会社の文化を変えずまったく新しいことをする

豫洲短板産業株式会社

森 晋吾Shingo Mori

代表取締役

まずは「アジアの豫洲」と呼ばれるように

海外でも日本でもさまざまな人との出会いと応援があって、一歩ずつ進んできました。そして今は主に現地で活躍する社員たちの働きによって、前進しています。

現地に行っている社員の多くが若手です。大阪にいればそもそも市場があり、上司もいる。その守られた環境を出て、それぞれ苦労してもらっています。もちろん大阪で仕事をしていても苦労はありますが、外に出るともっと違う苦労がある。だからこそ彼らから前向きな言葉を聞けると、私としては本当に嬉しく思います。

中国市場でのチタン加工事業がうまくいくようになったのは、現在は大阪の海外事業部で営業をしている張彤さんが活躍してくれたからです。中国で仕事をしたいと言い出した頃に、まだ大学院にいた彼を紹介されて通訳を頼みました。日系企業に勤めてから日本の大学・大学院を出た彼は私と同じ歳。お互い30代半ばからの付き合いです。

彼が上海の拠点を支え、ローカルの大企業から材料を仕入れるルートを作るという難しいことにも力を貸してくれました。

外国人がローカル市場で仕入先を見つけようとしても、まずどこと交渉をすべきか分かりません。仮に相手を見つけても、価格交渉をするにはそれなりに人脈や実績がないと交渉のテーブルにもつけないのです。

人間関係を作るために、たくさん会食しました。食事をして酒を飲む席で人間を見るというのは、どこの国でも同じでしょう。それでも一番大事なのは紹介者ですから、とにかく人との繫がりをたくさん作っていくということが必要でした。メーカーでもなく、流通業にしても当社の企業規模の会社が進出したいというのは珍しいこともあってか、どこに行っても応援してくれる人たちが出てきました。それはありがたいことだと思います。

最初に上海の社長になっていただいたのは福田覚さんです。大手メーカー商社のOBで、中国でお会いした時は現地法人の社長でしたが「もう引退して帰る。老後のために家や畑も買ったからこれからはのんびり過ごす」という話でした。その後、私はその老後の家に押しかけ「上海に会社を作ったので、社長になってください!」とお願いしたのです。視察を始めてからのお付き合いで、経緯をご存知だったこともあり、再び中国に戻ることを引き受けてくださいました。

バンコクの会社は2013年2月に設立しましたが、法人化までは意外にスムーズでした。現地で長く会社経営をしている日本人と組むことができて、いろいろと教えていただけたのです。

社長となった北原一さんは、大阪で当社の商品の一次加工をしている協力会社の社長でしたが、「俺がやる」とおっしゃってくださいました。すでに53歳ですが「最後のチャレンジだ!」と。彼の技術と私たちの材料のノウハウで、これから勝負をかけていきます。

ホーチミンはまだ工場ができたばかりです。ASEANのどこかに加工と在庫の両方まかなえる大きな拠点が欲しいと考えていて、一番大きな規模の工場を作りました。中国では特に隙間を探して入り込むようにビジネスをしてきましたが、ベトナムについては同業者がほとんどいないため、むしろ「早く来てほしい」と言われていました。

タイやマレーシア、インドネシア、シンガポールはすでに成長市場ですが、ベトナムやミャンマーはまだまだこれからの市場ですし、ラオスやカンボジアはさらに遅れています。こうした国々でも、これから先行者利益を得るべく進出していく予定です。

今、国内の売上は120億円です。2023年までには海外のプラント事業や材料の流通を中心にグループの売上を現在の10倍、1000億円にしたい。そして次の10年には鋼材流通だけで1000億円の売上にしたいと考えています。人口やGDPから計算しても、十分に可能性ある市場です。

流通業はこれからどんどん垣根が低くなり、海外からの調達も当たり前になるでしょう。まずはアジアにしっかり根ざした流通をして「アジアの豫洲」となりたい。その次はヨーロッパやアメリカにも進出したいと考えています。

森 晋吾

インタビュアーの目線

ITでもインターネットでもない、鋼材の卸売業が海外に出て行くのは珍しいゆえ、並々ならぬご苦労があったかと容易に察せられますが、それでも実行に移し、成果が出るまで粘りに粘った森さんの胆力もまた、並々ならないものだと思います。初めは半信半疑だった社内も一枚岩になった今、伝統と革新を併せ持った同社の展開がますます楽しみです。

書籍「世界を動かすアブローダーズ ~ 日本を飛び出し、海外で活躍するビジネスパーソンたち 」から掲載】

Profile

1973年、大阪府生まれ。
趣味はゴルフ。主に産業機器や車両に多用されるステンレス等の特殊金属を扱う専門商社「豫洲短板産業株式会社」(1933年創業)の3代目社長。常時1万点強を在庫し、自動倉庫やITシステムを駆使した即納体制で、細分化されていく顧客ニーズに応え続ける。
また、創業以来「みんなで豊かになろう」という想いと感謝の心を大切にし、事業を通じた社会貢献を経営理念に掲げ、お客様に喜んでいただく経営方針を実践している。直近は、アジアを中心に拠点を展開するグローバル化を図りつつ、「自然共創態」という地球との共存共栄を目指す哲学のもとに、ecoを本業にすべく環境カテゴリーの事業化を推進している。

Contact

豫洲短板産業株式会社

〒555-0041
大阪府大阪市西淀川区中島2-10-154
06-6473-1881
http://www.yoshu.co.jp/