国が変わると大きく変わる、求められるスキルの違い

ギークス株式会社 NexSeed Inc. 海外推進本部マーケティングマネージャー 西山 七穂

西山 七穂Nanaho Nishiyama

ギークス株式会社 NexSeed Inc.

海外推進本部マーケティングマネージャー

2015.06.05

フィリピン・セブ島で、英語とITの学校をつくる

ギークス株式会社の傘下にあるネクシードは、フィリピン・セブ島にある英語とITを学べる学校です。単に語学を学ぶだけではなく、「今の自分を変えたい」と思っている方にとって、スキルアップになる場になることを目指しています。私自身は立ち上げ時期からネクシードに加わり、仲間と共に今のネクシードを作り上げてきました。

最近フィリピンでの英語留学はかなりポピュラーになってきました。もともとフィリピン留学は韓国で先に始まり、毎年10万人以上の方がフィリピンを訪れていると言われています。日本人留学生は2010年時点で年間2000人程度でしたが、2013年には2万6000人と急増中です。フィリピン人にとって英語は準公用語。アジア圏の中では特にきれいな英語を話し、映画館では誰もが字幕なしにアメリカの映画を観ています。

私は「ネイティブ=教えるのが上手い」ということではないと思っています。例えば私たちが外国人の方に日本語を教えられるかというと、なかなか上手く説明できないですよね。「それ間違っている」という違和感には気づけますが、なぜ間違っているかについては、知識が必要になります。大学時代にカナダに2ヵ月短期留学をした経験があり、当時はノンネイティブが15人くらい集まったグループレッスンを受けていました。カナダ滞在自体はとても良い経験になった一方で、せっかく英語圏にいるにも関わらず、英語が分からない者同士で間違った英語をぶつけ合うスタイルに効率の悪さを感じていました。

そういった経験を基に、英語授業は原則マンツーマンで行っています。フィリピン留学の醍醐味は、価格の安さと、アウトプット機会の豊富さにあると思っています。日本人は、文法などの知識はしっかりしているのに、話す機会が少ないために言葉が出てこないという方が多いです。フィリピン留学は、そのような「スピーキング初中級者の方が英語を話すのに慣れる場」として、非常に適していると思いますし、日本人の癖や犯しがちな間違いについての指導にも慣れています。

現在、ネクシードの最も大きな特徴となっているのは、「エンジニア留学」です。これは、「英語」と「プログラミング」という、これからの時代が求める2大スキルを同時に学ぶことができるコースになっています。

私たちは当初から「単に英語を学ぶだけでなく、将来海外で活躍する人を育てる場を作りたい」という想いを強く持っていました。そんな中で2013年9月に生まれたのが「プログラミングと英語を両方学ぶ」という新しい留学の形です。

今では他社様で類似サービスを始めるところが複数出るなど、反響の大きさに私たち自身も驚いています。ただ、ギークスがエンジニアの方々を支援している会社だということもあり、企画が出た時には、とてもネクシードらしい、相性の良いプログラムだと感じました。今ではギークスはじめ、企業様用の採用育成プログラムとしても「エンジニア留学」が取り入れられています。

海外で働く苦労とそれ以上の楽しさ

私は日本で生まれ育った純ジャパニーズですが、新卒から海外で働くキャリアを選びました。ただ、もともと海外で働くつもりだったわけではなく、むしろ遠い夢でした。

大学に入るまでは「良い大学に行くことが良いこと」だと思っていましたし、流れに任せて就職活動もひと通りしました。そんな中、幸運にも、世界一周に行く直前のネクシード代表に出会えたのです。他にもフリーランスで成功している方や、早期リタイアされ人生を楽しんでいる方、起業家の方など、聞いているだけでワクワクする人生を歩まれている人たちにお会いする機会に恵まれました。それまで限られた働き方しか知らなかった私には、「そんな生き方もありなんだ」と目からウロコの思いでした。

一方で、その時自分には何のスキルもないということを思い知らされました。「就職しても会社が潰れたら生きていけないかもしれない」という焦りと恐怖心は、今でも自分を突き動かすひとつの動機になっているんじゃないかと思います。漠然とした不安と、やり残したような気持ちを抱えながら、いよいよ社会人生活が始まるのかと思っていた時に、状況が一変しました。なんと、大学を卒業できなかったんです。

思いがけず3ヵ月、卒業が延びました。ただ、これが本当に自分にとってはラッキーだったと思います。これまで「今は時間がないからできない」「いつかできるだろう」と思っていたことをやってみる機会が訪れたのです。自分がワクワクすることは何かを考えた結果、「海外で働く経験がしたい」と思うようになったのです。

縁あって、サンフランシスコのウェブデザイン会社でインターンシップの機会をもらうことができました。まさか本当に海外で働く経験ができるとは思ってもいなかったので、決まった時は本当に嬉しかったです。私の場合、人から紹介していただいたことが選考に繫がったので、日々の出会いの大切さを実感するとともに、海外で働くきっかけは意外と身近なところにもあるんだと思いました。

その後サンフランシスコで働く予定でいたのですが、ビザが上手く行かず、帰国を余儀なくされました。日本でひとり働きながら、これからどうしようかなと思っていた時に代表の高原に再会、そして、それまで行ったこともなかったセブ島で、立ち上げに加わることになりました。人生分からないものだなとつくづく思います。

