不動産を動産に―空きスペースの有効活用で、ライフスタイルがもっと自由に
株式会社エイチ 代表取締役社長 伏見 匡矩

株式会社エイチ

伏見 匡矩masanori hushimi

代表取締役社長

2016.04.12

スペースを循環させる インターネットサービス「エイチ」

私が理想としているのは、〝循環型社会〞。
空間や人材、資源といったリソースが同一の
使用者や場所に固定されることなく、流動的
に動き、効率的に回っていく社会モデルをつ
くりたいと考えています。現在の日本は、物
をつくっては壊し、GDPを上げるために、
ひたすら投資をするスタイルをとっています。
しかし、避けられない少子高齢化の流れの中
では、利益第一主義の考え方から離れる必要
があると考えています。

エイチも、そのような思いの中で誕生した
企業です。当社は、カフェの一角や会議室の一室など、あらゆる空きスペースの情報を集約して掲載し、ユーザーが簡単に予約できるインターネットサービス「eichiii(エイチ)」を提供しています。

「エイチ」を手がけるきっかけは、自分自身の悩みを解消するためでした。特定のオフィスを設けていない私は、ビジネスパートナーと軽く打ち合わせをしようと思ったときに、その場所に困ることが多かったのです。近場の喫茶店が満席で入れないことは日常茶飯事。社外秘の話をするときは個室が必要となりますが、貸し会議室は割高です。また、出先での空き時間に作業を進めようと思った際の場所を探すのにも、常に頭を悩ませていました。

そんなある日の午前中、偶然立ち寄った港区界隈のダイニングバーがガラガラだったことがあったのです。そのとき、閃きました。店舗は空いている場所を気軽に貸し出すことができ、ユーザーがそれをネットで気軽に予約できるサービスがあると便利だなと。たとえば、居酒屋の個室を打ち合わせ用のスペースとして貸し出してもいいし、広いフロアをコワーキングスペースとして提供してもいい。店側は空いているスペースを活用して利用料金を得られますし、ユーザー側は必要なときに必要な場所を借りられて、お互いにメリットを受けられます。これが「エイチ」のきっかけとなったアイデアです。

つまり、「エイチ」は、空いているスペースを別の用途に利用するという〝循環〞を目
的としたサービスなのです。さらには、このシステムに物のレンタルを組み込むことも想
定しています。会議で必要なプロジェクターやパソコンも貸し出すことができれば、ユー
ザーの利便性はさらに向上するからです。このように、空間や物が循環するサイクルをつ
くり出せることがこのサービスのキモといえるでしょう。

2016年1月末時点で、「エイチ」には東京都内を中心におよそ1000ヵ所が登録
されていますが、2016年6月までに2000ヵ所の登録を目標としています。また、
会員数も開始からおよそ1ヵ月半で4000人を突破。順調なペースで伸びています。

現在の課題としては、貸し出し側への認知不足があります。当社が提唱する〝スペースを分割してレンタルする〞という手法はこれまでにないスタイルですので、貸し出し側への周知が進まず、登録までのハードルが高いのです。そこで、SEO(検索エンジン最適化)に力を入れるとともに、電話などで地道な営業活動を行っています。一方で、大々的なプロモーション活動も展開中です。その一つが、イベント事業。国民的イベントを手がけるビジネスパートナーと手を組み、空きスペースを活用したイベントを積極的に行うことも視野に入れ、知名度の向上と、空きスペースを利用するという考え方の啓蒙をねらっています。

ほかに解消すべき課題としては、これまでとは違った客層が来店することによるセキュリティへの不安、不慮の事故に対する保険などがあるでしょう。これらの問題についても、解決策を提供すべく、進めているところです。


書籍「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言 」から掲載】


Profile

インターネットを通じて、飲食店や会議室などの空きスペースの貸し出しや借り受けを気軽に行える“スペースレンタル”システムを運営しています。代表は、ベビー用品やプロジェクター、カメラ、ドレスなどのレンタル事業を手がける株式会社ココロイロも同時に運営。空間と物が生み出す相乗効果を期待しています。その目指す未来は、“循環型”の社会。現在のように、利益を第一に投資を繰り返すだけでなく、空間や物を循環させることで、人々が豊かに暮らす社会です。空きスペースのレンタルという考え方は、空室問題の解消だけでなく、現在、日本が抱えているさまざまな問題解決のヒントにもなりそうです。

関連書籍

書籍
「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言」

日本社会が抱える課題の一つに空き家、空きビルなどがある。この課題解決に必要なのが発想の転換、アイデアである。人口が減少し、若者たちのワーキングスタイルが変わりつつある今、スペースの用途を単に住まいやオフィスに限定する従来型の発想では、本当の意味での課題解決には結びつかない。外国人や企業、シングルマザーなど入居困難者や介護、保育、クラウドソーシングなどといった用途で空きスペースを必要とする人が増えている現状を鑑み、自由な発想でスペースを活用していく事こそが解決の糸口となる。そして、こうした取り組みは空室問題の解決だけではなく、女性就労や子育て支援、医療、介護、インバウンドなど、一見空室とは関連性がないようにも思える様々な日本の課題を一括して解決する可能性を秘めている。そこで、本書では画期的な発想で空室問題の解決にあたる20社の実例や知見、ビジネスモデルを紹介する。

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