面倒なルールを定めず、自分をオープンにする

株式会社アカリク 代表取締役社長 林 信長 / 井上 亮

林 信長 / 井上 亮Nobunaga Hayashi / Ryo Inoue

株式会社アカリク

代表取締役社長

執行役員

2015.10.06

デザイナーと大学院生の共通点に着目

林 私は大学院の博士課程在学中に、デザイン会社を起業しました。大学院での専門分野とは関係なく、自分のデザインセンスを活かしたくて立ち上げた会社です。当時採用していたデザイナーは、普通の会社では採用されにくいような変わり者もいましたが、デザインという仕事にかけては卓越した能力を発揮していました。表面的な履歴や印象だけで人を判断せず、その人の持つポテンシャルをうまく活かしてあげることが重要なんだと痛感しました。そして当時在籍した大学院にも彼らと似たような人がたくさんいることに気づきました。優秀な人ばかりですが、博士課程を卒業すると年齢は27歳以上。その上、専門分野以外に自己PRできそうなことがなく、就職活動をしても「偏っている」といわれ散々な結果になります。でも他方で社会ではIT化が進んでいく時代の中で、知的人材が活躍する余地は広がるばかりです。それなら、彼らと企業のマッチングを図る事業はニーズがあると考え当社を設立しました。

井上 私は当時、不動産会社に勤めており、林がオフィスを探していた時の営業担当だったんです。一緒にオフィス探しをしているうちに事業の話で盛り上がり、林からの誘いで当社の設立に参加しました。林はとにかく偏見がないんですね。林は京都大学の博士課程までいっているのに、高卒の私もまったく同等に扱う。そういう人柄にも惹かれました。

林 仕事をする上で、学歴などさしたる問題ではありませんし、デザイナーのように一風変わった人でもまったく構いません。いい仕事をしてくれれば、それで十分です。井上の営業力はずば抜けていましたから、ぜひ彼と一緒に仕事がしたかったんです。2006年の設立時は、「DOGFIGHT & STRAWBERRY」というロックバンドのような社名で、人材紹介のサービスとフリーペーパーの発行を手がけました。そのフリーペーパーのタイトルが「アカリク」だったんです。「academy & recruitment」の略称ですね。

井上 林のデザイン会社が好調だったため、銀行も1億円ほど融資してくれて。好スタートを切ったのですが、事業はなかなか軌道に乗りませんでした。まずは企業に当社を認知してもらうために営業に行くわけですが、当時は「大学院生の人材紹介」と聞くだけで門前払いするような会社も多くて。

林 大学にもアプローチをするんですが、大学は人材会社をうるさがるんです。私はそういう大学の体質を熟知していたため、雑誌のコンテンツも求人情報だけではなく、大学院生向けに興味を持ってもらえるようなコンテンツを載せるなどして、次第にアカリクの名前は浸透していったのですが、フリーペーパーを事業として継続していくにはコストも大きく大変で。結局、銀行からの1億円は2年で消えました。

 

優秀な人材であれば大学院卒でもいい

井上 軌道に乗り始めたのは3年目くらいからです。粘り強く企業側と交渉したり、林が大学院生向けの講演会などをするようになって、潮目が変わっていきました。

林 そもそも企業には大学院生を採用したいというニーズがありません。新卒採用は上限が修士課程卒くらいまでで、博士課程卒になると年齢としては中途採用枠になってしまいます。その時、学部卒で5年間働いてきた人間と、ずっと大学にいた大学院生では、やはり前者の方に企業は魅力を感じる。大学院卒の人間に何ができるのかわからないわけです。

しかも、中には変わった人もいます。それは当然の話で、彼らはデザイナーと同じように多くはクリエイターですから、変わっていても仕方ないわけです。ところが、「笑顔や元気がない」といった新卒の学部生を採用するような同じ基準で彼らを判断してしまう。就業経験がないだけで、スキルもやる気もあって健康ならば何の問題もないはずなのですが。

井上 大学院生側も、もう結構な年齢になっていますから、新卒のようなノリではなく、会社の雰囲気や教育制度よりも、基本的に彼らは「社会の役に立ちたい」と思っています。給料もさほどこだわらないのですが、そういう特性が理解されていないんです。

林 彼らが就職活動のやり方を全く知らないのも問題です。大学院生には、モラトリアムを伸ばしたくて進学したという人が少なくありません。そのため、どうしても社会に出ることに対して奥手ですし、学部生よりも知識を持っているというプライドもあります。

すると、彼らはどうしても自身の専門分野を主軸に就職先を考えます。たとえば、電子工学の専門分野で研究をしてきたから、電子工学関連のメーカーという感じです。別にその分野にこだわらなくても仕事はありますし、彼らもやればできるのですが、最初にその枠組みを自分で設けてしまうので、ずっとそれが縛りになってしまうんです。

しかも彼らが就職活動で得る情報が限られていて、「研究室の先輩が」「担当教官のツテが」といった閉じられた世界の話しかありません。知っている企業も、消費者向けの商品・サービスを提供している大企業ばかりです。これでは満足いく就職先など見つかるはずがありません。

井上 私たちはこういった企業と大学院生の間にある齟齬を埋めていったのですが、気づいたのは、何も企業は「大学院生だから嫌だ」と思っていたわけではないということです。あえて「大学院生」を選ぶニーズはなくても、「優秀な人材」というニーズは確実にある。それを満たしていれば、大学院卒でも構わないというのが多くの企業の認識です。

林 僕らが企業に求められるのは理系、特にエンジニアが今は主流です。当社では多くの優秀な理系大学院生・研究者に登録してもらい、その紹介を通じて飛躍的に業績が伸びました。もちろん、文系大学院生の登録者もいますが、大学院に進むのは理系の方が圧倒的に多いため、理系に強い「アカリク」というイメージがあるようです。

林 信長 井上 亮

Profile

代表取締役社長 林 信長
1975年、東京都生まれ。
米ボストンGovernor’s Academy高校、京都大学理学部、同総合人間学部を経て同人間環境学研究科博士満期中退。博士課程在学時の2002年にWEB制作会社を起業した後、2006年に大学院生の就職支援を目的とした株式会社D・F・S(現 株式会社アカリク)を設立し現在に至る。

執行役員 井上 亮
1980年、山口県生まれ。
不動産業界での法人営業を経た後、2006年株式会社D・F・S(現 株式会社アカリク)の立ち上げに参画。現在は執行役員として会社全体の統括や、学生の起業支援事業に従事。

Contact

株式会社アカリク

東京都渋谷区渋谷2-1-5 青山第一田中ビル2階
http://acaric.co.jp/
https://acaric.jp/ (アカリクWEB)

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