「海外で働く」という括りでは同じですが、アメリカでの経験とフィリピンでの経験は、あまりにも別物でした。気候や生活環境はもちろん、人、インフラ、求められるスキル、ぶちあたる課題、何もかもが違います。

「英語の必要性」という意味でも、面白い違いがありました。アメリカでインターンをしていた頃、私の一番大きな壁は常に英語でした。特にミーティングと電話。インターンもチームの一員であることに変わりなく、ミーティングの場で何も話さずにいると、いる意味がないと見なされてしまいます。電話はさらに苦痛で、相手の名前すら聞き取れず、「電話取りたくない病」になりました。もともと私は語学が好きで、4年くらい前からTOEICのスコアが900はあったのですが、英語で仕事をするのにスコアはまったく役に立たないことを思い知らされたのです。

一方、フィリピンに来てからは、英語に困ることは正直ほとんどありません。フィリピンにおいては、きれいな英語を話すことより、相手の言っていることを100%理解して、自分の言いたいことを100%伝えきることが大切だと思っています。フィリピン人は英語が上手とはいえ、あまり得意でない人もいます。ゆっくり話し、極力簡単な英語を使うことが、スムーズなコミュニケーションに繫がる場合も多々あります。

英語が、相手に信頼感を与えるレベルで必要なのか、単なるコミュニケーションツールとして使っているのか、位置づけによって求められるレベルは変わると思います。もちろん、アメリカでも他のスキルがあれば英語はそこまで重要視されないケースもありますし、国の違いだけでなく、職種によっても左右されると思います。

フィリピンで語学学校としての認可を受けるのには苦労しました。日本では信じられないことですが、公的機関が急にシステムを変更することがあります。役所に言われた通りの書類100枚以上を揃えて提出に行ったら、「先週からフォーマットが変わった」と、一からやり直しになったこともあります。祝日ですら、急に制定されたり変更されたりします。インフラは急速に整備が進んではいるものの、私が来た当初はインターネットがあまりにも遅くFacebookも開けないことが多々ありました。

また、フィリピン人スタッフとの距離感も当初なかなか掴めずにいました。

スタッフも私たちが何を考えているのか分からなくて不安だったでしょうし、私たちもどう接するべきか迷っていました。ある日、フィリピン人スタッフ皆を呼んで話をする機会を持ちました。本社のギークスについて、ネクシードという会社が目指す姿について、日本とフィリピンの文化の違いについて、スタッフ一人ひとりへの想いについて、彼らが疑問に思うことに対し、順番に話をしていったのです。

その時をきっかけにして、皆が心を開いてくれるようになり、チームとしてまとまってきたと思います。日本の当たり前はフィリピンの当たり前ではないし、フィリピンの当たり前は日本の当たり前でもない。何が違うのかを具体的に理解していくことで、先生たちは自主的に動けるようになってきました。今、私たちはとても仲が良く、チーム全体のことを「ネクシード・ファミリー」と呼んでいます。フィリピンの人は仲間意識が強く、家族をとても大切にします。チームのメンバーを家族のように感じて、誇りを持って働いてくれるようになって、私たちもとても嬉しく思っています。

私個人としては、今ネクシードのメンバーとして働きつつ、ライターとして活動したり、週末にはスラムの子どもたちに社交ダンスを教えるボランティアをしたりしています。こういった活動を、ギークス・ネクシードはむしろサポートしてくれるので、ありがたいなと思うばかりです。

これまでたくさんの人たちに気づきを与えてもらっていたので、これからは「こんな生き方ありなんだ」と発信していけるような生き方ができればいいなと思っています。

西山 七穂

インタビュアーの目線

我々の滞在先から取材場所の語学学校までの道筋をメールで丁寧に案内していただき、お目にかかる前から優しい気遣いが伝わってきた西山さん。聞けば東大法学部出身という超がつく才媛ながら、謙虚に、けれどもとても力強く、現在の取り組みと将来の夢を語ってくれました。西山さんのような方がいれば、留学に来る人たちも心強いことでしょう。

書籍「世界を動かすアブローダーズ ~ 日本を飛び出し、海外で活躍するビジネスパーソンたち 」から掲載】


Profile

1988年、香川県生まれ。
東京大学法学部を4年3ヵ月で卒業。サンフランシスコのクリエイティブエージェンシーbtraxにCEOアシスタント・プロジェクトマネージャーとして勤めた後、フィリピン・セブ島の語学学校「NexSeed(ネクシード)」に立ち上げから参画。海外で働く女性に焦点を当てるメディア「なでしこVoice」など、ウェブメディアへの寄稿やコンテンツ執筆も多数行っている。
大学時代から社交ダンスをしていた関係で、ダンス雑誌「ダンスファン」にも寄稿。休日は、セブのNPO「セブンスピリット」にて、スラムの子どもたちに社交ダンスを教えている。

Contact

ギークス株式会社 NexSeed Inc.

〒150-0043
東京都渋谷区道玄坂一丁目14番6号 ヒューマックス渋谷ビル3階
03-6690-7978
http://geechs.com/
http://nexseed.net/

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書籍
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