クロスボーダー人材ビジネスで世界を変える
ポーターズ株式会社 取締役 渡邊 智美

ポーターズ株式会社

渡邊 智美Tomomi Watanabe

取締役

2015.06.05

手探りでシステムを作るところからスタート

ポーターズは2001年に代表の西森康二と私のふたりで立ち上げた会社で、創業以来、人材ビジネスに特化したアプリケーションプラットフォームを提供しています。2014年に、私が代表となりシンガポールにポーターズグローバルを設立しました。自分たちの事業をグローバルで展開したいという、創業時の夢がようやく実現しました。

もともと西森も私も同じ人材紹介会社で働いていました。1999年頃、インターネットの普及とともにデジタル化が進んでいる中、人材紹介業に関してはまだ大半がアナログでした。履歴書は手書きのものを求める企業も多く、コピーしてはファイリング管理です。紙管理だと社内ですら情報共有しづらいのが難点でした。私は西森も含め5名ほどのチームのアシスタントをしていたのですが、その頃は同業の人材紹介会社約20社とのアライアンス(業務提携)ネットワークというものがありました。例えば企業からお預かりした求人に合う求職者がいらっしゃらない場合、アライアンス先に「求職者の方はいらっしゃいませんか?」と連絡してマッチングするのです。この場合、成約した際は売上を折半します。

こういった情報共有がもっとスムーズに行うことができればより売上に貢献できると思い、システムの導入を検討したのですが、派遣のシステムはあっても紹介に特化したシステムは見つかりませんでした。ならばと、私たちは情報管理システムを自分たちで作ることにしました。

まずはプロトタイプとして社内システムを構築し、試験運用を始めました。構築といっても西森も私もエンジニアではないので、西森の知り得る知識を使って作ったものです。試験運用で問題がなかったので、アライアンス先でも運用を開始しました。しかし、社外と共有するのであれば情報セキュリティの面からもきちんと対応したシステムでないといけません。そこで当時の会社の社長に、情報管理システム事業をしたいと相談しました。できれば企業内起業したかったのですが、賛成を得ることはできませんでした。

そのタイミングで西森が有限会社を設立します。後に私も加わり、人材紹介会社向けサービス事業を目的にスタートしたのがポーターズ株式会社です。設立資金は西森の個人資産と私の前職(OL)時代の貯金を投じました。しかしシステム開発にはそれだけでは足りず、西森の知人・友人にご協力を募り、なんとか1000万円の資本金を作る事ができました。今思えば無謀なスタートだったと思います。たった一つのシステム要件だけを掲げ、商品を作る前に会社を設立したのですから。売るものもない中でシステム開発費だけが出ていく。半年もしないうちに資本金は底をつき、自分たちの給与も出せず、それから半年以上にわたる不眠不休ならぬ不眠無給の生活となりました。

ビジネスとして提供するサービスを作るにあたり、私たちにはその技術力はないので、外部への開発技術が必要となりました。しかし、ソフト開発の外部発注の経験もなく、資金も乏しいので、最初は知り合いのつてを辿り「こういうものを作っていただけませんか?」とお願いし、最初はほぼボランティアでご協力いただいていました。

それと同時に、事業計画を描き、金融公庫から融資を受けました。そのお金を投資してさらに開発を進めます。その間の運転資金を得るために、当社も人材紹介業の許認可を取り、昼間は人材紹介、夜間はシステム開発を進める日々でした。

こうして会社設立から1年後の2002年9月、初サービスインを果たします。できた商品はプロ・エージェントというASP(Application Service Provider)型のシステムです。月額料金を支払うと、インターネット経由でシステムを利用できます。最初のユーザーとなっていただいたのは、もともとお付き合いのある親しい社長さんでした。たくさんのダメ出しをいただきながら改良を重ね、さらに毎月1社ずつ程度お客様を獲得していきました。運営のために2005年には正社員を採用し、開発も完全内製化しました。設立時に西森の知人からお借りしたお金もこの年にようやく返済を終えました。

やがてプロ・エージェントのお客様は順調に増え続け、のべ約560社に導入していただけるほど成長しました。

ポーターズの名前をもっと知ってほしい。商品をもっと知ってほしいという想いから、2009年に人材ビジネスに特化した唯一の専門誌『ポーターズ・マガジン』をスタートします。取材や編集などの経験もない中でのチャレンジでしたが、私にとっては業界の事を深く知ることができ、業界の方々に発信していける自社メディアを立ち上げたことは大きな前進でした。年に4回の季刊で現在Vol.25(2015年2月現在)まで続けてきました。

私は編集長として、毎号さまざまな方にインタビューさせて頂いています。私の人材ビジネス経験よりもキャリアのある方々のお話を伺っているので、とても勉強になる楽しい仕事です。また、「貴社の新しい取り組みがあったら教えてください」とお願いすることで、ネットワークができ、いち早く情報をもらうことができるなど、より内容の充実が図れていると思います。業界の情報をお届けすることで、「人材ビジネスのことなら、ポーターズに聞けば分かる」と言っていただけることが目標です。

