海外には社会に貢献できる仕事がごろごろしている

JEDUCATION 代表 長谷川 卓生

長谷川 卓生Takuo Hasegawa

JEDUCATION

代表

2015.06.08

東南アジアに目を向けよ

当社は1999年、28歳の時にバンコクで立ち上げた留学エージェントです。

海外に興味を持ったのは、子どもの頃で、父親の影響です。私の父は建設関係の仕事をしていて、よくインドネシアやフィリピン、タイに出張していました。おそらく幼稚園児くらいの時から父は私に「日本は小さいぞ」と言い続けていたのだと思います。おかげで実家のある藤沢を少しでも離れると、「ここはまだ日本?」と聞く子どもでした。

物心がつく頃には「いつか自分も東南アジアに意識を向けなければならない」と自然に思っていました。当時の日本人は、東南アジアより日本が優位だという感覚を根強く持っていました。それは今後の日本人にとって良くないと思えたのです。

高校時代はデンマークの姉妹校に留学し、全寮制の1年間を経験します。大学は法学部に進みましたが、法律はまったく自分には向かないと気づき、大学1年の途中で留学しました。アメリカは怖そう、イギリスは寒そうだしと消去法で選んだのが、オーストラリアでした。ブリスベンに留学してインターナショナルビジネスを専攻しました。オーストラリアにいると東南アジアはとても近く、やはり意識を向けなければと思いました。

オーストラリアで卒業して日本に戻ると、皆が就職活動を終えていました。私はどの時期に皆が就職を決めるのか知らず、海外の大学を出て日本に帰れば、なかなか良い評価をもらえると思っていました。仕方なく就職浪人になり、実家に戻って1年間は藤沢のローソンでレジ打ちをしました。後から振り返ると、自分のことを考えることができたし、接客を学ぶという意味でも貴重な時間だったと思います。

翌年24歳の時に、ベトナム日系法人を対象とした投資コンサルティング会社に就職しました。面接の時から、アジアに行きたいと主張していたことが受け入れられ、ベトナムのホーチミンに行くことが決まったのです。念願のアジアで楽しく過ごしていたのですが、1年経つと会社の方針で東京に戻され、途端につまらなくなって退職してしまいました。

将来を考えたら営業の経験が必要だと思っていると、友人がCS放送関係のスポンサー営業の仕事を紹介してくれました。

この頃の私は、日本人が東南アジアに意識を向けるようになるには、映像を流したらいいのではないかと思っていました。ビデオジャーナリストになるという道もあります。そこで「アジアの番組を作りませんか?」と言ってみたのですが、もともと番組制作ではなく広告の会社なので聞き入れられませんでした。

半年ほどでこの会社を辞めると、バックパックを背負って東南アジアに向かいました。現地で就職活動をすることにしたのです。まずシンガポールで大手人材紹介の会社に登録し、いくつかの会社の採用試験を受けてみました。

結果を待ちながらマレーシアに行ってみると、求人がほとんどありません。ここまで来たからとタイに足を延ばしたところで、とある日本人の社長さんに拾ってもらえました。撮影コーディネート、つまり映画やCMなどのロケ場所や機材を確保したりする会社です。シンガポールで受けた結果が全滅だと分かったので、この会社に1年ほど勤めて、アジアで仕事をする経験を積んでから、自分で会社を作って独立しました。

学生たちがメディアになる

1999年に入ってすぐに準備を始め、3月には会社を立ち上げました。日本人向けのタイ留学を流行らせようと考えたのです。そういう時代を作りたい。日本人が実際にこちらに来て留学すれば、きっと東南アジアに対する価値観が変わるはずです。

前職のタイ人の同僚がパートナーとなってくれたので、会社の登記などではあまり苦労しないで済みました。家賃8000バーツ(約2万5千円)の自宅兼オフィスからスタートしました。最初から資金はほとんどありません。そこでホームページを作って「タイに留学しませんか?」と情報を流すようにしました。

それだけでは収入にならないので、英語・日本語翻訳の仕事を始めました。たまたま大手ホテルの予約サイトの日本語版を作らせてもらうことになり、資金面では助かりました。

タイ留学の斡旋を始めて1年ばかり経つと、ホームステイ先となったタイの家庭から自分の家の子どもを日本に行かせたいという要望がたくさん寄せられました。

そこで、2001年にはタイ人の日本留学も手がけるようになります。日本に行くにはコストもかかるので、本当に行く人がいるのだろうかと思ったのですが、最初から20名ほどの学生を送り出すことができました。そして「彼や彼女たちがメディアになってくれるな」と思ったのです。映像を流したりしなくても、タイ人が日本で過ごすことで日本人と東南アジアが互いに身近になればいいと思いました。

