収縮する国内市場への強い危機感が自然と海外に向かわせた

株式会社サウザンドクレイン 代表取締役社長 高橋 良太

高橋 良太Ryota Takahashi

株式会社サウザンドクレイン

代表取締役社長

2015.04.23

会社にも現地学生にもメリットのあるベトナム進出

海外展開の必要性を考えるようになったのは、ある時期から「うちの会社は、あと3年は国内マーケットで生き残っていける。でも30年後には淘汰されているかもしれない」という、強い危機感を覚えたからです。

私は今32歳ですが、60歳になる頃には、日本の人口は現在よりも3300万人程度減り、1億人そこそこに激減するといわれています。国内市場の収縮が今後ますます加速することは、誰の目にも明らかです。それなのに、経営者が世界に目を向けなかったら、社員に対して責任が取れない事態も招きかねない。どう考えても、今のうちに手を打たなくてはいけないという強い焦燥感に駆られたのです。

4年前、ビジネスの可能性を探るために最初に訪ねた先は、ベトナムのハノイでした。街に入った初日から、日本にはない活気を感じました。まず街を歩いている人がみんな若い。しかも日本の若者と比べると明るい印象を受けます。例えば日本では、信号待ちをしているときに、多くの若者は下を向いてスマホをいじっていますが、ベトナムにはそんな人は一人もいません。前を向いているし、目にも力があります。「この国だったら、何か面白いことができそうだぞ」と直感的に思いました。

当社は、コールセンターによるテレマーケティング事業を柱としていますが、ほかにデータ入力等の事務作業を企業から受託するBPO事業も手がけています。私はこのコールセンター事業もしくはBPO事業を、ベトナムでできないだろうかと考えました。必要となるのは、日本語ができるベトナム人です。

そこで現地大学の日本語学科を訪ね、日本語能力検定試験の1級や2級を持つ学生と実際に接してみたのですが、1級にもなると多少発音は違うものの、ほぼ完璧に日本語をマスターしていました。しかも調べてみると、現地のトップ大学を出た学生でも初任給は250ドル。日本円に換算して約2万5000円ですから、日本の新卒の10分の1のコストで優秀な若者を採用できます。

また日本語を学んでいる学生の多くは女性なのですが、就職先といえば、空港や日本食レストランといった接客業に限られているのが現状です。ですから当社のようなオフィスワークは、学生たちにとっても憧れの職業でした。

つまり、当社がベトナムに進出することは、会社にメリットがあるばかりでなく、現地学生の夢を叶えることにもつながるのです。「これはいける!」と私は確信しました。

実際にベトナムにオフィスを開設したのは2012年7月のことです。会話で発音がネックとなるコールセンター事業ではなく、BPO事業を展開することにしました。主な業務は、取引先から受託した顧客情報等の入力作業ですが、データはクラウド上でやりとりするため、海外だからといって余分な時間やコストはかかりません。

今のところ、事業は順調に進み、ベトナムに日系の競合他社がまだ進出していないこともあり、採用にも困ったことはありません。新卒を採用すると、今度はその社員が自分の出身校の後輩をアルバイトに連れてきてくれます。会社としては、正社員だけではなくアルバイトにも優秀な人材を雇うことができるうえ、学生にとっては、仕事を通じて日本語を学びながらアルバイト代ももらえるわけですから、最高の環境のようです。

日本でもベトナムでも、大切なのは人

ベトナムで事業を立ち上げるときにいちばん不安だったのは、「せっかく優秀な人材を採用しても、すぐに辞められてしまうのではないか」ということでした。というのはベトナムでは、より良い待遇を求めてジョブホッピングが当たり前のように行われると聞いていたからです。ようやく業務に慣れた頃に辞められてしまっては、業務レベル向上の面でも、採用コストの面でも大きな痛手です。

けれども、これは取り越し苦労に終わりました。定着率はとても高いです。コミュニケーションを密に取りながら、居心地の良い環境を作り、仕事に対して公正な評価をすれば、人はそう簡単には辞めないものです。日本人だろうが、ベトナム人だろうが同じです。私も毎月1週間はベトナムに行くのですが、滞在期間中は必ず社員と食事をする機会を持ち、関係を深めるようにしています。

当社のいちばんの強みは「人」だと思っています。多くのテレマーケティング会社は、派遣会社を通じてスタッフを雇用しています。派遣社員のほうが、仕事が減ったときに雇用の調整がしやすいからです。しかし、当社のスタイルは真逆で、正社員もアルバイトも必ず自社で採用しています。また忘年会などの社内イベントでは、正社員もアルバイトも分け隔てなく、全員に参加を呼びかけます。人は組織の中で大事に扱われるとうれしいものだし、仕事に対する向上心も生まれてくるものですよね。

ですから当社は、ブランド力では大手には負けても、スタッフのクオリティーではまったく引けを取らないと自負しています。会社への帰属意識が高いぶん、平均勤続年数も長くなり、高いスキルを持ったスタッフが多いからです。

私はこの「人を大事にする」という会社の文化を、海外でビジネスを行うときも守っていくつもりです。「大事にされれば、期待されれば、人は頑張ることができる」という人の心理は、国や文化を超えて同じだと思うからです。

高橋 良太

Profile

1981年埼玉県生まれ。2003年10月株式会社サウザンドクレインを創業。マンションの一室からスタートした会社も、2013年10月に11期目を迎え、東京、高松、福岡に計500席の自社コールセンターを運営。2012年、サウザンドクレイン初の海外拠点となるサウザンドクレインベトナムを設立。2014年フィリピンセブ島に多言語コールセンターを開設。

Contact

株式会社サウザンドクレイン

〒171-0021
東京都豊島区西池袋1-21-7 住友不動産池袋西口ビル8F
TEL : 03-5957-5111
URL : http://www.thousand-crane.co.jp/

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