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武蔵株式会社

大田 智一郎Tomoichiro Ota

代表取締役社長

自らの経験から感じた「IT×不動産」の需要

熊本県天草市に生まれた大田。高校卒業後は専門学校でプログラミングを学び、IT業界草創期のIT系企業に就職した。業界には成長の可能性を感じたものの、システムを「作る側」というポジションが自分に向いているとは思えなかった大田は、リクルートでIT関連情報誌を出すと聞き、転職。パッケージソフトの情報を扱う雑誌の制作に携わるが、時代に先駆けた内容だったため、ほどなくして事業撤退となった。

その後、住宅情報誌事業部に配属され、現在の『スーモ』の営業を務めた。このとき、不動産仲介会社への営業活動を通し、業界の課題、不動産仲介会社が何に困っているのかを知る。さらに不動産販売会社で経験を積んだ後、1999年に独立。不動産仲介業者の課題解決を目指して起業した。

「当時は、一般向けのインターネットが普及し始めた時期でしたが、不動産業界はIT技術の浸透が遅く、主に紙ベースで情報を管理していました。しかし、多数の物件や顧客を管理するためには、IT技術を導入した方が効率が良い。そこで、私たちがその先鞭をつけるべく、システムの開発を決意しました」

ITと不動産業界、両方の経験があり、実務を知っていた大田ならではの決断だった。2001年にはリクルート時代の先輩が起業した会社と合併して不動産ポータルサイトを運営するとともに、マルチユースの前身となるシステムを手がけた大田は、2006年、事業分割する形で武蔵株式会社を創立した。

現在は東京と大田の出身地である熊本にオフィスを構える。東京には営業や管理部門のスタッフだけを集め、システム開発はすべて熊本で行っている。

熊本に開発拠点を置いた理由は、離職率の低さにあるという。東京採用のエンジニアは、他に仕事の選択肢が多数あるためかすぐに辞めてしまい、技術の蓄積が困難。厚い信頼関係を築くのも難しかった。しかし、熊本ではすべてのスタッフが3年以上勤務している。熊本在住のITエンジニアは少なく、未経験者を採用して育成する必要があったが、事務所開設から10年間でナレッジもたまり、より精度の高いシステムの開発が可能になった。

今後は、不動産仲介会社の営業向けアプリの開発にも力を入れていく。現在地周辺の物件や地価情報、物件成約事例などをお客様にその場で共有できるようにし、営業しやすい環境をIT分野からバックアップしていく。

受託ではなく、自社でオリジナル商品を開発することにこだわってきた武蔵だが、その理由を大田はこう語る。

「私がエンジニアをしていた頃は分業で、一人では何もできませんでした。客先に常駐して徹夜をすることも日常茶飯事。自分の会社のスタッフにはそういう働き方をしてほしくなかったので、ビジネスモデルにはこだわりました。自分たちで作ったシステムを、自分たちで営業して売る。他の会社に任せるのではなく、すべてオリジナルの商品で勝負したかったんです。自社でノウハウが溜まれば、また次のサービスもそこから生まれます。今は情報が溢れる社会ですが、必要な情報を効率的に得られる仕組みを作ることで価値を提供し、不動産業界の営業をトータルに支援し続けていきたいです」

インタビュアーの目線

「こういう課題があるからこうしたい」次々とそういったお話をされていた大田社長。時代の先を見据えて行動するという姿勢は、「これからはITの時代だ」とITの専門学校に進学した頃から備わっていたものであると感じ取りました。また、「自分たちで」という言葉に強いこだわりを持ち、社員の働き方にもその意識を色濃く反映させているというお話から、自分たちで不動産営業の時代の次を行くという覚悟がうかがえました。

インタビュー・編集/高橋大道、渡辺絵里奈 撮影/新見和美

Profile

熊本県天草市生まれ。高校卒業後、ITの専門学校に進学。IT系企業へ就職したのち、リクルートへ転職。リクルートでIT関連情報誌の立ち上げ、住宅情報誌の広告営業を行う。さらに不動産販売会社で経験を積んだ後、1999年に当時の先輩とともに不動産業界向けのシステム開発・販売を行う企業を設立。不動産ポータルサイトを運営するとともに、「マルチユース」の前身となるシステムを提供していた経験から、2006年に事業分割し武蔵株式会社を設立。現在は東京と熊本に拠点を置き、不動産に特化したシステム開発・販売を行う。