その3年後には、日本語学校を作りさらに留学を支援する体制が整ってきました。日本留学がメインとなり、タイ留学は一旦ストップしました。

さらに2007年、人材紹介会社を設立。これは日本からタイに帰国した人たちが、日本語を生かした働き口を見つけるための会社です。その後も留学生の数は右肩上がりで増えていきました。東日本大震災が起きて一旦ストップしましたが、2013年には留学生の数が年間290人程度となりました。タイから日本へ留学する学生たちのうち半数近くが当社から送り出されています。

この10数年で、タイの人々の生活レベルはぐんと上昇しました。日本留学する生徒さんたちのほとんどが、日本にある外国人向け語学学校に入ります。年間費用は生活費を入れて200万円程度。結構な金額ですが、今の経済では中間層の家庭でも無理なく子どもたちを日本留学させられるのです。

この経済の勢いを考えるともっと日本へ留学生が行ってもいいのではないか?もっと日本の魅力を伝える必要があるのではないか?そう考えて2001年から始めたのが留学フェアです。これは毎年拡大してバンコク日本人商工会議所と共に開催する「日本留学&日系企業就職フェア」となり2日間で2万人が訪れています。

2015年2月にはこれをさらに大きくした、JAPAN EXPO IN THAILAND 2015を開催しました。日本のアニメ、マンガ、テレビ、ラジオなどのコンテンツをはじめ、トラベル、食、物産、エンターテイメントなど日本の魅力を一堂に集め、3日間でのべ7万5000人が来場し、改めてタイの人たちに日本を知っていただく大変よい機会になりました。ここにはもちろん留学フェアと在タイ日系企業就職フェアも同一会場に設けました。

一昔前、メイドインジャパンはタイ国内のあらゆるところで存在感を発揮していました。日本食と日本への旅行は相変わらず人気です。しかし今は家電でも化粧品でも韓国製が主流で、日本製品はなりを潜めています。以前に比べると、日常生活の中で日本はもはや目立たない存在です。

でもポテンシャルはある。実際にJAPAN EXPOでの大勢の来場者数がそれを証明してくれました。

当社はイベント業は素人ですが、日本への留学生を増やしたい、そして日系企業に就職してもらいたいという一心で進めています。この事業のために、2013年には初めての日本ブランチも作りました。そして私自身も日本のさまざまな業種の人たちに営業をするために、日本とタイを行き来しています。

私たちの事業は既存のマーケットがあったからそこに入っていったわけではなく、ビジネスチャンスを見い出してきたわけでもありません。ただ日本人に東南アジアへ意識を向けてほしい、という思いから、タイ留学や日本留学という新しいビジネスを打ち出してきました。マーケットがないからこそ、自分たちで生み出してきたのです。

ですから私自身、お金儲けとかビジネスチャンスという観点ではお話ができません。ただ海外に出ると社会の役に立つ仕事がごろごろしているということははっきり言い切れます。日本にいるよりも遥かに簡単に、世のため人のためになるミッションを見つけられるのが、海外へ出る楽しさだとも思います。

日本でも地域密着型で役立つ人になることはできるでしょう。でもタイにいると途端に規模が大きくなり、日泰関係に直接貢献することすらできます。

若い人がこれから海外に出るのなら、自分がそこにいなければできないような必然性がある仕事をしてほしい。その気になって探せば見つけられるはずです。

海外に出る時に一番大変なのは、日本を出る勇気を持つことです。既存の環境を捨てて外に出るのというのは大変だし、怖いものです。タイで暮らすよりも何倍、何十倍も大きな勇気が必要だと思います。でも一旦来てしまえば、タイには何でも揃っているし、それほど苦労しないはずです。私などは本当に楽だと思っています。

ただし、何にしても日本に基準を持っている人には海外を勧めません。いちいち日本と比べていたらきりがない。そういうものだと受け入れられる度量を持ってほしい。たくさんの日本人が東南アジアに来て、社会に役立ってくれることを祈っています。

インタビュアーの目線

高架鉄道を降りると駅の至る所にポスターを見かけるJAPAN EXPO。長谷川さんはその実質的主催者であり、バンコクでは知られた存在でありながら、終始控えめで腰の低さに驚かされます。タイ駐在だったお父様の影響と、自分にできる社会貢献を探し求めながら、現在までの紆余曲折が、温かな人間性と腰の強い胆力の両方を育んだのですね。

書籍「世界を動かすアブローダーズ ~ 日本を飛び出し、海外で活躍するビジネスパーソンたち 」から掲載】


Profile

1971年生まれ。
1997年に渡タイ。1999年にライトハウスインフォサービス株式会社をバンコクに設立し、日本人向け「タイ留学サポート」、タイ人向け「日本留学サポート」を開始。2004年に日本語学校、2006年に人材紹介会社(ジェイキャリアリクルートメントサービス株式会社)を設立し、同社を通じて留学経験をした学生や日本語学校の学生を日系企業に紹介する、人材紹介業を運営している。

Contact

JEDUCATION

2301 Liberty Sqaure 287 Silom Rd. Bangrak Thailand
http://www.jeducation.com/

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