世界を「共感」でつなぐ
人と企業の魅力が伝わるストーリー

リスナーズ株式会社 代表取締役CEO 垣畑 光哉

垣畑 光哉Mitsuya Kakihata

リスナーズ株式会社

代表取締役CEO

2016.09.06

起業から15年。「人生を賭けたい」事業で再スタートを切る

「15年間続けてきた事業を譲渡する」
垣畑光哉がそう決断したのは2015年の暮れのことだった。

創業以来、手がけてきたのは保険業界に特化したマーケティング支援。極めてニッチな専門性から保険会社50社、保険代理店200社ほどのクライアントを抱え、外資系金融機関の新規事業立ち上げを託されることもあった。自社メディアも確立し、業績は堅調。しかし、そんな財産を手放しても、新たな事業に残りの人生を賭ける価値があると考えたのだ。

2016年4月、垣畑は社名を「リスナーズ株式会社」へと改め、新事業への完全シフトを宣言した。

社名の「Listener(リスナー)」は、文字通り「聴く人」を意味する。企業や人の想いを「聴く」ことで、当事者も気づいていないような魅力を引き出し、それを「伝えたい相手」に届くように橋渡しをするという事業コンセプトだ。具体的には、企業の経営者やメンバーにインタビューを行い、そのストーリーを明文化して、ウェブやブックレット(冊子)、書籍などのメディアを介して発信する。

金融業界という枠を飛び出し、すべての人と企業をつなぐプラットフォーム型ビジネスへ。そんな大きな転換に至るプロセスには、運命に導かれたかのような偶然の連鎖があった。

もともと「起業」の志向があったわけではない。新卒で外資系生命保険会社に就職し、一貫して保険業界のマーケティング畑を歩んできた。責任ある仕事と分相応以上の収入に満足していたという。

転機が訪れたのは入社10年目。交通事故に遭い、長期入院したときのこと。仕事に忙殺されながらも、保険ビジネスの先頭を走っている自負心があったところへ、急ブレーキがかかった。それは、初めて会社人生を振り返り、今後の自分を見つめ直すきっかけとなった。

「今の延長線上で、心から目指したいと思う目標や理想がないことに気付いた。安定した地位や収入を一度手放してでも、自分の脚で歩ける人間になりたい。自分の人生なのだから、自分自身で切り拓きたい。」眠っていたベンチャースピリットが目を覚ました瞬間だった。

翌年、垣畑は会社を退職。個人創業を経て、2001年にはマンションの一室で前述のマーケティング会社を設立する。前職で得たダイレクトマーケティングのノウハウは引っ張りだこで、創業時から売り上げは右肩上がり。少人数のスタッフで高収益を挙げるモデルを築いた。

しかし、それからの15年間は決して順風満帆だったわけではない。設立7年目、さらなる成長を目指して新たなビジネスモデルを構築するも、模倣が横行して競争が激化。3年で撤退を余儀なくされ、初のリストラでは、ほとんどの社員を失った。

再起を誓い、ぎりぎりのかじ取りをする最中に、最大の転機は巡ってきた。

リスナーズ株式会社 代表取締役CEO 垣畑 光哉

人や企業には「うまく伝えられていない想い」がある

ある出版社から「保険の特集ページを監修してくれないか」という依頼が舞い込んだ。8ページの企画だったが、好評を博したため、続いて1冊の特集号を監修。「営業活動に役立つ」と保険のプランナーに喜ばれた。リクエストに応える形で、保険プランナー30人が仕事観や保険選びのノウハウを語る単行本を出版した。

すると、ウエディング会社を経営する友人から「保険プランナーの本を作れるなら、ウエディングプランナーの仕事を啓蒙する本を作ってほしい」という相談を受ける。これまで縁のなかった業界であることに戸惑いながらも、垣畑はウエディングプランナーら16人にインタビューを行い、結婚式の意義や仕事の醍醐味を本にまとめた。

「畑違いの業界・職種でしたが、異業種の人間だからこそ、その業界にいる人が自分たちでは気付いていない魅力が見える。それを実感しました。第三者が客観的立場で話を聴くことで、当事者が自覚していない強みを引き出し、表現することができるんだと…」

その本が出版されると、思いがけない展開が待っていた。

経営者仲間たちから「うちも本を出したい」という相談が寄せられたのだ。理由を聞くと、「採用に苦戦している。売り手市場になり、求職者の目が大手ばかりに向かってしまう。親の反対で内定辞退されることも増えている」と切実な声が返ってきた。

「それならば、ベンチャーで働く魅力、その企業を率いる代表者の人間性を伝えよう」と考えた結果、複数の経営者が語るメッセージを1冊の本にまとめる「シェア出版」というスタイルにたどり着いた。経営者仲間に声をかけると、20数社の掲載枠はすぐに埋まり、2014年暮れ、現在のビジネスの原点ともいえる『20代に何をする?(幻冬舎刊)』を上梓。すると、「次の本には自分も」という反響が相次ぎ、結果としてこれまでに6冊のシリーズ展開となった。取材した経営者は国内外300人に達する。

出版後、うれしい報告がいろいろと寄せられた。「優秀な学生が『社長の理念に共感した』と応募してきてくれた」「本を読んだ社員の間で自社の理念やビジョンが腹落ちし、モチベーションが高まった」――。また、「内定者や社員の親が本を読んで、うちの会社で働くことを応援してくれるようになった」など、思いがけぬ効果も生まれた。

「普段、伝えているつもりが実は伝わっていないことはたくさんある。ちゃんとメッセージを発信することの重要性を感じましたね。ある先輩経営者が言っていました。『経営者は経営者を演じなければならない。演じているうちにそれは本物になる』と。経営者は自分や自分の会社がどう見られているかを意識し、発信するメッセージをしっかりと練り上げるべきだと思います。他人からは夢物語のように思える理念やビジョンだって、繰り返し発信することで必要なリソースが集まってきて、いつか叶えられるものなのです」


Profile

1965年、岩手県盛岡市生まれ。
立教大学法学部卒業後、外資系金融機関に勤務し、多様なマーケティングを経験。1999年の個人創業を経て、2001年に現・リスナーズ株式会社を創業、代表取締役に就任。以後、広告の企画制作や企業ブランディングに関わる。近年は企業トップへの取材による「コーポレートストーリー」のプロデュースに注力し、書籍化された取材は国内外300件を超える。著書に『10年後に後悔しない働き方 ベンチャー企業という選択』『メンター的起業家に訊く 20代に何をする?』(以上幻冬舎)、『これから働くならこれからの会社でしょ』『自分らしくはたらく 個を生かすベンチャーという選択』(以上ダイヤモンド社)など。

Contact

リスナーズ株式会社

東京都新宿区新宿1-2-5 第2飯塚ビル3F
http://listeners.co.jp/
TEL:03-3352-0890(代表)

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