「技術のゆうしん」を支えるトップとして
惜しみなく技術を伝えていく

株式会社ゆうしん

野中 亮佑Ryousuke Nonaka

統括

スタッフに寄り添う指導で技術を底上げする

整骨院や接骨院を全国に28店舗展開し、百十数名のスタッフを擁する株式会社ゆうしん。同社には技術に特化した指導を行う「技術部門」がある。

技術部門トップとして8人の技術部長を束ねるのが野中亮佑。野中のミッションは、ゆうしんの技術を守り、さらに向上させることだ。スタッフの様子を観察し、施術における手の使い方は適切か、患者さんの症状に合わせて最適なアプローチや治療をしているか、専門的な知識を患者さんにもわかりやすく説明できているか――などをチェック。技術部長を通じて指導を行うほか、自分でやって見せることもある。

野中はゆうしんの代表取締役・野中友和の弟である。高校時代、野球部で活動していてケガを負った経験があり、いろいろな接骨院に行って治療を続けたが快方に向かわず、痛みを抱えながらプレイしていたという。そのうちに「自分が治せる人間になって、痛みで悩む患者さんを助けてあげたい」という思いが湧き上がり、兄が所属する接骨院で働くようになった。

兄が独立してゆうしんを立ち上げる際にメンバーとして参加。「操体法」を10年、「構造医学」を16年かけて習得した兄から直接、知識と技術を受け継いできた。多彩な手技の中から最適な治療法を見極めるのを得意としている。

朴訥とした雰囲気の野中は、軽妙なトークで患者を楽しませるようなタイプではないが、確かな技術で患者からの厚い信頼を得てきた。それをうかがわせるエピソードがある。

仙台で新たな治療院を立ち上げ、2年ほど常駐していた時期のことだ。「野中先生はいますか」と突然訪ねて来た人がいた。東京の本院にいたとき、4年ほど施術を担当していた80代の患者さんだった。施術を受けに来たわけではなく、旅行のついでに立ち寄ったわけでもない。わざわざ野中に会いに来たというその患者さんは、野中の顔を見て「元気そうでよかった」と安堵の笑顔を見せた。「びっくりしたけど、うれしかったですね」と当時を振り返る。

患者さんに信頼されるのは、施術の腕前だけでなく、「患者さんと向き合う姿勢」にもあるようだ。通常、プロとして技術力に自信を持つと、患者さんより上の立場から「治療をしてあげる」という意識に傾いてしまうこともある。しかし野中は、そうなってはいけないと、肝に銘じている。「治療をさせていただく」という謙虚さを決して忘れない。

「患者さんに嫌な思いはさせない。どんな治療でも手は抜かない。それを意識し続けていなければ、途端に患者さんは離れて行ってしまうと思います。経験を積んで慣れてきた時期こそ、気を引き締めることが大切だと思います」

「相手がどう感じるか」に心をくだく姿勢は、スタッフに対しても変わらない。

言葉の受け取り方は人それぞれ。自分では優しく指導しているつもりでも、相手から見ると『きつい』と感じることもある。それをスタッフたちから学んだのだと、野中は言う。

実は、スタッフの指導において野中には苦い経験がある。かつては、熱意を込めた指導に対し「厳し過ぎる」として不満の声が上がったこともあった。

反省を経て、今、心に決めているのは、「自分がされて嫌なことはしない」ということ。絶対にスタッフに対して声を荒らげないと決め、言葉による指導以上に、自分が手本となって行動で示すことを心がけている。スタッフにはその背中から技術や姿勢を学びとってほしいのだという。

「学ぼうという意欲を持って取り組んでいれば、誰でも必ず技術は上達する。上達させる。『自分はできない』と悩むスタッフさんを一人でも減らしていきたいですね。スタッフ間の技術力の差をなくし、全体の技術を底上げしていきます」


インタビュー・編集/青木典子、武末明子 撮影/後藤敦司