会社の文化を変えずまったく新しいことをする

豫洲短板産業株式会社

森 晋吾Shingo Mori

代表取締役

 目次

味わったことのない開かれた世界へ

当社がメインとしている事業はステンレス鋼材の卸売です。1933年に祖父が愛媛県で機械工具および金物店を創業してから、長らく工業分野に関わってきました。約50年前からは、ステンレス専門の会社としてやっております。

私は大学卒業後にまず広島の同業者のところで修行し、さらに2年ほど商社で勉強させてもらいました。海外進出を考え始めたのは、商社でいろいろな情報を得るようになった頃です。2001年に当社に戻ると、社長になる前から折に触れ「海外に出る」という話をするようになりました。

鋼材の卸売業者が海外に出て行くのは珍しいことで、あまり前例がありません。先代社長である父は今でも「自分ならやらない」と言ってました。「若さがなければできない」という含みがあるにしても、本音だと思います。しかし、私が海外進出に向けてチャレンジするのを見守ってくれました。

現在は国内外の鉄鋼メーカーが作った製品を日本にストックして卸すのが本業ですが、2010年の上海子会社設立を皮切りに、バンコク、ホーチミンと3ヵ所の海外拠点を設立しました。また、中国では火力発電所向けプラントの補修工事に加わるなど、卸売り以外にも事業を広げてきました。

実際に中国視察を始めたのは2005年頃です。当時、業界には「2006年問題」が囁かれていました。2006年には中国で鉄鋼材の生産力が需要を上回り、余剰製品が日本市場に流入すると。これを機にメーカー再編の時代が来れば、卸売業も統合されたり廃業したりする会社がきっと出てくるし、中国に限らずアジアでの競争に勝たなければならなくなる。生き延びるには国内でトップシェアを取り、海外進出をするほかないと言われていました。しかし国内ではそれなりの売上はあっても、海外については未知数です。噂に翻弄されて不安だけが膨らんできました。こうした危機感から中国への視察に踏み切ったのです。そしてその成長市場を見て「これは日本にいたらあかんな」と思ったのです。

私はバブル期に仕事をしたことがありませんが、きっとこういう世界だったのだろうと思いました。そして、これまで自分がいかに閉塞感の中でしか仕事をしてこなかったのかと思い知ったのです。自分では高いモチベーションを持って働いてきたつもりでした。しかし、これだけ開かれた世界ならもっと可能性を感じながら仕事に取り組めただろうという気がしました。

そこで最初は半年に1回ほど中国に出かけて、いろいろな方と会いました。その間にも街がみるみるきれいになり、昨年行った会社が今年は工場を2倍に増床しているといった激しい変化を目の当たりにしました。

やがて上海に拠点を作り、私も2ヵ月ごとに現地を回るようになりました。私が実際に行動することで海外進出ということがイメージできていなかった社員たちを、共に行動するメンバーとして巻き込んでいった感じです。メンバー以外の社員にも海外進出という新たな分野へのチャレンジがイメージしてもらえるようになりました。こうして徐々に海外展開は現実のものとなっていったのです。

家業を継いだ私が、会社の文化を変えずに、これまでと違うこと、新たな分野へのチャレンジを試みています。そのたびに私が要求することは、これまで社員誰しもが経験したことがないことなので、長く当社を知る社員ほど戸惑いはあると思います。それでも、ここまで展開してくることができました。

中国への進出を試みるにあたり、最初は日本の鉄鋼メーカーの高い技術力をアピールして売り込んだのですが、まったく受注が取れませんでした。すでに成熟したローカル市場に、海外から参入するだけでも難しいことですが、「良い材料が喜ばれるわけではない」という日本とのギャップに驚かされます。つまり、日本の品質基準はマーケットインで求められているものではなかったのです。

そこで卸売業として、中国の材料をどうやって売っていくかも考えることにしました。もちろんローカルでの仕入れという新たなチャレンジがあり、これをクリアしてようやく先に進めるようになります。

また鋼材に日本の優れた技術を加えることも始めます。私たちのお客様の中に、非常に特徴的なチタン加工の特許技術を持つ会社があり、環境問題への対応もできているので、その権利を取得して中国に持ち込むことにしたのです。

幸い現地に営業力も技術力もあるパートナー企業を見つけることができました。そこで世界中のどこにもない唯一無二の加工技術の指導をして、中国火力発電プラントの「煙突補修」に活用できるようになりました。私自身は、最近はこのパートナー企業とのやりとりがかなり増えています。

私たちの基準をクリアしたものが日本より安くできて、流通させることができる。中国にとってもプラスとなる事業ですから、中国の人たちにも応援してもらっています。

Profile

1973年、大阪府生まれ。
趣味はゴルフ。主に産業機器や車両に多用されるステンレス等の特殊金属を扱う専門商社「豫洲短板産業株式会社」(1933年創業)の3代目社長。常時1万点強を在庫し、自動倉庫やITシステムを駆使した即納体制で、細分化されていく顧客ニーズに応え続ける。
また、創業以来「みんなで豊かになろう」という想いと感謝の心を大切にし、事業を通じた社会貢献を経営理念に掲げ、お客様に喜んでいただく経営方針を実践している。直近は、アジアを中心に拠点を展開するグローバル化を図りつつ、「自然共創態」という地球との共存共栄を目指す哲学のもとに、ecoを本業にすべく環境カテゴリーの事業化を推進している。

Contact

豫洲短板産業株式会社

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