海外にいたら、自分が動かないと何も始まらない
株式会社トキオ・ゲッツ 海外事業部 マネージャー 山田 奈津子

株式会社トキオ・ゲッツ

山田 奈津子Natsuko Yamada

海外事業部 マネージャー

2015.06.09

現地に行ったら新しいビジネスが見えてきた

トキオ・ゲッツは創業17年目で、ビジネスの主軸はエンタテイメントと企業とを結びつけたタイアッププロモーションです。日本のエンタテイメントには、映画、アニメ・マンガ、音楽など幅広いジャンルが存在しますが、そのコンテンツが持つパワーと企業を結びつけることで、企業のセールスプロモーションを形成しています。

ところが数年前から、日本のさまざまなエンタテイメント企業から先行きを心配する声を耳にするようになりました。日本の市場は少子高齢化の影響で若者も子どもも減少傾向にあり、特にアニメコンテンツについては将来を不安視されているからです。だからといって、エンタテイメントコンテンツを保有する企業が、独自に国外市場へ進出することもなかなか難しい。そうした話を聞くうちに、「当社の手法を海外で試みてみよう」と考えるようになりました。

実際に海外へ足を運んで、2012年には台湾とインドネシアにオフィスをオープンしました。2つの拠点には、それぞれ違う意味づけがあります。

まず台湾は、日本との距離が近く親日国でもあります。また私たちが扱っているアニメコンテンツに関する成熟市場がすでに存在している国です。私たちとしては実績が作りやすい拠点として選びました。

インドネシアは、アジアにおいて圧倒的に子どもの数が多く、私たちのビジネスにとっても、また今後の経済発展についても将来的な期待値がかなり高い国です。ライツビジネスについてはまだまだ市場が確立していませんが、大きなポテンシャルを持っています。

私自身は台湾オフィスのスタートアップから参加しました。当初は出張ベースで現地を訪れていましたが、私はもともと海外への関心が強かったわけではありません。最初は「台湾で何ができるのか」と探りながらの出張でした。しかし、実際に台湾でさまざまな出会いがあり、そこに新しいビジネスが広がっているのが見えてきました。すぐに案件も獲得できたので、台湾オフィスは私が責任者としてオープンすることになりました。

私が選ばれた理由は、社内で最もライセンスビジネスに詳しく、またチャレンジ精神が旺盛だと評価されたからだそうです。実際、その頃にはすでに「是非行きたい!」「挑戦してみたい!」という思いがありました。

会社の登記やオフィスを決めて、実際に拠点として稼動できるようになるまでは苦労もありましたが、一旦スタートしてしまうと、予想通りに順調に業績を挙げていくことができました。現在もアニメコンテンツ、キャラクターコンテンツを使用するライセンスビジネスで実績を作っています。

これと時期を同じくしてインドネシアに関しても拠点作りが進み、同じ年にオフィスがオープンしています。ただこちらはなかなか軌道に乗らず、2013年には代表の原が改革のために赴任しました。しばらくの間インドネシアを原が、台湾を私が担当する体制が続きましたが、2014年の5月に原から「山田、インドネシアを一緒にやらないか?」と声がかかりました。事実、台湾は軌道に乗り安定してきていたので、台湾オフィスを現地採用の駐在スタッフに任せて、私はインドネシアに移ることになりました。

「まずはやってみる」から広がる可能性

インドネシアに来て分かったのは、日本のアニメが放送されてはいても子どもたちにはほとんど知られていないという事実でした。

キャラクターに子どもたちが触れていなければ、それを使ったプロモーションなど成り立ちません。子どもたちに日本のアニメコンテンツを知ってもらうためにはどうしたらいいのかと考えるうちに、「子ども市場のメディアを作ろう」ということになりました。具体的には、小学校向けに無料の新聞を配布するという案がまとまったのです。

私たちとしても初めての試みであり、ビジネスとして成功するかどうかは未知数でした。でも、アジアは「正解」などありません。まずはやってみようということで、「SuratDariBumi(=地球からの手紙)」という名の小学生新聞を発行しました。

