二兎を追って
二兎を得られる
世の中を創る

株式会社HARES

西村 創一朗Soichiro Nishimura

CEO /複業研究家

19歳で「大学生パパ」に。「男性の育児」の啓蒙に取り組む

「社会を動かす」という志を持つ西村だが、中学時代まではすさんだ時期もあったという。小学生のときに両親が離婚。母は西村と2人の妹を育てるために働いたが、過労で身体を壊し、生活保護を受給するまでに困窮した。心のよりどころだったサッカーは自らのケガで断念。学校に行く意味を感じられなくなり、ゲームセンターに通う生活が続いた。

中学3年生の冬のことだ。担任教師から進路の希望を聞かれ「考えてない」と投げやりに答えた西村に、先生は「俺が公民の授業で教えた言葉を覚えているか?」と言った。

「それは、『国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えよう』という、ジョン・F・ケネディの言葉でした。家庭の事情のせいにして将来をあきらめようとしていた自分に気付かされた。それを機に『家族や社会に恩返しをするため、何ができるか』と考えるようになったんです」

社会貢献を志して大学へ進学。ところが1年次に大きな転機が訪れた。高校時代から付き合ってきた彼女が妊娠したのだ。周囲から「バカップル」と言われるほど仲が良く、結婚を決めていた2人にとって、素直にうれしい出来事。産む以外の選択肢はなかった。

2人で産婦人科を訪れた帰り、駅前のロッテリアで今後のことを相談した。店内に置いてあった『タウンワーク正社員版』を手に取り、大学を中退して働く覚悟を決めた。

しかし彼女の父から大学を卒業するよう諭される。結婚・出産後は妻の実家に同居し、学業を続けながら子育てとアルバイトに明け暮れた。しかし、一生懸命働いても学生アルバイトの稼ぎはたかが知れており、妻子を満足に養えないことにもどかしさを感じた。

「『これは自分が描いていた父親像じゃない!』と自分を責めていました。そんなとき、NPO法人ファザーリング・ジャパンの代表・安藤哲也さんのインタビュー記事を読んだんです。『良い父親ではなく、笑っている父親を目指そう』という言葉に、雷が落ちたような衝撃を受けました」

ファザーリング・ジャパンとは、父親の育児・家事・夫婦関係・子育て・働き方を支援する組織。活動に参加した西村は最年少で理事となり、現在も活動を続ける。

一方、大学卒業後はリクルートキャリアに入社。営業としてトップの業績を挙げた。しかし、社内でできることに限界を感じ、入社3年目に副業としてブログを開始。2015年、会社員という身分のままHARESを立ち上げた。2016年に会社を辞めるまで、まさに自身が「複業」を実践してきたのだ。

「ピーター・ドラッカーは『パラレルキャリア』を提唱しましたが、僕は『スパイラルキャリア』が理想だと考えています。本業と並行して交わらないのではなく、本業と副業が絡み合うことで相乗効果を発揮するほうが、個人のキャリアにとっても組織にとってもいい。僕自身、会社に勤務しつつブログメディアを通じた活動を行ったことで、人脈と知見が広がり、社内で新規事業企画に挑戦するチャンスもつかめました。『複業』のスパイラル効果で、やりたかったことに近づけた実感があります」

現在3児の父となった西村は、会社を辞めて独立したことを「育休的起業」と称する。労働時間は週30時間と決め、16時には帰途につく。子どもたちと遊び、一緒にご飯を食べ、お風呂に入る。週末は子どもたちが所属するサッカーチームのコーチを務める。あと5年は、家族との時間を何より大切にすると決めている。

「ちゃんと成果さえ上げていれば、働く時間やスタイルは個人の自由。可処分時間を増やし、家族や学びや複業に時間を投資できる。そんな世の中を創っていきたいですね」

インタビュアーの目線

独立起業後は順風満帆ながらも、将来への漠然とした不安や人付き合いの難しさで精神を消耗し、「死んで楽になりたい」と思うまでに追い詰められたという西村さん。セルフマネジメントの考え方を変えることで危機を乗り越え、今のスケジュールには「楽しみな予定しかない」のだとか。起業・複業の「負」の部分を痛感し、克服した経験を持つ西村さんだからこそ、自分の生き方を探る人々にとって説得力のある指針になるに違いありません。

インタビュー・編集/青木典子

撮影/田中振一

Profile

1988年生まれ。当時19歳の頃に長男が誕生し、学生パパとなる。その後、2009年よりNPO法人ファザーリング・ジャパンに参画し、現在は最年少理事を務める。

大学卒業後、2011年に新卒でリクルートキャリアに入社。MVP受賞歴多数。本業の傍ら2015年に株式会社HARESを創業し、仕事、子育て、社外活動などパラレルキャリアの実践者として活動を続けた後、第三子となる長女の誕生を機に「通勤をなくす」ことを決め、2017年1月に独立。独立後は「週休3日」で家族と過ごす時間を倍増させながら、複業研究家として、働き方改革の専門家として個人・企業・政府向けにコンサルティングを行う。講演・セミナー実績多数。2017年9月より「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(経済産業省)の委員を務める。

Contact

株式会社HARES

http://hares.jp/