独自の道を開拓してきた
代走のスペシャリスト。
経験を語り、目指すは
「人にきっかけを与える人」

鈴木尚広 Takahiro Suzuki

元読売巨人軍/現スポーツコメンテーター

自分の新たな道を
自らの足で切り拓く

プロとしての経験を伝え、
現役時代よりも
ファンを増やす

 目次

自身の野球経験を語り伝え、現役時代以上にファンを増やす

「ファーストランナー、鈴木尚広。背番号12」

この男の名がコールされた瞬間、スタジアムに歓声が響き渡り、全員の視線が一塁ベースに集中する。視線の先にいるのは、読売ジャイアンツ一筋20年、「代走のスペシャリスト」と呼ばれた鈴木尚広だ。在籍20年間で228の盗塁を記録。代走時の盗塁数132、通算盗塁成功率.829はいずれも日本記録である。

鈴木は、プロ野球界において異彩を放っていた。エースピッチャーや4番打者ではなく、代走というポジションで一躍有名になった選手だ。試合の途中に出場し、1試合にたった1回のチャンスを確実にものにする。それも、「鈴木は絶対に走ってくる」という厳戒態勢の中でも、初球で盗塁を決めることがほとんどだった。その役割に対して誰よりもプライドを持ち、入念な準備を重ねて結果を残し続ける姿はまさに「職人」のようだ。

2016年に現役を引退し、現在はテレビ中継の解説や、各地での講演活動を行っている。伝統あるジャイアンツで生き残る術、目の前のチャンスのつかみ方など、現役の20年間で学んだことを伝えており、その対象は野球少年から企業の新入社員、管理職などさまざまだ。プロとしての経験、読売ジャイアンツの選手としての経験を余すことなく伝えることで、講演を聞く人々は自分の生活に置き換え、仕事や人生へのモチベーションアップにつなげている。また、テレビには映ることのない野球の奥深さも伝えており、鈴木の話が聞く人の情熱を再燃させることもある。

「とある会社の新入社員向けに講演をしたとき、野球をやめた人と出会いました。講演後に『やっぱり夢をあきらめたくない』と思ってくれて、また野球を始めたそうです。心の中に眠っていた想いがよみがえって、また新たな一歩を踏み出してくれたことが本当にうれしかったです。こうして、僕がジャイアンツの20年間で経験したことを伝えていくことで、『人にきっかけを与えられる人』になりたいです」

鈴木が人生においてもっとも大切にしているのは、「一歩目のスタートを切ること」。つまり、自分から動くことである。20年の間にはさまざまな葛藤が生まれ、自分からチャレンジすることで新しい自分と出会い、そして「代走のスペシャリスト」という唯一無二の場所にたどり着いた。一歩踏み出すことで目の前の景色が変わり、自分のさらなる可能性に気付くということを体現し続けているのだ。

「今いる場所に立ち止まっていても、景色は何も変わらない。自分で決断し、自分で一歩を踏み出すことで世界観が変わっていくことを野球から学びました。引退した今でも自分から動いて、新しいことに常に挑戦し続けています。今の僕の目標は、現役時代よりも評価されるようになって、現役時代よりもファンを増やすことです」

Profile

1978年、福島県相馬市生まれ。福島県立相馬高等学校卒業。1997年、ドラフト4位で読売ジャイアンツに入団。2008年、ゴールデングラブ賞と日本シリーズ優秀選手賞受賞、「神の足」「代走のスペシャリスト」の異名をとり、代走時の盗塁数132はNPB記録。通算盗塁数228は、球団史上3位。通算1130試合、打率.265、本塁打10、打点75.現在は解説者としてテレビ中継などで活躍中。