海外でこそ、強い信念を持って自分の足で動く

株式会社リッチメディア 代表取締役社長(CEO) 坂本 幸蔵

坂本 幸蔵Kozo Sakamoto

株式会社リッチメディア

代表取締役社長(CEO)

2015.04.24

初めての海外事業を新入社員に任せたワケ

2013年春、私はある決断をしました。リッチメディアとして初の海外進出先となるインドネシアの責任者に、新卒の新入社員を抜擢したのです。

リッチメディアは、美容と健康をメインに、Webマーケティング事業、O2O事業、メディアデザイン事業の三つを主力事業とする会社です。

このうちメディアデザイン事業では、女性の美肌をテーマにした美容ポータルサイト「スキンケア大学」を運営しています。ユーザーの口コミが中心の類似サイトはありますが、「スキンケア大学」では医師やビューティーアドバイザーといった美容・健康の有識者が、専門家の見地からスキンケアを中心に、肌・体・心におけるライフスタイルについてアドバイスを提供しています。

情報があふれ、何が正しい情報なのかを見極めるのが難しくなっている昨今、「確かな知識を持って商品を選びたい」と願うユーザーをサポートするのが、当サイトの目的です。インドネシアでの事業は、この「スキンケア大学」を海外展開しようというもの。日本のスキンケア商品に強い憧れを抱く東南アジアの女性たちに向けた情報発信は、きっと喜ばれると考えたのです。

当社にとって初めての海外事業を、まだ経験の浅い新入社員に任せることにしたのは、私自身が新人時代に、そうやって鍛えられたからです。新卒でサイバーエージェントの大阪支社に営業職として配属された私は、1年目にMVPをとりました。そして2年目には、なんと新設された子会社の役員を任されたのです。周りを見回せば、社長は入社6年目の中堅、7人の社員は全員新卒と、普通の会社では考えられないような人員配置でした。

その会社はSEO対策を主力事業に据えていたのですが、業界の中では最後発。厳しい状況の中、若さだけが取り柄の人員でもがき苦しみながらも、4年目には数億円の利益が出るところまで会社を成長させることができた。これは得難い経験でした。

仕事をするうえで、年齢や実績は関係ない。20代でも環境を与えれば伸びる人間はたくさんいる。もちろん失敗もするけれども、若いうちは失敗さえも糧になる。だから成長する可能性を持った人にこそ、重要な仕事をどんどん任せたほうがいい。これが私の考え方です。

私が人を見るときの基準は大きく五つあります。①夢や目標を持っていること、②最後までやり切る力があること、③真摯であること、④向上心があること、そして⑤チームワークを大切にしていることです。

上述の新入社員は、初めからこの五つすべてを備えていました。母子家庭で育った彼は、「自分が頑張ることで、母に恩返ししたい。そのためにも海外へ出て成功したい」という気持ちを強く抱いていました。彼の向上心や粘り強さは、母親への思いがあればこそだったのです。私も母子家庭で育ったので、気持ちはよくわかります。育った環境が似ているぶん、逆に彼には厳しく当たってしまうこともありましたが、入社前のインターン生のときに、私が設定したハードルを見事にクリアして、きちんと実績を残してくれました。新人をいきなり海外の新規事業の責任者に据えるのは、思い切った人事でしたが、社内の誰もが納得したうえでの抜擢でした。

女子学生からリアル「いいね!」を集める奇策

インドネシアに事務所を開設したのは2013年5月です。オフィスもなければ住むところも決まっていない。現地に何かコネクションがあるわけでもない。責任者に指名した新入社員以外にはスタッフもいない。それは、まったくのゼロスタートでした。

現地とは、最初のうちはスカイプを使って、2日に1回ぐらいの頻度で連絡を取っていましたが、彼から進捗状況を報告してもらうだけで、私からは具体的な指示は一切出しませんでした。私は彼に常々、「君にできるのは足を使うことだけ。自分の足で道を切り拓け」と言って聞かせていました。かつての私もそうだったように、新人の間はスキルも知識も経験もありません。あるのは足、つまり行動力だけです。そうであればその足で、ほかの人がやらないことをやることで頭角を現していくほかないのです。

私の言葉を受けて、彼はまず、現地のネットメディア関連の企業にアポイントを取り、情報収集を始めました。2〜3週間で20〜30社は回ったのではないでしょうか。

次に彼は、大学のキャンパスを訪ねて、女子学生たちに直接声をかけていきました。「スキンケア大学」はFacebookと連動しているので、彼女たちにFacebookページをい見てもらながらコンテンツについての感想や意見を聞き、賛同してくれた人にその場で「いいね!」を押してもらうようにしたのです。ネットメディア業界への情報収集の結果、インドネシアの若者たちの間ではソーシャルメディアが浸透していることがわかったので、これを有効に活用することにしたわけです。

結果は大当たりでした。キャンパスで声をかけた若い女性たちがインフルエンサー(ほかの消費者に大きな影響を与える人)となることで「いいね!」の輪が広がり、5ヵ月間で「いいね!」が100万弱に達したのです。現在のところ、インドネシアの美容系ポータルサイトでは、トップの支持を集めているのではないでしょうか。

成功の理由は、いうまでもなく抜擢された新入社員が「このサービスを成功させたい」という強い信念を持って、自分の足で動いたことです。キャンパスで直接女子学生に声をかけることでファンを獲得していくという方法は、その気になれば誰でもできるものです。けれども、実際には誰もやろうとしない。誰でもできるのに誰もやろうとしないことに彼が地道に取り組んだからこそ、成功したのです。

強い信念を持って自分の足で動くこと。その大切さは、国内でも、海外でも変わりませんが、とりわけ海外でビジネスをするときに、重要になってくる原理原則だと思います。海外では、国内で通用していたスキルや知識、ノウハウがまったく通用しない場面に数多く直面することになります。だからこそ、自分の足で動きながら、国やマーケットの特性を知り、消費者が求めているものを掴み、お客様を開拓していくしかありません。

海外で働くときに求められるのは、MBAホルダーのように頭の中で美しいビジネスプランを描く力ではなく、泥臭い行動力なのです。

坂本 幸蔵

Profile

1982年大阪府生まれ。
摂南大学卒業後、2006年にサイバーエージェントに新卒で入社。大阪支社に勤務。関西地域での営業実績を評価され、同年10月と翌年4月に同社初の通期連続新人賞を受賞。その後、2007年5月に子会社の株式会社CAテクノロジー取締役に同社最年少で就任。常務取締役を経て、2010年5月に退社。同年6月に独立、ネットサービスやメディア制作などの株式会社リッチメディアを設立して、代表取締役社長に就任、現在に至る。最近では医師が監修するメディア「スキンケア大学」に経営投資し、「アイディアと情熱で夢を叶える」会社を実現すべく、奮闘中。

Contact

株式会社リッチメディア

〒160-0023
東京都新宿区西新宿7-20-1 住友不動産西新宿ビル24F
TEL : 03-5338-0238
URL : http://www.rich.co.jp/

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