海外に行くなら途中下車無効と覚悟せよ
上海天家餐飲管理有限公司 代表取締役 島原 慶将

上海天家餐飲管理有限公司

島原 慶将Yasuyuki Shimahara

代表取締役

2015.06.08

海外に行くだけなら現実逃避

天家はマグロを核に据えた日本料理店を中国大陸で展開しています。2014年12月現在、上海を中心に直営店12店舗、フランチャイズ3店舗が営業中です。ターゲットは中国人のお客様で、現地では日式料理と呼ばれる業態です。

「なぜ海外に来たのか?」という質問をよく受けますが、一言でいえば日本では芽が出なかったからです。海外に来ればすべてがリセットされ、しがらみも一切なくなります。つまり現実逃避をしたわけです。中国に来た時から、それを自覚していました。

人生は連戦連勝が望ましいけれど、それほど甘いものではありません。時には、逃げても構わないと思います。ただし「今回は逃げた」と認めることが重要です。その時は5歩までしか踏み止まれなかったとしても、次は8歩まで、10歩まで踏ん張ればいい。

しかし、現実逃避をして海外に来たと認めない人があまりにも多い。「夢があるから」「やりたいことがあるから」というのは芽が出ない時の言い訳になっていることもある。現地でコミュニティに入り交流を深めることに一生懸命になる人もいますが、そんなことは六本木でもできます。そうやって現実と向き合わずにいれば、海外版ニートになるだけです。日本に戻っても、ただ海外にいたというだけでは、社会に必要とされません。海外に出る切符は、基本的に途中下車無効です。降りてしまえば二度と乗れません。その覚悟を決めなければ、海外に出てはいけないと思っています。

上海で起業したことは特別なことではないと私は思います。東京から2時間半、商圏としては東京の人が大阪で働いている程度の感覚です。でも、海外へと逃げたのだから、石にかじりついてでも利益を出し「日本にいるよりも遥かに儲かっている」と言えるようにならなければ、と強く思っています。しかし、言葉も考え方も日本とはまったく異なる環境で食べていく、そして日本にいる以上の結果を出すとなるとやはり難易度は上がります。「故郷に錦の御柱を立てるまで帰らない」という覚悟を決めていれば、なし崩し的な暮らしに陥ることはないと思います。

人生には潮目があり、いい流れを待つ

学生時代から、「将来は起業したい」と思っていました。大学卒業後、上場を控えたアパレル系小売業のベンチャーに入社し、3年間働きました。当時は休みも1ヵ月に1日程度。毎日帰宅は午前2時頃、寝て起きて出社することだけの繰り返しでした。その生活に理不尽さを感じながらも、今振り返るとあの3年間は社会人としての全盛期で、最も生き生きとした時代だったと思います。毎日勢いよく営業して、とにかく目一杯働いて非常に楽しかった。

また、上場前企業の雰囲気を経験できたのもよかった。限られたパイを取り合う中、会社というのはここまでやるものだと学びました。そういう意味でとても良い会社でした。そのうちに、当時の上司から「独立するから手伝ってくれ」と声をかけられ転職しましたが、この会社はまったくうまくいかず、1年足らずで潰れてしまいました。

ちょうど社会人4年目で、同期は仕事が面白くなってきている時期に自分は無職。また履歴書を書いて就職先を探そうという気持ちにはなれません。次第に家にひきこもるようになりました。貯金が底をつき家賃が払えなくなると、高知の実家に戻りました。使う金は1日500円と決め、テレビを見たり散歩したりして過ごすうち、自己顕示欲ばかりがどんどん肥大化するのを感じていました。

そんな生活を2年ばかり続けましたが、そろそろ30歳という時に「ここで1回リセットしよう。海外に行こう」と決心したのです。だから行き先はどこでもよかった。中国に決めたのは、その頃、希望の楽園のように報道されていたし航空券が安かったからです。

私は自分の力でチャンスを得たわけではありません。よく努力が大切と言いますが、きちんと生きている人、特に日本人は皆それなりに努力していると思います。誰だって、一生懸命生きています。でも努力だけでどうにかなるほど、人生は甘くない。問題は「引きの強さ」だと思います。

人生には潮目があります。悪い時はジタバタしても始まりません。潮目は必ず変わります。いつかきっと良い流れが来る。その時の「引き」がモノを言います。

今日の私があるのは、引き上げてくれた人たち、メンターたちのおかげです。つまり、人生は自分の力だけで切り拓くものではないのです。例えば、社会人になった当初から世話になっている会社の社長Sさんには、寿司の頼み方から洋服の買い方まで、仕事以外のこともたくさん教わりました。ひきこもり当時も、よく食事を奢ってもらったものです。私が、ひきこもりをやめて中国に行くと言い出した時、誰も賛成しませんでしたが、Sさんだけは爆笑して「お前みたいな奴が日本にいても迷惑だ。ドカンとやってくれ」と言ってくれたのです。ビザの相談にも乗ってくれました。必要な時に、大切な人と出会うことも「引きの強さ」だと思います。

島原 慶将

Profile

1973年、高知県生まれ。
日大理工学部海洋建築工学科卒業後、ベンチャー企業の営業、香港にて卸会社の創業を経て、2004年、31歳で上海にて創業。2005年、マグロとカニの専門店「天家」を上海にオープン。2014年末現在、15店舗(FC3店舗含む)を展開中。現在は、本マグロが主力の食材。参考著書「マグロ帝王 ~トロで中国へ挑んだ男・島原慶将~」(鵜養葉子/著・ポプラ社)。

Contact

上海天家餐飲管理有限公司

中国上海市延安西路1088号 長峰中心631室
+86-21-6212-1375

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