仕事は自己表現の場であり、修行の場でもある

株式会社ホスピタリティー&パートナーズ 代表取締役社長 浜井 尚子

根来 尚子Shoko Negoro

株式会社ホスピタリティー&パートナーズ

代表取締役社長


愛をもって、お客様の想像を超えるサービスを提供する

2006年に「麻布ペット」を開業し、現在はペットサービス企業として、ペットシッター、ペットホテル、トリミング、ペット介護、ペットタクシーといった事業を展開しています。

特にご好評をいただいているのは、お客様のご自宅にお伺いして、大切な家族の一員である愛犬・愛猫のお世話をするペットシッターです。特徴は、細やかな対応と、それに付随するセキュリティの高さ。カメラを完備してリアルタイムでお世話の様子を把握できるようにしているほか、出入りしてほしくない部屋のドアには特殊なシールを貼っていただくことによって入室したか否かがわかるようにし、シッターの入退出もGPSで管理しています。

クラウドで管理した電子カルテをお客様と共有する取り組みもいち早く行ってきました。常に他社に先んじたサービスを提供しているところが強みであり、お客様に選ばれている理由でしょう。

ペットホテルにしても、一般的には受け入れない老犬やリスクのある犬も受け入れるという点で他社とは一線を画しています。問題行動のある犬でも、どのようにすればお預かりできるかをお客様と一緒に対処方法を考える。どんな難しい要望にも、絶対に「NO」とは言わず、どうすれば可能にできるかをお客様に寄り添い考える。ケガや、命にかかわる病気の動物は預からないというのが業界のスタンダードだと思いますが、私たちは事前に「万が一の場合はどうするか」という点までお話をして、合意を得た上でお預かりしています。

企業としては、リスクは回避したいところですが、それではお客様に必要とされる存在にはなれません。私たちの仕事は、お客様あってこそ。お客様に心から満足していただくためには、要望を100パーセント満たすだけでなく、いつも101パーセントを目指して、想像を超えるサービスを提供していく必要があるのです。ペットが病気をしているけれども、仕事にも行かなければならない、とお困りのお客様がいたら、どんな困難があろうとお客様に尽くす。それがサービス業を行う私たちのあるべき姿です。言うなれば、ザ・リッツ・カールトンのように、お客様に満足を超える「感動」をお届けすることが使命だと考えています。

こうした信念の土台になっているのは、「麻布ペット」創業の理由でもある「困っている人の役に立ちたい」という思いです。そもそものきっかけは、私の愛犬、ミニチュアピンシャーのチョコをペットホテルに預けたところ、ストレスで自分の足を噛み続け、包帯を巻いて帰ってきたことでした。私が出かけるためにチョコを預ければ、また同じことを繰り返してしまうかもしれない。外出することに罪悪感を覚え、大切な家族のためなら…と、自分のすべてを犠牲にしてでもお世話をしてしまう自分がいました。

そんなある日、ある方の勧めで「ペットシッター」を依頼してみたところ、自宅での留守番にはまったくストレスを感じなかったチョコは、元気に私の帰りを待っていてくれました。このとき、環境の変化が動物にもたらす影響の大きさを知り、同時にペットと飼い主双方を幸せにするペットシッターというサービスの素晴らしさにも気づいたのです。

自分のように、愛犬や愛猫を大切に思うからこそ自分を責め、我慢をしている人がきっといるはず。誰かの犠牲のもとに成り立つ幸せがあって良いはずがない。同じような葛藤を抱えている人の役に立てる仕事がしたい。犬も、猫も、人も、皆が幸せになれる毎日を創りたい。そう考えて、2006年に「麻布ペット」を創業しました。

ひとりの母になって、より自然体で仕事に取り組めるようになった

起業家を志したのは、高校生の頃です。大学進学後もその意思に変わりはなく、卒業したらすぐに自分の会社を興そうと考えていたんです。在学中は、1990年代という時代背景もあって、学生イベントが隆盛をきわめていました。私も多くのイベントを主催し、当時大人気だったクラブで催すパーティーはいつも大盛況でした。

そして時代はポケベルから携帯電話へ。自然な流れで携帯電話の販売も行うようになったのですが、ノルマを果たせば1台あたりの報酬がもらえます。当時は機種代金が無料だったので、時代の追い風もあって、それは面白いように契約が取れたものです。「お金を稼ぐのって簡単」と、完全に調子にのっていましたね(笑)。勢いに乗って、そのまま起業するつもりだったのですが、いち早く起業していた先輩から「新卒で就職した会社の名前は、一生聞かれる。一度は就職したほうがいい」と強く勧められ、外資系のコンサルティング会社に就職。1年で辞めると宣言しての入社でした。

入社後はSEとしてシステム関連の知識を蓄え、宣言通りに退職して、まずは中小企業向けのコンサルティングを開始します。その頃、羽振りのよかった運送屋さんや魚屋さんなどは、請求書は手書きでファックス、仕入れは手計算、という会社ばかりでした。そういう先に営業をかけ、コンサルティング会社の同期に外注で仕事を振るという、持ち前の
コミュニケーション能力を生かした形での起業でした。美容系のポータルサイト運営をスタートさせたのも、その頃です。

順風満帆に思えた起業も、すぐに「大学のころのようにうまくはいかない」ということに気づきます。社員に給与が発生することも、事務所を借りるのに予想以上のお金がかかることもまったく計算に入れずに、「私はお金を稼ぐのがうまい」と勘違いしたまま走り出してしまったのですから、今から考えれば当然です。

お金はどんどんなくなり、ポータルサイトも売却せざるを得ませんでした。人を雇うのは大変だと、ようやく気付いたのがこのころです。「女だからという偏見や中傷には負けたくない」と肩に思いっきり力が入ったまま、無理やり自分を鼓舞して働いていたことも、歯車を狂わせた一因だったかもしれませんね。

結局、ポータルサイトだけでなく会社も手放して、しばらくは仕事から離れた生活を送っていたのですが、時間が経つにつれ、また何かをやりたいって思いが強くなってきて…。そんな紆余曲折の末、ようやく“経営者”という自覚を持って再スタートを切ったのが、今の会社です。

ただし結局のところ、人生で一番の転機は出産だったと断言できます。それまでは、頑張れば頑張るほど、周りからは「女を武器にしている」という目で見られている気がしてならなかったのですが、子どもを産んでから、やっと「女社長」という偏った先入観から解放されました。女であり社長である前に、ひとりの母であるという事実によって、より自然体で生きられるようになったのかもしれませんね。

株式会社ホスピタリティー&パートナーズ 代表取締役社長 浜井 尚子

Profile

1976年、京都府生まれ。1999年、関西学院大学卒業後、外資系大手コンサルティングファームである現・プライスウォーターハウスクーパース株式会社へ入社。2000年、23歳の時にシステム開発で起業。2006年に株式会社ホスピタリティー&パートナーズを創業し、代表取締役社長就任。以後、森ビル・三井不動産などの大手デベロッパーとの提携等により拡大させたペットシッター事業は、都内最大級の規模を誇る。現在では息子を持つ母として妻として、女性であることを楽しみながら、しなやかな経営に取り組んでいる。

Contact

株式会社ホスピタリティー&パートナーズ

東京都渋谷区代々木5-57-8 パークサイド参宮橋1F
http://azabupet.jp/

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