やりたいことのために飛び出す

子どもの頃は父親の仕事の関係で、東アフリカのタンザニアで小学校4年生から中学校1年生までの約3年間過ごしました。私たち子どもは楽しかったのですが、母は日々起こる「断水」や「停電」に苦労したと思います。その後、父のケニア赴任の辞令とともに、母は私と弟を連れて日本へ帰国。しかし私たち姉弟が「またアフリカに行きたい!」と主張し、1年後にはケニアのナイロビに移り住み、そのまま高校卒業まで過ごしました。

帰国後は日本の大学を受験し、「将来は教師になろう」と決めて教育学科を専攻しました。教師を目指したのは、父がケニアへ赴任した当初、1年だけ通った日本の中学校の担任教師の情熱が新鮮で、とても印象的だったからです。日本の学校はイベントが多く、先生がリーダーとなってクラス全体が一致団結して取り組んでいました。

しかし教育実習まではやり終えたものの、「何か違う」と教員免許は取らず、そして就職先も決めないまま卒業し、約3ヵ月間は、都庁のパスポートセンターで嘱託として働きました。その後ご縁があって、創業3年目のベンチャー企業にアルバイトとして入社し、西森と出会います。その会社で人材紹介会社として立ち上がる過程を見ることができたことや、紹介ビジネスの面白さを知ったこと、すべてが現在の基盤になっていると思います。

プライベートでは、趣味のゴルフが縁で結婚した夫がいます。彼もたまたま私のシンガポール立ち上げ準備期間中の昨年夏より札幌に単身赴任となりました。東京にいる時もふたりでの時間を過ごす時は飛行機移動だったので、飛行時間は異なるものの、私にとっての距離感はそれほど変わりません。

ポーターズ創業時から、「自分たちのサービスでグローバルな人材ビジネスを可能にしたい」という想いがあり、お客様の要望で英語版を作ったことはありましたが、プロ・エージェントはカスタマイズ性に限界がありました。そこでこれまでの経験やノウハウの蓄積をもとに、グローバル利用を念頭に新たなアプリケーションサービスを開発しました。これが2012年にリリースしたHRビジネスクラウドで、現在は日本語と英語に対応しています。データベースの入力言語は何語でもOK。国によってフローや必要なフィールドが異なりますが、ユーザー側でカスタマイズ可能で、初期投資を抑えられるという強みがあります。

東南アジアは特にクロスボーダーの紹介ニーズが高い地域です。しかし現実には、仮に同じマルチナショナルカンパニー(MNC)に属した紹介会社であっても、国によってシステムが異なって情報共有ができないというのが現状です。もしシステムを共通化して、シンガポールの求人情報と東京のデータベースにあるシンガポールで働きたい求職者の情報をマッチングできれば、人材紹介の世界は大きく変わります。

グローバルに人材ビジネスを行っている日本企業、欧米系MNC、そしてASEAN諸国のローカル企業まで導入を目指します。

日本国内では人材ビジネスサービスプロバイダーの先駆けでしたが、海外には多くの先行企業が存在します。その中でのチャレンジです。今後は拠点も各国、各都市ごとに増やし、世界の人材情報を繫げて業界を牽引していきたいと思っています。

渡邊 智美

インタビュアーの目線

普段は自社媒体『ポーターズ・マガジン』の編集長として取材する立場であるということで、逆に取材を受ける側となった今回、カメラに照れまくっている姿がとてもチャーミングでした。小学生から高校生まで東アフリカで過ごしたというのですから、まさに満を持しての海外進出。これからのアジア展開で本領を発揮されるのが今から楽しみです。

書籍「世界を動かすアブローダーズ ~ 日本を飛び出し、海外で活躍するビジネスパーソンたち 」から掲載】


Profile

1974年、千葉県生まれ。
1997年、ベンチャー起業支援のインターウォーズ㈱に入社。経営企画ならびに人材紹介ビジネスの立ち上げ・運営に従事。2001年、ポーターズ設立。2002年に人材紹介業務支援システム「プロ・エージェント」、2012年にクラウド型人材ビジネス向けマッチングCRM「HRビジネスクラウド」をリリース。主に有料職業紹介事業者向け営業や人材ビジネス支援マガジン「ポーターズ・マガジン」編集長を務める傍ら、2014年、ポーターズ100%出資子会社PORTERS GlobalのManaging Directorに就任。

Contact

ポーターズ株式会社

〒107-0052
東京都港区赤坂8-5-34 TODA BUILDING 青山3階
03-6432-9829
PORTERS Global Pte.,Ltd.
12 Eu Tong Sen Street THE CENTRAL #06-170 Singapore 059819
http://www.porters.jp/

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「世界を動かすアブローダーズ ~ 日本を飛び出し、海外で活躍するビジネスパーソンたち」

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ウェブサイト:http://www.abroaders.jp/

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