日本企業ならではの強みを意識しながら、アジアで戦う
株式会社ブイキューブ 代表取締役社長 間下 直晃

株式会社ブイキューブ

間下 直晃Naoaki Mashita

代表取締役社長

2015.04.23

アメリカ進出という無謀な挑戦から生まれたV―CUBE

ブイキューブは、Web会議をはじめとしたビジュアルコミュニケーションサービスの開発・販売・運用を行っている会社です。この分野においては、2007年から国内シェア1位を維持しています。私たちがそもそもWeb会議の開発を手がけることになったきっかけは、マーケットやユーザーのニーズによるものではなく、自社内での必要性に迫られてのものでした。

2003年、当社はアメリカのロサンゼルスに子会社を設立しました。当時の私たちの主力事業は、Webの制作や携帯電話のアプリケーションの開発。その頃、携帯電話のアプリケーションについては、アメリカよりも日本のほうがずっと進んでいました。「それなら日本の自分たちの技術を持っていけば、アメリカでも勝負できるんじゃないか」と考え、挑戦することにしたのです。当時はまだ、社員20〜30人程度の本当に小さな会社で、組織としての体をようやく成しつつあったばかりの頃でしたから、今思えば、若さゆえの無謀なチャレンジだったとしかいいようがありません(笑)。

アメリカに子会社を構えてみると、さっそく困ったことが起きました。私が日本の本社に居続けるとアメリカの業務が滞り、アメリカに行くと日本の業務が滞るようになったのです。そこで日本とアメリカでのコミュニケーションを円滑にするためにテレビ会議システムの導入を検討したのですが、1000万円もの費用がかかると知って諦めました。

「それならば、自分たちで作ってしまおう」ということで開発したのが、インターネット回線を利用したWeb会議サービスです。さらに自社内で、より使いやすいように改良を重ねるうちに、製品としてお客様に販売できるレベルにまで達したというわけです。

まさに必要は発明の母。アメリカに子会社を設立するという無謀な挑戦をしたからこそ、現在の主力製品(V―CUBE)は生まれたのでした。

私たちがアメリカに進出したことによって得られたものはもう一つあります。それは日本のベンチャー企業が、アメリカで戦う難しさを身をもって経験したことです。

日本とアメリカでは、ベンチャー企業の資金調達力がまったく違います。今の私たちの企業規模では、日本で調達できる金額はせいぜい10億円単位が限度。一方、アメリカの場合は、私たちと同じ規模の会社だったとしても、100億円レベルを調達することができます。仮に技術力は自分たちのほうが勝っていたとしても、資金調達力で数倍以上もの差をつけられたら勝ち目はありません。

つまり、日本のベンチャー企業は、アメリカ企業に真っ向勝負を挑んでもかなわない。それなら私たちは、日本企業ならではの強みを活かせるフィールドで、その強みを存分に発揮してアメリカ企業に対抗していくしかない。「どこでどう戦っていくか」ということを考えるようになったのです。

アジアならではのコミュニケーション文化を取り入れたV―CUBE

私たちがアジアでの事業展開を開始したのは2009年のことです。最初に拠点を設けた国はマレーシア。理由は、東南アジアの中では経済が発展していて、なおかつ英語が通じやすい国だったからです。その当時は、英語が通じやすい国に展開するしかないと考えていました。しかし、事業展開を進めるうちに考えが変わってきました。

アメリカ企業の動きを見ると、英語圏の市場には着実に入り込んでいますが、非英語圏の国では苦戦をしています。そこを狙っていこうというのが私たちの戦略です。その点アジアは、インドネシア、タイ、ベトナム、中国、そして日本というように非英語圏の国、つまり、私たちが戦いやすい場所がたくさんあるのです。

また同じアジアですから、コミュニケーションに関する文化も日本と似ています。

アメリカのビジネス界では、電話会議で重要事項を決めるのが当たり前です。つまり「言語=ロジック」で物事が進められている世界です。そのためテレビ会議などのビジュアルコミュニケーションツールも、電話会議の補助ツールとして発展してきました。

一方アジアでは、重要事項ほど当事者が直接顔を突き合わせて決めていきます。元々電話会議なんてあり得ない。つまりアジアでは「言語」だけでなく、同じ「時間」や「空間」を共有することを重視しているのです。そのため私たちの「V―CUBE」も、同じ時間や空間を共有している感覚に極力近づけることを目指して改良を重ねてきました。

顧客の要望に柔軟に対応できることも私たちの強みです。私たちのサービスには、お客様が必要なぶんだけを利用して月額で利用料を払う「クラウド型」と、お客様がシステムをまるごと購入して自社にサーバーを置く「オンプレミス型」があります。日本ではクラウド型を選択するお客様が主流となってきましたが、まだまだ東南アジアでは自分で所有したいというほうが多数です。また、購入したシステムを、自社向けにカスタマイズすることを求めてきます。当然私たちはその要望に対応しています。

一方アメリカの企業は、自分たちの製品やサービスがグローバル・スタンダードであると規定して、その基準を世界中のあらゆる国や地域に展開するスタイルを採ります。基本的にカスタマイズには応じようとしません。コストをかけずに、均質的な商品を大量に売ることで売上と利益をあげるという戦略だからです。

しかしアジアでは、アメリカ企業よりも私たちのスタイルのほうが圧倒的に受けは良いので、勝算は大いにあると踏んでいます。今ある調査会社によると、アジアのビジュアルコミュニケーション市場における当社のシェアは第2位で、1位はアメリカ企業です。現在はマレーシア、インドネシア、シンガポールなどの拠点で40〜50名の社員が働いていますが、これを今後5年間で100人から200人の規模に拡大し、アジアでのシェア1位を奪取したいと考えています。

アジアは、市場としてはまだ規模が小さいですが、急速に成長を遂げようとしており、やがて確実に日本の市場規模を超えるでしょう。だからこそシェア1位を取り、「V―CUBE」をアジアにおけるビジュアルコミュニケーションツールのデファクトスタンダードにしたいのです。そしてアメリカ企業と、彼らが得意とするフィールドで真っ向勝負しなければならないときのために、今は自分たちの力を高めていくだけです。


Profile

1977年東京都生まれ。
慶應義塾大学在学中の1998年に、Webソリューションサービス事業を行う有限会社ブイキューブインターネット(現:株式会社ブイキューブ)を設立し、同社代表取締役社長に就任。その後、本業をビジュアルコミュニケーション事業へ転換し、2007年よりWeb会議市場における国内シェアナンバーワンを獲得、2012年まで6年連続で首位を獲得している。米国インテル キャピタルからの出資を機に、2014年1月時点でマレーシア、シンガポール、インドネシアに現地法人を設立。また、2013年1月より、活動拠点をシンガポールに移し、アジアを中心としたグローバル展開を進めている。2013年12月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場。経済同友会会員。

Contact

株式会社ブイキューブ

〒153-0051
東京都目黒区上目黒2-1-1 中目黒GTタワー20F
TEL : 03-5768-3111
URL : http://jp.vcube.com/

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