できない理由よりも、できそうなことを考える

株式会社ユーグレナ

出雲 充Mitsuru Izumo

代表取締役社長

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ミドリムシとの衝撃的な出会い

17年前、大学一年生だった私は、貧困層向けの事業資金の融資を行っているグラミン銀行のインターンとして、バングラデシュを訪れました。

特に不自由なく育った私にとって、貧困や飢餓に苦しむ人が存在することは誰かが「解決しなくてはならないこと」でした。そのために自分ができることがあれば、人生を賭けてみたいと思っていたのです。ですから、世界最貧国の一つである同地において、どのような支援活動が行われているかを間近で見られることに大きな期待を抱いていました。

しかし、私は予想とまったく違う現状を目の当たりにしました。貧困層は食うや食わずの暮らしをしているのだろうと思っていたのですが、米と豆は大量にあり、価格も安く、最高級のスーパーでも米が1キロ40円くらい。食べることにはまったく困っていませんでした。問題なのは、米と豆しかないことだったのです。

よくカレーをかけて米を食べるのですが、野菜も肉も入っていないため、満腹にはなりますが栄養失調で抵抗力が弱くなります。風邪を引くとなかなか治りませんし、感染症にもかかりやすくなる。彼らに必要なのは「食糧」ではなく「栄養」でした。

その衝撃的な現実を見てから、私の目標は次第に「飢餓に苦しむ人を救うこと」から、「飢えに苦しむ人に栄養素を届けること」に変化していきました。

その後、私は入学した文学部から農学部へと転部し、専門的な知識を学びました。その中で考えていたのが、「どこかに仙豆のような食べ物はないか」ということでした。「仙豆」とは、漫画『ドラゴンボール』に登場する食べ物で、1粒で10日間は食べなくても済み、傷ついた体もあっという間に快復する魔法の豆です。

しかし、そんな食べ物はそうそう見つかりません。誰彼かまわず「仙豆のような食べ物を知らないか」と聞いていましたが、人間に必要な栄養素を満たせる食べ物にはまったく出会えませんでした。そして諦めかけた頃、後輩に何気なく仙豆の話をしたところ、こんな答えが返ってきました。

「ミドリムシならそれに近いんじゃないですか? 植物と動物の間の生き物ですから」

あの時の衝撃は今も忘れられません。私は狂喜乱舞しましたが、後輩はさらに驚くべき情報を教えてくれました。なんとミドリムシを食用に使う取り組みは、10年以上も前から日本に存在していたのです。しかも、ミドリムシは温暖化の原因である二酸化炭素を吸収するほか、光合成によって得たエネルギーを燃料にも転嫁できるとのことでした。

まさに地球の問題を一気に解決できるような夢の存在。それがミドリムシ(学名ユーグレナ)でした。しかし、それもすべては「培養できたら」という条件つきでした。ミドリムシは、量産が非常に難しい生き物だったのです。

21歳になっていた私は、その時に天命を知りました。「ほぼ絶対に不可能」と言われるミドリムシの培養を成功させる。大学の先生から「10年は覚悟した方がいい」と言われていましたので、成功するのは31歳として、次に事業を軌道に乗せるにはそれから数年はかかるでしょう。そこで「35歳で、ミドリムシとともに立つ」と決めたのです。

Profile

1980年、広島県生まれ。
2002年、東京大学農学部農業構造経営学専修卒業、同年株式会社東京三菱銀行に入行。
2005年、株式会社ユーグレナの代表取締役社長に就任。
趣味は音楽鑑賞と読書。特技はピアノ演奏。座右の銘は「昨日の不可能を今日可能にする」。

Contact

株式会社ユーグレナ

東京都港区芝5-33-1
http://euglena.jp/