その街らしく、愛着を持って暮らせる建物つくりが空室だらけの物件を甦らせる
株式会社NENGO 代表取締役社長 的場 敏行

株式会社NENGO

的場 敏行Toshiyuki Matoba

代表取締役社長

2016.04.12

デベロッパー主導の街つくりを変えたい

私は以前、フォーシーズンズホテル 椿山荘東京(現ホテル椿山荘東京)のホテルマンをしていたことがあります。そのとき一緒に働いていた同僚は、お客さまに喜んでもらうことが大好きな人たちばかりでした。たとえ給料が安くても、「ありがとう」という言葉をもらえれば頑張っていけると考えている人たちです。

その後、父の創業したこの会社に入社し、建設業、不動産業に入ってまず思ったのが、自分の利益を優先しがちな人が多いということです。ホテル業に就いていたときとのギャップに驚きつつ、この業界全体の風潮を変えたいと強く思いました。

不動産は、人生で一番といっていいほどの大きな買い物です。そこに携わる人間が自分の利益第一であってはいけない。まず目の前のお客さまを幸せにしないでどうする、と思ったのです。NENGOの一番の理念は、「企業活動を通じて世のため人のために貢献する」ということ。簡単にいうと、目の前の人をいつも幸せにしよう、ということです。

そして、この会社のミッションは、その土地の気候、風土、歴史、文化を読み込んで、その土地〝らしさ〞をつくること。それによって「その土地に住みたい」「遊びに行きたい」「働きに行きたい」という動機をつくり出すことが我々の使命だと考えています。

〝らしさ〞をつくることがなぜ必要なのか。たとえば、私たちがパリやローマに遊びに行くとき、そこにパリらしさ、ローマらしさを求めます。パリに遊びに行って、そこに日本を模した街並みがあったらがっかりしてしまうでしょう。

しかし、戦後を経た日本からは、日本らしさがどんどん失われています。グローバル化が進むほど、日本が日本であることの価値は増します。にもかかわらず、それを忘れて西洋風、欧風な建築物などがどんどん建てられていく…非常にもったいないと思います。加えて〝街らしさ〞もどんどん失われています。今やどの駅の周りにもナショナルチェーン店が並び、同じような街並みが広がっています。そんな街つくりをしているのが、現在の不動産建設業界です。基本的にデベロッパーが街つくりを考え、その下請けで建設や設計事務所が動きます。ところがデベロッパーは建築や街つくりを学んでいないことが多いため、建物や景観への思い入れに欠けるのです。こうしたデベロッパーが主導する構造が変わらない限り、街の風景は変わりません。その街つくりを先頭に立って変えていこうというのが、我々の最もやりたいことです。

 

一つの部屋から街全体へ。街を変える部屋つくり

当社にはいくつもの事業部があり、そのすべてが、先ほどのミッションに向かって、家つくり、街つくりを進めています。たとえば、マンションのひと部屋をリノベーションするときにも、我々はその土地の気候、風土、歴史、文化を読み込み、この街が将来どうなるべきかを考えて、部屋つくりを行います。そうすることで、その地域で住みやすい部屋になり、地域ならではの暮らし方ができるようになるでしょう。

とある分譲マンションのひと部屋をそのようにリノベーションしたところ、「NENGOさんの考えでマンションの大規模修繕やってほしい」という依頼があり、今では、建て替えの依頼までいただいています。そうして一つの部屋が横につながっていけば、いずれ街が変わります。我々はそこを目指しているのです。そして、現在は、横浜市港北区の再開発におけるグランドデザイン事業を請けるなど、直接的な大規模開発にも関わるようになっています。


書籍「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言 」から掲載】


Profile

現代表の父親が創業したオリエンタル産業株式会社が行っていた耐火被覆事業から業容を拡大。快適な温熱環境を提案する断熱工事から、心地よい空間を提案するポーターズペイントの販売や塗装工事と業務を拡大。現在は戸建ての建築からマンションのリノベーション、豊かな暮らしを提案する不動産事業などを手がけています。「目の前の人を幸せに」という思いから、社員を大切にする社風も特徴で、離婚休暇をはじめとするユニークな制度を設けています。

関連書籍

書籍
「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言」

日本社会が抱える課題の一つに空き家、空きビルなどがある。この課題解決に必要なのが発想の転換、アイデアである。人口が減少し、若者たちのワーキングスタイルが変わりつつある今、スペースの用途を単に住まいやオフィスに限定する従来型の発想では、本当の意味での課題解決には結びつかない。外国人や企業、シングルマザーなど入居困難者や介護、保育、クラウドソーシングなどといった用途で空きスペースを必要とする人が増えている現状を鑑み、自由な発想でスペースを活用していく事こそが解決の糸口となる。そして、こうした取り組みは空室問題の解決だけではなく、女性就労や子育て支援、医療、介護、インバウンドなど、一見空室とは関連性がないようにも思える様々な日本の課題を一括して解決する可能性を秘めている。そこで、本書では画期的な発想で空室問題の解決にあたる20社の実例や知見、ビジネスモデルを紹介する。

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