途中でやめなかったからこそ、今がある

Personnel Consultant Manpower(Thailand)Co., Ltd. 代表取締役社長 小田原 靖

小田原 靖Yasushi Odahara

Personnel Consultant Manpower(Thailand)Co., Ltd.

代表取締役社長

2015.04.26

タイという上りエスカレーターに乗り続けた結果の成長

バンコクで、人材紹介会社「パーソネルコンサルタントマンパワータイランド」を設立してからもうすぐ20年になります。知人と2人で始めた会社は、今では従業員数が60人、取引企業も約8000社になりました。2008年にはタイ労働省職業斡旋局から表彰を受けることもできました。

今でこそ、タイが成長市場であることは日本でも広く認知され、起業したり、日本を離れてタイで就職したりする日本人も増えていますが、起業当時、タイに住んでいる日本人といえば、日系企業の駐在員ぐらいでした。私はそのタイで、日系企業に対してタイ人のスタッフを紹介するという事業を始めたわけです。

日本人がほとんどいなかった時代に、どうしてわざわざタイで事業を立ち上げたのかというと、自分でも「成り行き任せ」としかいいようがありません。

私は高校までは福岡で育ったのですが、大学は日本ではなく、アメリカ・オレゴン州にある小さな大学を選びました。卒業は1992年。その頃のアメリカは不況のさなかにあり、大学を卒業しても就職先がなかなか見つからないという状況でした。そのため若者たちの間ではアメリカに見切りをつけて、NIEs(新興工業経済地域:Newly Industrializing Economies)を目指す動きが起きていました。NIEsとは、20世紀後半に急速な経済成長を果たした開発途上国・地域の総称で、アジアでいえば、韓国、台湾、香港、シンガポールといった国々を指します。

彼らに触発された私は、「これからはきっと東南アジアだって成長を遂げるはず」と考え、まずはマレーシアに渡ることにしました。マレーシアを選んだのは、たまたまマレーシア航空で働いていた友人から、クアラルンプール行きの航空券を安く入手できたからに過ぎません。

そのマレーシアで2週間、仕事を探したものの見つからず、北上してタイに行くことにしました。そしてバンコクで日本人駐在員向けの不動産斡旋業の仕事に就いたあと、半年して「このビジネスだったら自分でもできる」と考え、独立。そしてさらに1年ほどして「不動産斡旋業より人材紹介業のほうがお客様の役にも立てる」と判断して、現在の事業に切り替えました。そんなわけで本当に「成り行き任せ」なのです。

成り行きで始めたこのビジネスですが、私は幸いにして今でも続けることができています。日本人の中には、せっかくタイで事業を立ち上げても途中でやめて日本に帰ってしまう人も多い。しかし私はやめずに続けました。そして以後20年間、右肩上がりの成長を続けてきたタイという上りエスカレーターに私も乗り続けた結果、成長を遂げることができたのです。

最近、つくづく人材紹介業は感謝されるスパンが長い仕事だと感じています。先日も創業当時に日系企業への就職を斡旋したタイ人と20年ぶりに再会したのですが、彼はそれからずっとその会社で働き続け、ついに現地法人の社長にまで昇り詰めたのだそうです。私のことを忘れずにいてくれて、「あのとき紹介してくれたお陰です」とお礼を言われました。20年越しの感謝とは我ながらすごいと思いますし、何よりもうれしいものです。

日本人駐在員から感謝されることもよくあります。弊社は、例えばバンコクに進出してきたばかりの企業に対して、現地のオフィスビル情報を提供したり、駐在員の住居を一緒に探したり、美味しい日本食レストランを紹介したりといったことをごく当たり前のようにやっています。創業当時からのスタイルなのですが、とても喜んでいただけるうえ、結果的に弊社を贔屓にしていただけることにもつながっています。

タイ人は「仕事」ではなく「人」に付く

感謝の念を持って仕事をするのは、どこの国でも大事なことです。

日本と比べ、東南アジアは概して離職率が高いといわれます。当社で採用しているタイ人も、以前は毎年何十人もやめていた時期がありましたが、今では定着率が上がり、この数年間は60人中1人もやめていません。

その理由は、私自身が変わったことがいちばん大きいのだと思います。かつての私には、英語ができない現地スタッフを「努力や意欲が足りない」と、どこか見下すような気持ちがありました。しかしあるときから「一緒に働いてくれてありがとう」と感謝の念を持って接するようにしたところ、自然と相手もそれに報いるかのように、頑張って働いてくれるようになったのです。

特にタイ人は、ビジネスライクな関係より、むしろウェット寄りの関係を好むように思います。例えば、仕事が終わったあとに食事へ連れ出し、そこで家族の話を聞いてあげるだけで、その後の職場での関係性は全然違ってきます。お国柄によっては、上司が部下のプライベートに介入するような真似を嫌がるところもあるかもしれませんが、タイはむしろ逆なのです。

失敗も、頭ごなしに叱らず、相手の言い分も聞きながら指導します。すると「あぁ、この上司はいい人だな。この人のために頑張ろう」という気持ちになってくれるものです。タイ人は「仕事」ではなく、「人」に付くんですね。

確かにタイでは「ジョブホッピング」という言葉が普通に使われ、職場の居心地が悪ければみんなすぐにやめてしまいます。けれども従業員を慮った職場であれば、タイ人だって長く働いてくれる。そこは日本人と何ら変わらないと考えるべきです。

小田原 靖

Profile

1969年福岡県生まれ。
1993年に渡タイ。1994年パーソネルコンサルタントマンパワータイランド社設立。タイに進出している日系企業約8000社に正社員を供給している。登録者総数7万人を超える。2012年の平均月間決定件数は約250人。2008年から2012年まで5年連続、タイ国労働省に登録されている約190社の人材紹介会社の中で最多の紹介人数を記録し最優秀功労賞の表彰を受けている。2012年、新規進出企業の激増により日系企業専門のレンタルオフィス「OFFICE23」を隣接するビルで開始。2013年2月にヤンゴンにてミャンマーで初の日系人材紹介会社の運営を始める。ほかに、人材教育事業、翻訳事業も手がける。タイで頑張る日本人起業家を応援する組織、タイ王国和僑会幹事を務める。

Contact

Personnel Consultant Manpower(Thailand)Co., Ltd.

L, UL Floor Interchange 21 Bldg, 399 Sukhumvit Road, Klontoey Nua, Wattana, Bangkok 10110, Tailand
URL : http://personnelconsultant.co.th/

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