空室活用はポストオリンピック社会に向けたリスクヘッジ

株式会社全国空室対策協議会 代表取締役社長 谷 正男

谷 正男Masao Tani

株式会社全国空室対策協議会

代表取締役社長

2016.06.13

賃貸・売買可能な空き家は460万戸

現在、全国には空き家が820万戸もあり、大きな社会問題となっています。

その改善を図るべく、2015年5月、「空き家対策特別措置法」が施行されました。この法律の骨子は、電気、水道、ガスなどの数字を現認し、明らかに住んでいないと判断できる危険な家屋は、行政代執行による強制撤去を可能とするというものです。

なぜ、このような法律が施行されたのかというと、老朽化が進行し、倒壊寸前になっている空き家が増え続けているからです。というのも、じつは、家屋が建っている土地は、更地に比べて固定資産税が最大6分の1になるという優遇措置を受けられます。そのため、実際には住んでいない古い家屋を「住んでいる」と言い張って放置する家主は多く、それに対して、これまでは、行政も手出しできなかったのです。こうした空き家は全国に320万戸ほどあり、同法の施行によって、空き家の解消・処分につながるのではないかと期待されています。

しかし、問題なのは、人口減少、老朽化、駅から遠いなど、さまざまな理由から借り手がつかない賃貸住宅429万戸と中古売買住宅31万戸、合わせて460万戸の賃貸・売買可能な空き家に関する対策が置き去りにされているということです。

これだけある空き家を、うまく活用しない手はありません。たとえば、本書にも登場する、定住が難しい人たちに空き家を提供する事業もその一つ。対象者はシングルマザーや外国人などです。彼らは固定収入がなかったり、生活文化が違うことからオーナーが入居を嫌がることが多く、なかなか賃貸住宅を借りられません。そのような人々に、空き家をシェアハウスなどとして利用してもらうというビジネスモデルです。そのほか、フリースペースとして時間貸しするというサービスも人気を集めています。

空き家を施設やサービスとして活用し、収益を得るというやり方は、まさに民間ならでは。法を整備する国にはない発想でしょう。

老朽化が進む中小ビル

ところで、空き家と同様に、空きビル・空室の増加も深刻です。しかし、こちらは、あまり問題視されていません。それどころか、現在、東京ではビルの空室率が低下してきているとさえいわれています。なぜでしょうか? それは、オフィスビルの空室率の統計の取り方に偏りがあるからです。

昨今、優遇税制などの措置により、中小企業の設備投資が伸び、人材採用にも積極性がみられます。人材を採用すれば、その分だけオフィスが手狭になり、新たなオフィスを借りる企業も増えます。

実際、有効求人倍率の伸びとともに、オフィスの空室率は減少しています。現在、日本全体の有効求人倍率は1・27倍で、東京は1.89倍といずれも高水準となっています(2015年12月末時点)。反比例するように東京でのオフィスの空室率は4・01%と以前よりもぐっと下がりました(2016年1月末時点)。圧倒的に人気なのは渋谷で、空室率2・46%。満室といってもよいほどです。これはベンチャー企業の多くが渋谷を好むからでしょう。

空室率が5%を切ると、オフィスの賃料は急激に上がり始める傾向があり、現在、東京のオフィス賃料は上昇し続けています。

ところで、この空室率とは何の統計かというと、東京の港区、新宿区、中央区、千代田
区、渋谷区という都心部5区内で、1フロアが100坪以上あるビルの空いている率を指しているのです。1フロア100坪というとかなり大きなビルで、全ビルの約11%程度にすぎません(アットオフィス調べ)。残りの89
%は100坪を下回る中小ビル。空室も非常に多いのですが、統計にはこれらのビルの空室率が反映されていないのです。

こうした中小ビルの多くは、バブル時代に竣工したものです。バブル景気の絶頂期、日経平均株価は3万8915円の最高値をつけました。そのとき、株式以外の投資先となったのが不動産です。特に街の八百屋さん、魚屋さんなどの地主に対して、銀行は「お金を貸すのでビルにして、その上に居住しませんか」という提案をしました。それにより、たくさんの中小ビルとオーナーが誕生したわけです。

しかし、それから約30年が経過。これらのビルは老朽化し、現在必要とされる設備や環境が整っていないため、たとえ賃料を下げようと、空室が埋まらなくなっているのです。

こうしたビルは全国に数多くあるのですが、あまり知られていません。


Profile

大手不動産仲介会社(取締役営業部長)を経て1998年、不動産ベンチャー企業を創業。3年間
で営業50名体制を築く。2000年、同社のマーケティング担当部門として「アットオフィス」を設立。2003年に顧客CTIシステム、2006年に物件CTIシステム「1DAYUPシステム」(特許申請)、2007年にメール物件紹介システム「ビルケンドットコム」などのシステムを開発。営業教育カリキュラムはのべ500名以上の受講実績がある。得意分野はシステム開発、営業教育、マーケティング。2012年、「全国空室対策協議会」を立ち上げ、空き家・空きビルを、医療や介護、育児、学童保育などが融合する「社会福祉モール」として活用するプロジェクト「リノビル計画」に注力する。

Contact

株式会社全国空室対策協議会

東京都世田谷区松原2-46-5 リューズビル3階
明大前駅 1分(自社ビル)
03-5329-5255(TEL)

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書籍
「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言」

日本社会が抱える課題の一つに空き家、空きビルなどがある。この課題解決に必要なのが発想の転換、アイデアである。人口が減少し、若者たちのワーキングスタイルが変わりつつある今、スペースの用途を単に住まいやオフィスに限定する従来型の発想では、本当の意味での課題解決には結びつかない。外国人や企業、シングルマザーなど入居困難者や介護、保育、クラウドソーシングなどといった用途で空きスペースを必要とする人が増えている現状を鑑み、自由な発想でスペースを活用していく事こそが解決の糸口となる。そして、こうした取り組みは空室問題の解決だけではなく、女性就労や子育て支援、医療、介護、インバウンドなど、一見空室とは関連性がないようにも思える様々な日本の課題を一括して解決する可能性を秘めている。そこで、本書では画期的な発想で空室問題の解決にあたる20社の実例や知見、ビジネスモデルを紹介する。

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