を

鈴木に降りかかった苦難は、多重債務からの自己破産だけではない。実はこれまで、次々と深刻な病に襲われているのだ。30歳を前に遺伝性の糖尿病が発症し、今もインスリン注射を打ち続けている。椎間板損傷により左足が麻痺し、仕事を数ヵ月休んだこともあった。

それだけでは終わらない。手足に突然力が入らなくなって検査してみると、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)という難病に侵されていることがわかった。

IT企業の社長でありながらいつも軽装なのは、指先が細かく動かず、ボタン類の着脱が困難だからだ。さらに追い打ちをかけるように悪性リンパ腫も見つかった。

命がいつ尽きるかもわからない状況に立たされている鈴木。しかし、そんな境遇を語る間も、終始大らかな笑顔で「人生は意外とどうにかなる」と言う。

「たとえ肉体が死んだとしても、1年に1回でも誰かに思い出してもらえたら、生きているのと変わらないと思うんです。僕はそういう形で長生きをしたい。だから、いろいろな人と関わり合いたいし、いろいろなインパクトを与えたいんです」

鈴木は現在120人規模の会社を300~500人規模にまで拡大することを目標に掲げ、動いている。事業領域を広げ、人を雇用し、育成する。それを自らの使命とした。

会社経営という観点では、今のやり方よりもっと効率よく利益を高められる方法があるとわかっている。社員を道具として使えば容易なことだ。しかし鈴木は、たとえ時間がかかっても、「人間」として強い社員を育てていきたいのだと言う。

「僕は運がいいな、と思っています。人にも恵まれています。あれだけの失敗をしたにもかかわらず、今こうやって好きな仕事をやっていられますし。失敗しても這い上がるチャンスはたくさんあると思います。ただし、チャンスは好機であり、成功とは違う。チャンスが来てから頑張っても遅い。いつチャンスが来てもすぐに動けるよう、いかに日頃から準備をしているか、これが本当に大切です。それを若いメンバーに伝えたいですね。とはいえ、ずっと頑張り続けろ、なんて言いません。僕自身、もともとぐうたらな人間です(笑)。だから、サボるために全力を尽くす。一瞬一瞬に全力を尽くす時期を過ごすことが未来につながっていくから、そんな皆の頑張りを支えていきたいんです」

鈴木だけでなく他の幹部社員たちの多くも、他業界で失敗して、この会社で人生の再起を図り、這い上がってきた。だからこそ、失敗して自信をなくしている人、困難から逃げて堕落している若手の気持ちを理解できるし、受け入れる度量がある。

「今、自分が何を選択すべきなのか。何を頑張るべきなのか。それに気付けるきっかけをつくれる会社、正しい方向で頑張れる会社でありたいと思っています」

インタビュアーの目線

苦しい経験を話すときも、なぜか目を輝かせ、楽しそうな鈴木社長。「ひどい目に遭うほど、『これはおいしいネタになるな』と思うのだとか。「一番つらかったことは何ですか」とたずねると、返ってきた答えは、仕事・財産・健康を失ったことではなく、「“その人のために”と思っても、その気持ちが伝わらず、失敗する姿を目の当たりにするのがつらい」でした。社員の成長のために、自らの人生を懸けようとする覚悟が感じ取れました。

インタビュー・編集/青木典子、流石香織   撮影/新見和美

Profile

東京都八王子市出身。中央大学文学部を中退し、石川県の農業短大を卒業。株式会社ノジマに就職し、ネットワーク系のサービスの販売員を務める。約1年半後に退職し独立。しかし、多重債務に陥り、パソコン・ネットワーク関連の仕事でフリーランス、会社員などとして勤務。ソフトバンクの仕事を手がけるようになる。在籍していた会社が倒産の危機に陥ると、リストラされそうなメンバーを引き連れて、2008年11月にITカンファーを設立した。

Contact

ITカンファ―株式会社

東京都千代田区鍛冶町1-7-11 KCAビル3F
http://www.itcamphor.co.jp/