海外にいる日本人は日本人に対してとても優しい

Nonaka Precision 代表取締役 野中 遼

野中 遼Ryo Nonaka

Nonaka Precision

代表取締役

2015.04.26

23歳にしてタイで金型部品メーカーを創業したワケ

精密金型部品のメーカーであるNonaka Precisionをタイで設立したのは2008年、私が23歳のときでした。金型部品というのは、たい焼きの型を思い浮かべていただくとわかりやすいのですが、いろいろな部品を量産するための金属製の型のことです。自動車でいえばシートベルトの部品やスイッチパネルなども、それぞれ専用の金型部品を製造したうえで量産が行われるわけです。

この世界に入ることになったのは、大学を休学して、タイで金型洗浄機のメーカーを経営していた父の友人のもとで、1年間ほど修業をさせてもらったのがきっかけです。ちなみに金型洗浄機というのは、金型に付着した汚れを取るための機械のことをいいます。自動車もバイクも大好きで、メカニックな部品にはどうにも没頭してしまう性格のようで、金型に関わる仕事がとにかく楽しくて、すっかりのめり込んでしまいました。高校生の頃から東南アジアを旅する機会が多く、タイに魅力を感じていたことも、一層私の背中を押すきっかけだったと思います。

修業先の社長から、金型洗浄機についてのさまざまな技術を教えてもらう中、東南アジアでは先進国からの工場進出が進み、金型部品そのものに対する需要がますます高まってきているという話も聞かされていました。「アジアも好き。モノを作るのも好き。必要とされるならば、ここで事業を始めよう」と決心するのに、さほど時間はかかりませんでした。

まず現地でDVDショップなどを営みながら資金を貯め、それを元手に創業。日本の大学は中退してしまったのですが、さすがに両親も友達も驚いていました。私は一度決めたことはやり通さないと気が済まない性質でもあり、気持ちは起業に向けて一直線。最低でも3年は頑張ってみようと心に決めていました。もちろん、それまで会社経営などしたこともないのに、なぜか「絶対に成功する」という確信もありました。

創業当時の陣容は、私と現地スタッフ3人の計4人。最初に借りた部屋は、エアコンもなく、毎日汗だくになって働きました。現地スタッフは元々金型部品関連の仕事に就いていたので、彼らに現地企業への営業活動をしてもらい、私は日系企業のメーカーに営業をかける側に回りました。

初めのうちはダメで元々と思って電話かけなどをしていたのですが、やってみると不思議なくらい、大手の日系企業とアポイントを取ることができました。世界的にも有名な日本の大企業が、23歳の若造が創業したばかりの、まだ何の実績もない零細企業のために商談の時間を作ってくれるなんて、日本であれば考えられないことだと思います。けれども海外においては、日本人は日本人に対してとても優しい。何しろ相対的に日本人の数が少ないこともあって、話だけでも聞いてくれるケースが多いのです。

当時の私にとっては、話を聞いてもらえるだけでもラッキーです。「今度、金型部品のサンプルを作ってきますので、ぜひ見てください」というところまで話ができれば、品質の高さは、手にとってもらえればわかっていただける自信はありました。結果として採用率も上がり、私たちはかなり早い段階から大手企業との取引を始めることができました。

このように新しい金型部品を製造するときには、必ず最初に無料サンプルを作り、お客様に問題がないかどうかを実際に使用して確認いただいたうえで、量産体制に入ります。また金型部品はいつ壊れるかわからないので、常にパーツをストックしておき、注文があれば短期に納品できる体制をとっています。これが当社の強みですね。

この仕事でもっとも大切なのは品質管理です。創業当時は中国企業の工場と提携を結び、製造を委託していました。タイの工場では難しい24時間稼働も、中国ならば可能です。今は自社工場を持ち、設計から製造までを行っています。工場内では何度も品質検査をし、品質検査主任が最終確認を行って、バンコクの本社に届きます。すぐに輸送時に傷がつかなかったかなど、目視確認をしてからお客様のもとへ届けられます。また、生産現場の徹底した温度管理と生産技術の向上に伴い、1000分の2ミリまで対応が可能になりました。次第に「Nonakaの部品はなかなか壊れない」という評判がメーカーに広がり、タイでの取引先が増えていきました。

この国では、いいモノを作れば売れる

エアコンもないオフィスから始めた事業も、今ではバンコクの本社のほか、ラヨーンとプラチンブリーという県にも支店を設けられるところまで拡大することができました。どちらの支店も工場地帯にあるので、工場のお客様に何かトラブルがあれば30分以内に対応できる体制も整いました。さらに中国には自社工場を開設、香港には経理関係のオフィスがあります。また2014年よりタイ工場も操業を開始しました。タイに工場があることにより、近年騒がれているチャイナリスクの分散や部品の修正等をタイムリーにできるため、よりお客様に密着した営業が可能になりました。

私たちにとって、特に重要なお客様は、自動車関連産業の企業です。実は、タイはアジアのデトロイトといわれ、自動車メーカーや部品メーカー、さらにその下請け会社が続々と進出してきています。これまで私たちが順調に成長することができたいちばんの理由は、「金型部品の需要が高まっていくタイで、お客様の要求レベルにしっかりと応えられる品質の製品を提供し続けてきたこと」に尽きると思います。

私が創業時に「絶対に成功するはず」という確信があったのも、「需要に対して供給が追いついていないこの地域であれば、いいモノを作り続けていれば、いずれ絶対に売れるときが来るはず」という考えがあったからです。そういう意味では、タイという国は、いいモノを作ったり、いいサービスを提供することで、人びとに喜んでほしいという気概がある人にとって、とても働きがいのあるところだと思います。

野中 遼

Profile

1984年東京都生まれ。
大学を中退し、金型洗浄機の会社に入社。タイ国内において金型の需要が拡大していることを受け、タイにてNonaka Precisionを設立。以来、大手日系企業50社近くと取引をする。2012年にタイのラヨーン県に支店を開設し、2013年にはプラチンブリー県にも支店を開設した。また、中国、香港にも現地法人を有し、アジアにおいてNonakaグループを統括している。タイで活躍していきたい同世代の日本人に対しても積極的に投資を行っている。

Contact

Nonaka Precision

Asoke Building 17floor 253 Sukhumvit 21 Road, Klong Toey Nua, Wattana, Bangkok 10110, Thailand
EMAIL : info@nonaka.co.th
URL : http://www.nonaka.co.th/

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