公共哲学に基づくインバウンド戦略を通して持続可能なコミュニティの形成を目指す
株式会社ジャパン インバウンド ソリューションズ 代表取締役社長 中村好明

株式会社ジャパン インバウンド ソリューションズ

中村好明Yoshiaki Nakamura

代表取締役社長

2016.04.13

巨大小売企業「ドン・キホーテ」グループの一部門としてのスタート

「ジャパン インバウンド ソリューションズ(JIS)」は当初、ドン・キホーテグループのインバウンド受け入れ態勢を整備するプロジェクトとして、2008年7月、スタートしました。ドン・キホーテ内の訪日外国人観光客の買い物の免税対策や、その誘致が主な業務だったのです。

しかし、あるとき、それだけでは限界があると気づきました。東京や大阪など大都市ならともかく、地方のドン・キホーテの店舗に訪日客を呼び込むには、単店のパワーだけでは力不足で、ドン・キホーテ単体での買い物の魅力だけでは集客できない。それゆえ、店舗のある街あるいは地域全体の魅力を束にして世界にPRしていかなければ、地方へのインバウンドの集客は成功しないのだということを痛感したのです。なぜなら、訪日客は街全体、地域全体の魅力を目当てに訪れるからです。また、ご当地でのインバウンドの需要が高まれば、その地方の経済全体が潤います。地元の人々が潤えば、ドン・キホーテに来店する日本人顧客の購買力も増し、自店も繁栄し続けることができるでしょう。

そのときから、地域全体を巻き込んだインバウンド対策を考えるようになりました。当初、社内では「インバウンドプロジェクト」の名称で動いていましたが、2010年3月、店舗のある地域全体を盛り上げることを目的に、「インバウンド&地域連携プロジェクト」にプロジェクト名称も人員体制も大幅にバージョンアップ。

これと連動するように、ドン・キホーテグループだけでなく、国や自治体や民間企業からの業務依頼も増え始めました。そして、2013年、活動のステージを一挙に拡大するために、インバウンドに関する総合ソリューションを提供する専門企業として、ジャパンインバウンド ソリューションズ(JIS)を創業することになったのです。

個人訪日観光客への対応は団体戦で

当社のミッションは、全国47都道府県、1718あるすべての市町村にコミットし、日本全体でのインバウンドツーリズムを盛り上げることです。

そのため、年間200回以上、私は、国内外での講演・講義・講習活動のために飛び回っています。また、各地域でインバウンドの実行委員や推進協議会などをつくり、その推進役としても積極的に関わっています。当社の本部は東京にありますが、提携先は、日本のほぼすべての都道府県にわたっています。さらには、世界の5つの都市に現地事務所を構え、海外の約30の都市で具体的なプロモーション・マーケティング事業を展開しています。

私たちは、一過的な、そして断片的なインバウンドのノウハウを提供しているのではありません。地域の人々全員が連携して、訪日客のみなさんに満足を提供し、再び訪れたいという気持ちになってもらうための総合的な施策に注力しているのです。そして、その実現のために必要な諸要素、すなわち、国際観光人材育成、戦略的なマーケティングやプロモーション、街づくりその他総合的なプラットフォームを提供し、ひいては、持続可能な地域社会の基盤の実現に寄与することこそが、私たちの使命であると考えています。

国内マーケットでは、どの民間企業も日々、地域内の競争に明け暮れています。近隣の同業他社の店はライバル。隣の温泉地、隣の観光地もみんなライバルといった感じでしょう。

しかし、インバウンドという視点でとらえ直すと、事情はまったく異なってきます。インバウンドでは、地域内の全員が味方(チームメイト)になるからです。なぜかというと、外国人に訪れてもらおうと願うなら、まず海外の競合国に競り勝って「日本」の魅力を訴求できなければなりません。いわば、国家間競争に参加することになるわけです。そして次に、その日本の中においても、自分たちの地域を訪問先に選んでもらうためには、そのエリア全体が魅力的でなければなりません。必然的に、地域内での競争ではなく、連携が重要となるのです。

また、大きなインバウンドのトレンドとして、訪れる観光客は団体客からFIT(個人観光客)にシフトしてきています。団体観光客が多い頃ならば、ホテルやショップ、ドライブインなどは、ランドオペレーターやツアーガイドに手数料やマージンを払って団体観光客を呼び込むBtoBの商売ができたのですが、個人観光客にその手法は通用しません。

また、訪日客のみなさんは、一つのショップや宿や食事処のためだけに、わざわざその地域へは足を運びません。

こうした訪日観光客の特性に鑑みても、地域全体の魅力を向上させる必要があるわけです。インバウンドの主流が団体観光から個人観光に変わりつつある今、迎え入れる側の地元は、むしろ団体戦で挑むことになるのだと認識していただきたいと思います。まさにパラドクス(逆説)的戦略が必要になるのです。


書籍「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言 」から掲載】


Profile

2008年、ドン・キホーテグループのインバウンド事業を担うプロジェクトとしてスタート。当初は同社グループ内の免税対応や、店舗のある地域への外国人観光客の誘致などを業務としていました。そんな中、同プロジェクトの成功を目の当たりにした国や自治体、民間企業から、インバウンドに関する相談や業務依頼が舞い込むように。そして、2013年、このプロジェクトチームが丸ごと、株式会社ジャパン インバウンド ソリューションズ(JIS)として分社独立。プロジェクトリーダーの中村さんが同社の代表取締役社長に就任しました。2014年初頭には、新宿エリアの7社12店舗が連携して集客を行う「新宿ショッピング・キャンペーン」の実行委員長として企画を推進(現在は15社に拡大)。日本のインバウンド分野における地域振興を手がけるスペシャリスト集団として注目を集めています。

関連書籍

書籍
「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言」

日本社会が抱える課題の一つに空き家、空きビルなどがある。この課題解決に必要なのが発想の転換、アイデアである。人口が減少し、若者たちのワーキングスタイルが変わりつつある今、スペースの用途を単に住まいやオフィスに限定する従来型の発想では、本当の意味での課題解決には結びつかない。外国人や企業、シングルマザーなど入居困難者や介護、保育、クラウドソーシングなどといった用途で空きスペースを必要とする人が増えている現状を鑑み、自由な発想でスペースを活用していく事こそが解決の糸口となる。そして、こうした取り組みは空室問題の解決だけではなく、女性就労や子育て支援、医療、介護、インバウンドなど、一見空室とは関連性がないようにも思える様々な日本の課題を一括して解決する可能性を秘めている。そこで、本書では画期的な発想で空室問題の解決にあたる20社の実例や知見、ビジネスモデルを紹介する。

ご購入はこちら

週間アクセスランキング