社会性の高いビジネスは、世界でも受け入れられる

株式会社CLOCK・ON 代表取締役 東 俊輔

東 俊輔Shunsuke Higashi

株式会社CLOCK・ON

代表取締役

2015.04.24

シンプルで、誰も思いつかなかったビジネス

私たちCLOCK・ON(クロックオン)は、メディア開発・運営を行う会社です。メディアコミュニケーションを主力業務と位置づけながら、グループ内には、大分県中津市の「中津のからあげ」の専門店を東京で運営するユニークな会社も擁し、中でも学生向けのターゲティングメディア「0円ノート(応援ノート)」は、国内はもとより、最近では海外でも展開を図っている事業です。

創業時から手がけていた応援ノート事業とは、各ページに広告枠を設けたノートを生徒や学生に無料配布するというものです。配布先は各学校なのですが、中学校や高校では、教室で子どもたちに先生から手渡しをお願いし、大学では、学生課や就職課など学生が立ち寄る場所に専用ラックを設置して、自由に持ち帰れるようにしています。

広告主となる企業側のメリットは、保育園や幼稚園、小学校、中学校、高校、大学というように、配布先を指定することができるので、ターゲットとなる年齢層へピンポイントでリーチできることにあります。また、ノートはいつも手元にあるものであり、開くたびに、何度となく広告が目に入るので、訴求したい内容が確実に刷り込まれる効果も期待できます。

このように、ごくシンプルでありながら、子どもたちの教育現場にも受け入れられる社会性を備えた応援ノートは、「目の付けどころが良い」とも称される事業モデルです。配布先の学校さえしっかりと確保できれば、営業マンなどの人手もそれほど必要としないので、実は収益性にも優れています。現在では、運営主体がグループ内の別会社へ移りましたが、スタートアップ期の事業としては最適でした。

しかしその一方で、日本国内の配布先の学校は限られているうえ、配布できるノートの冊数にも限度があるなど、元々がニッチなマーケットなので、頭打ちになるときが確実に来ます。国内が一段落したら、次は海外に目を向ける必要があることは、早い段階から意識していました。

シンガポールに現地法人を設立したのは2012年4月のこと。翌年1月から営業を始め、現地で応援ノートの配布を始めたのは同年8月からです。

初の海外進出先をシンガポールにしたのは、グローバル企業が数多く進出しているからです。東南アジアで事業を展開している企業の多くが、アジア地域のヘッドクォーターをシンガポールに置いていることから、私たちもシンガポールにオフィスを設けたほうが、営業政策上、メリットが大きいと判断したのです。もちろん以降は、シンガポールを拠点にしながら、近隣の国々へ展開する考えでした。

東南アジアは広告ビジネスのフロンティア

アジアでビジネスを始めて実感するのは、「日本とは勝手が違うことで苦労が多いぶん、新鮮な喜びを味わえる」ということです。

シンガポールでは、応援ノートの運営を担うグループ会社「C―GRAT」代表の前田が陣頭指揮を執っているのですが、事業開始当初は、私自身も現地に滞在し、「和僑会」という日本人起業家の組織などにも積極的に参加して、現地のネットワーク作りから始めました。

また、日本国内では既に応援ノートをご採用いただいている企業でも、海外となれば現地法人や支店に決裁権があるケースがあるため、自分たちに代わって広告営業をしてくれる広告代理店も探さなければなりません。結局、企業への営業活動も、広告代理店探しも、ほとんどゼロからのスタートとならざるを得ませんでした。

応援ノートの発行が決まってからも、苦労は絶えません。例えば、ノート製作は現地の印刷会社に頼んだのですが、出来上がってきた印刷物を確認すると、滲んだインクでノートの紙が汚れているんです。印刷会社側で、インクが十分に乾かないまま梱包したのが原因でした。急いで刷り直しをお願いすると、「ちゃんと刷り上がっているのに、どこが問題なのか?」というような応対です。もしかしたら、シンガポールでは許容されるレベルだったのかもしれません。けれども、クライアントは日系企業。とても納得してもらえるクオリティーではありません。

幸い、その印刷会社には日本人スタッフも在籍していたので、何とか事なきを得たのですが、日本では当たり前のことが、海外で通用しないことを痛感しました。もちろん、このことがあってからは、発注前に注意事項をこちら側から提示して、確認を取るようにしています。

日本人と現地の人たちとの時間感覚の違いにも、最初は戸惑いました。大学のキャンパスで学生たちに応援ノートを配布するために採用したアルバイトたちが、集合時間になってもなかなか集まらないうえ、まったく悪びれることなく、大幅に遅刻してくるのです。仕方なく、私一人で配布する羽目になったこともあります(笑)。それからは、午前と午後で別の人員を充てるシフトにすることで、遅刻者が出ても支障が最小限になるよう、リスクヘッジをすることにしました。

苦労が多い反面、日本では得られない手応えを感じられることもあります。シンガポールの学生は、街頭で無料のサンプル商品をもらうことに慣れていないので、ノートを渡すとみんなすごく喜んでくれるんです。中には、一度受け取ったノートを「申し訳ないから、やっぱりもらうわけにはいかない」と言って、わざわざ返しに来る学生も……。街頭でモノをもらい慣れている日本では考えられない反応に、白地マーケットとしての期待も膨らみます。

そう考えると、東南アジアは、私たちが手がけるような広告ビジネスに関する開拓の余地が、非常に大きい、いわばフロンティアといえるのではないでしょうか。私たちも、既にシンガポールに続き、マレーシアやインドネシアでも事業を開始し、今後は一気にベトナムやタイ、フィリピンにも広げていきたいと考えています。


Profile

1982年東京都生まれ。
2006年に某人材系ベンチャー企業に入社。2年間勤めたのち、2008年4月に株式会社CLOCK・ONを設立。創業からの事業として幼稚園、保育園から小中高、大学まですべての教育機関をネットワークし、広告入りのノートを無料で配布する広告事業「0円ノート(応援ノート)」がある。2014年現在海外展開の足がかりとしてシンガポールにも拠点を置き、東南アジアでの事業展開に取り組んでいる。ほかに国内ではインターネット広告の「Target On」を運営するネット広告事業、唐揚げ専門店「鳥丸」を営む飲食事業を展開している。

Contact

株式会社CLOCK・ON

〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿1-19-15 ウノサワ東急ビル4F
TEL : 03-6684-5717
URL : http://www.clock-on.co.jp/

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