決済事業で積み上げた
ビッグデータを活かし、
業種の枠を越えた展開へ

株式会社ネットプロテクションズ

柴田 紳Shin Shibata

代表取締役社長CEO

個人の想いを最大限尊重しても、高い成果は上げられる

柴田が社員に対する成長機会の提供と育成にこだわるのは、自分自身が新卒時代に耐えがたい経験をしたからだ。

大学卒業後、「世の中にインパクトを与えるような仕事をしたい」と総合商社に入社。やる気に満ちあふれていたが、配属されたのは、数十年にわたって売上げも利益も一定を保っている部署だった。やるべきことは決まっており、新しい提案をしてみても不要だとはねつけられる。成果を出す機会も与えられないまま、「お前は同期100人中100位」と笑われた。「こんな思いをさせるなら採用するな」と怒りを覚えたという。大企業なりの安定はあったが、身分制度のような上下関係の中、自分の人生ごと会社に握られて、奴隷になったような感覚に陥った。

それでも自ら他部署と関わりをつくって新規プロジェクトに参加するなど、直属の上司にうとまれながらも挑戦し続けた。そのときの想いはずっと胸に刻まれ、ITXへの転職を経て経営者となった今、成長意欲が高い社員に思う存分チャレンジできる環境を提供したいと考えている。

以前からヒエラルキー構造の会社組織や育成のあり方に疑問を抱いていたため、意識したのは「フラット」な組織づくりだ。

「一番苦労したのは、マネジメント層全員にこうした想いを共有してもらうこと。権限を持つとどうしても上からコントロールしがちになりますから。10年かかってようやく理想形に近づきつつあります。当社は、一見普通の会社に見えるかもしれませんが、かなり普通じゃないんです(笑)。会社というより、もはやコミュニティのような感じですね」

例えば、社長もマネジャーも人事決定権を持たない。配属や異動などの意思決定は個々人に委ねられている。

また、短期的には利益が出ないとわかっている取り組みも認められているのは、かなりユニークといえるだろう。実際、同社では、社員の発案で“All-Winを叶える会社づくりを考える”非営利目的のコラムサイト『Think About』を運営しているが、同サイトは年間約2000万円の赤字を出している。

しかし、「それでも構わない」と柴田は言う。たとえ利益を生まなくとも、社会の問題解決に本気で取り組むことによって社員のモチベーションが上がり、誇りを持てるなら、ひいては採用力や育成力の向上につながっていく。すなわち、無償の社会貢献も、長期的な視点で考えれば企業力自体の向上に寄与しており、利益を上げるという営利企業のミッションには反しないと考えられるからだ。

さらに同社では、入社時から全員を対象に「経営者目線」の醸成を図る。具体的には、新卒採用者には全部署・全立場の業務を理解し、経験する研修を用意。並行して、ビジネスパーソンとしての基礎理念や経営哲学、マネジメントなどの知識をインプットする場も提供する。

そのほか、業務時間の20%を、メイン業務以外で興味のある業務に割り振る「ワーキンググループ」制度を導入。新卒採用や中長期経営計画の策定など、組織運営の根幹を成す業務に携わることもできる。すべて、理論と実践の両輪で視野を広く育み、「会社を良くしたい」という共通目標のもとに帰属意識を高め、自発的な結束力を強化するのが狙いだ。この土台があるからこそ、自由度の高い組織運営が可能となっているのだろう。

こうした取り組みは社内外から高く評価され、日本における「働きがいのある会社」ランキング(小規模部門)では、2013年以降、毎年上位にランクインし続けている。

「私たちは本気で社員一人ひとりのWILLを大切にする集団です。意欲があって本気で取り組めるなら、経験がなくても人は輝ける。だからこそ、とにかく『志ありき』です。きれいごとでも、常識外れでも、人に笑われても、青臭いことを言って本気で取り組んで、必ずその志を叶えてほしい。そして、それを応援できる会社でありたいと思っています」

株式会社ネットプロテクションズ 代表取締役社長CEO 柴田 紳

インタビュアーの目線

数えきれないほどの修羅場をくぐり抜けてきた柴田社長。その過程の中で、「自分よりも優秀で意欲も能力もある若い人を縁の下で支えながら、会社を、社会を良くしたい」と本気で考えるようになったと言います。あっさりと成功していたら、社員との向き合い方も変わって、現在のような自走集団はつくれていなかったのかもしれない、とも。「この組織をつくるために、あの泥みたいな苦しみが必要だったのかな」という言葉が印象的でした。

インタビュー・編集/青木典子小林満希 撮影/後藤敦司

書籍「インターン・新卒採用の注目企業 」から掲載】

Profile

1975年生まれ。福岡県出身。一橋大学社会学部を卒業。1998 年、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)に入社。2001年、ITX 株式会社に転職。当時凋落の一途を辿っていた株式会社ネットプロテクションズの買収に携わり、出向。弱冠26 歳で企業再生というマイナスの状態から日本初の決済ソリューション「NP 後払い」を立ち上げる。2004 年4 月、同社の代表取締役社長に就任、同8 月、転籍。現在に至る。

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