記事には子どもたちが家で試してみたくなる科学実験コーナーなど、日本が得意とする科学・文化教育コンテンツを盛り込んでいます。さまざまな企業にスポンサーとして協力していただくことで、無料配布が可能となりました。

現在では首都ジャカルタ近郊を中心に全国1800校に配布され、発行部数は20万部に達しています。インドネシアで初めて無料配布される小学生新聞でしたので、スタート前はどういう媒体なのか理解してもらうのが難しい状況でした。しかし、1年ほど続いた現在では、広告出稿のお問い合わせをいただくほどの存在になっています。現状の広告は日系企業がほとんどですが、今後はローカル企業にも波及させていく予定です。

また小学校へのコネクションを生かし、イベントの開催や教材の販売など、複合的な教育ビジネスとしての展開を見込んでいます。日本ではすでに競合がいるようなビジネスでも、アジアでは初進出だったりするので、開拓の余地は十分にあることが分かりました。

台湾からインドネシアに移り住んだ当初、私はかなりキリキリしていました。早く成果を出さなければという焦りもありましたし、それまでの台湾が日本にかなり近しい雰囲気を持っていたのに比べると、だいぶ異なる国だったからです。

しかし、現地のインドネシア人スタッフたちと一緒に仕事をしていく中で、やがて彼らの優しさ、一緒にひとつのものを作り上げていこうとする精神を素晴らしいと感じるようになりました。彼らは何に対してもリスペクトしますし、困っている人がいたらたとえ自分が忙しくても声をかけ、助け合うことを当然としています。日本では自分の業績に必死で、自己中心的になりがちですが、彼らは正反対です。そういう彼らの中にいて、私もすっかり考え方が変わっていきました。インドネシアでお仕事をさせていただくという気持ちで、この国の人たちが楽しくなるようなことをしなればと思うようになりました。

お互いを思いやる気持ちが強くて競争心が希薄なのは、良い面も悪い面もあるとは思います。ただ当社の事業はタイアップビジネスであり、企業と企業を橋渡しして何か大きなコラボレーションを作っていくことを生業としています。そこにはたくさんの人たちの協力が必要ですから、私たちのビジネスと彼らの文化にはシナジーがあると感じています。

インドネシアに来た当初、英語力に不安があったこともキリキリしていた要因です。台湾オフィスでは現地スタッフも日本語が話せたのですが、こちらに来たら英語ベースです。もともと私は英語が得意な人間ではありません。ジャカルタ赴任時に中学校2年生の英語の教科書を持ってきましたが、今もそれ以上のレベルにはなっていないと思います。

しかし、そのレベルで十分に仕事ができています。英語はインドネシア人にとっても私たち日本人にとっても第二言語ですから、それほど高度なレベルは必要ないのです。伝えるのが大変な内容は絵に描いたり、ボディランゲージを駆使したりしています。インドネシアに来てから、だいぶ絵が上手になりました。〝Let’s say〞と、お互いにたとえ話を出して理解を深めるということにも慣れてきました。

海外に出たくても言葉の壁に恐怖心を抱いてためらう人は、もったいないと思います。私たちのオフィスのようにインドネシア語交じりだったり、シングリッシュが入ってきたりすれば、教科書通りではありません。私も引き続き勉強はしていきますが、実際のビジネスの場で必要とされる単語やフレーズは決まっているので、1対1でお客様やスタッフと話しながら学ぶことを勧めます。今では英語についてはとても気楽に考えています。

山田 奈津子

Profile

1981年、東京都生まれ。
2005年にアルバイトとしてトキオ・ゲッツへ入社するが、持ち前のアイディアとコミュニケーション力を生かし、短期間でトップクラスの成績を収める営業に成長。29歳の時にアジアに日本のキャラクターライセンスを提案する事業を立案し、新規事業の責任者となる。台湾支社の立ち上げに続き、出張のはずだったインドネシアに気づけば駐在することになるという破天荒なビジネス経歴をネタにしつつ、日々アジアで奮闘中。

Contact

株式会社トキオ・ゲッツ

〒151-0053
東京都渋谷区代々木2-27-15 高栄ビル2階
03-5333-0266
http://www.tokyogets.com/

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