楽しみながら
心と身体が磨かれる
「ファイトネス」の底力

大山 峻護Syungo Oyama

元・総合格闘家/Fightness代表

アスリート特有の「思い込み力」で邁進した現役時代

大山が格闘技の道に入ったのは、幼い頃からの憧れだったウルトラマンやジャッキー・チェンのようになりたいと思ったからだった。5歳から柔道を習い、「平成の三四郎」と呼ばれたオリンピック金メダリスト・古賀稔彦を目指して全寮制の講道学舎に入門。

20001月には「PRIDE GP決勝大会」で桜庭和志がグレイシー一族最強と言われたホイス・グレイシーと戦った試合を観戦し、桜庭選手という新たな憧れの対象を得て総合格闘家の道へ進むことになる。

「実際のところ、僕と桜庭さんの間には、センスや才能、実績など、どれをとっても大きな隔たりがあるはずなんですが、『自分には無理』と尻込みするのではなく、『目標に近づくためには何が必要か』と考えていました。ある種の思い込み、妄想に近いことかもしれませんが、そのときの僕には、雲の上の高みに向かって、ひたすら突き進んでいくことしか頭にありませんでした」

大山は、そうしたアスリート特有のメンタリティを「思い込み力」と呼ぶ。その力は20012月、野外の金網の中で行われたアメリカの『King of the Cage』でのデビュー戦で早くも発揮された。開始17秒、カウンターの右フックで相手をKOした試合運びは、試合前に思い描いたイメージ通りのものだったという。

もちろん、すべての試合がイメージ通りだったわけではない。PRIDEデビュー後は2つの試合で敗退し、苦いスタートを切ることに。それだけでなく、右目の網膜剥離という、格闘家として致命的なケガを負って長期欠場を強いられることになってしまったのだ。

手術を終え、身体を動かせるようになるまで半年、PRIDEのリングに戻るには約1年かかった。この復帰戦での対戦相手は、グレイシー一族のヘンゾ・グレイシーだった。

「苦しいときの僕を支えてくれた仲間やファンの方たちのために、どうしても勝ちたかった。ところがこの『勝たなければ』という気持ちが上すべりして、自分らしい試合ができなかった。どうにか判定勝ちしたものの、僕の消極的な姿勢にブーイングが飛び、試合後も多くの批判を浴びることになってしまったんです」

このときの辛い経験から、大山はどんな試合でも相手に真っ向から勝負するプレイスタイルを追い求めることになる。

PRIDEからK-1 HERO’Sに活動の場を移して、1年目の2005年春のこと。メンタルトレーナーの山家正尚氏から「過去の実績に関係なく、達成したら一番ワクワクすることは何ですか?」と聞かれた。そのとき、大山の頭に浮かんだのは「年末に行われる大会でピーター・アーツと試合をして勝ちたい」。そう告げると、山家氏は「わかりました。そのために一緒に頑張りましょう」とうなずいた。それからは、そのビジョンが常に頭に浮かぶようになり、絶えずワクワクしていた。

根拠があったわけではない。それどころか、自分よりも格上のピーター・アーツと戦える可能性は、限りなく低かった。だが、毎朝のランニングで彼との試合のことをイメージすると、身体中に力がみなぎっていくのを感じた。

試合の1カ月前に発表されたピーター・アーツの対戦相手に大山の名前はなかったが、それでワクワク感がなくなることはなく、そのまま沖縄で合宿して試合のためのコンディション作りに励んだ。

「マッチメーカーから電話がかかってきたのは、試合の9日前のことでした。『ピーター・アーツの対戦相手が試合に出られなくなった。大山くん、代わりに出場してくれないか』と言われ、春から7カ月もの間、一心に描き続けてきたイメージを形にするときがついにやってきたと知りました。そして、その試合で足関節技を決め、観戦席からの大声援を受けてセコンドの仲間と抱き合うところまで、すべてがイメージ通りに運んだのです」

Profile

1974年、栃木県生まれ。幼少より柔道を学ぶ一方で、全日本サンボ選手権を4度制すなど、柔道をベースにした確かなグラウンドテクニックには定評がある。

00年に行われた、桜庭和志. VS. ホイス・グレイシーの試合に感銘を受けた。その後に出場したアブダビコンバットを契機にプロに転身。第7KOTCでは、自身より30キロ以上重いマイク・ボークを右ストレート一撃、僅か17秒で倒し、プロデビューを飾る。

PRIDE初参戦となった『PRIDE.14』ではヴァンダレイ・シウバと対戦し敗退。さらにその後、網膜剥離で長期の欠場を余儀無くされる。

復帰戦となった『PRIDE.21』では強敵ヘンゾ・グレイシーを判定で破る殊勲を演じ、PRIDE初勝利を挙げる。 その後もハイアン・グレイシー、ダン・へンダーソン、ミルコ・クロコップら強豪と対戦を重ねる。

053月に『HERO’S』に初参戦。ヴァレンタイン・オーフレイムを相手にアンクルホールドで一本勝ちを果たすと、その後、カク・ユンソブ、ピーター・アーツ、ホドリゴ・グレイシ、カーロス・ニュートンといった強豪からも勝利を収める。

07年には美輪明宏主演『双頭の鷲』で役者としてデビュー。

2014年引退後、ファイトネスを設立。現在は指導者として活躍している。

Contact

http://shungooyama.spo-sta.com/