とらえ方次第で、すべては価値あるものになる

株式会社ファーストキャリア 代表取締役社長 若鍋 孝司

若鍋 孝司Koji Wakanabe

株式会社ファーストキャリア

代表取締役社長

2015.10.06

会社員時代に作った「ファーストキャリア」

大学の卒業アルバムの一言欄に、私はこう記しています。「代表取締役社長」。意味不明もいいところですね。若き自分に「他に書くことはなかったのか!」とつっこみたくなりますが、とにかく将来「社長になりたい」という夢だけはあったように思います。

しかし、日本酒などの醸造について学ぶ珍しい学科にいた私は、新卒時に大手食品会社に就職しました。当然、研究職として採用されたものだと思っていたのですが、配属されたのは、なんと人事部。「なぜ自分が?」とも思いましたが、「せっかく配属されたのだから!」と気持ちを切り替え、社員研修や福利厚生などの業務をこなしていきました。

すると、いくぶん仕事ができたためか、3年目に上司から「当社はなぜ離職率が高いかを調べて、対策を考えなさい」という命令を受けました。確かに、競合の食品大手では辞める人間などほとんどいないのですが、自社は入社5年で15%近くの社員が退職していました。しかも、東大卒など優秀な人材からいなくなっていたのです。

私が調査したところ、入社時からの人材育成システムが、まったく整っていなかったことが大きな原因でした。採用、研修、配置、現場教育などの担当者がすべてバラバラで、言うことに一貫性がない。なかにはルーティンワークをこなすだけの上司や先輩達もおり、「この会社にいて大丈夫か?」と思うことが当然な状況だったのです。

そこで、私は「ファーストキャリア」プロジェクトを立ち上げました。入社から3年で一人前に育てる制度を構築し、そもそも自社に求められる「一人前」とは何か、そこに3年で到達させるにはどんな仕組みが必要か、それをどう実施するか、といった内容を詳細にまとめたプランを実践しました。

このプランが食品大手の集まりや、研修会社などからも高く評価されたことで、自分は「この分野に求められている人間であること」を実感しました。その後、ある研修会社へ転職して5年ほど勤めた後、30歳で起業しました。「30歳までに社長になりたい」と思っていたので、なんとかそれは実現した形です。

言うまでもなく、社名は自分が作ったプロジェクト名から取りました。主な事業も、入社3年までの教育・研修制度の策定、それを導入・実施するお手伝いです。新入社員の教育・研修に特化した事業を展開しているのは、おそらく当社だけでしょう。

歩けなくなった自分のとらえ方を転換

当社では「人の成長を偶発から必然に変える」というミッションを掲げています。たまたまいい会社や上司に恵まれたから成長できたという形ではなく、どんな会社であれ「成長すべくして成長した」という仕組みを提供したいのです。

それは決して難しいことではありません。「ビリーフチェンジ」さえうまくいけば、必ず皆さんも成長できます。これは心理学用語で「思い込みの書き換え」などと訳されますが、物事の見方・考え方を変えてしまうこととも言い換えられます。

若い頃はとかく頭が固く、自分の価値観に合致しないものを排除してしまいがちです。そのため、会社や仕事が気に入らないと、「こんな仕事に意味はない」「自分には合わない」「面白くない」などとすぐに排除してしまいます。

しかし、それは思い込みに過ぎません。物事のとらえ方の幅が狭いから、意味がなさそうに見えるだけ、合わないように感じるだけです。若い皆さんにとっては、すべての仕事に意味があります。「面白くない」と感じたことも、自分の見方を変えれば面白くできます。すべてはとらえ方の問題でしかないのです。

こういったとらえ方の転換は、本来は上司から教わったり、同期の友人たちと話し合う中で気づくことができれば、なお理想的でしょう。しかし、対面では本音で話ができない/近い考え方の人としか話さないのが昨今の若手社員の傾向ですので、「研修」という形式で学んだ方が腑に落ちることが多いのです。

実際、当社の研修で「仕事にはそういう意味があったのか!」と気づけた若手社員たちは、見ている景色が一変し、仕事に対する姿勢がまるで変わるようです。「ビリーフチェンジ」は、実は私の実体験に基づいたコンセプトです。

私は17歳の時に大事故に遭い、それ以来車イスの生活を送っています。当時、医師からは「将来的にも、ほとんど何もできない」と宣告され、養護施設での暮らしを薦められました。リハビリ病棟では、患者さんの一番上のレベルの行動として「シーツ交換が自分でできる」であったと言えば、私がいかに深刻な状況だったか分かるでしょう。

当然のように、私は自暴自棄になっていました。周囲の人間は「生きているだけで価値がある」「命拾いしたね」などと慰めますが、私本人としては「カロリーを消費しているだけの存在」としか思えませんでした。

ベッドから車イスに移れただけで賞賛されるような世界。「アホらしい」と思うと同時に、もはや誰からも期待されない存在になった自分が悲しくて仕方ありませんでした。

しかし、ある時に気づきました。「これだけ注目されるのは、実はチャンスじゃないか?」。子どもたちは車イスの人間を見ると、興味深そうに指をさしたりします。そういうキャラクターになったのは、大きな個性が一つ増えただけだと考えたのです。まさしく自分の中の「ビリーフチェンジ」でした。

実際、大学に入っても、まともに面白がって勉強して好成績なのは自分だけ。「なんだ、歩けないだけじゃん、俺。他は何でもできる」。そんな確信を深め、他者からも「ただ歩けないだけの人」と思われる自分を目指そうと決心しました。そして、「できない」「やらない」という言葉は絶対に言わないと決めたのです。

だからこそ、最初の会社で研究職ではなく人事に配属された時も、すぐに気持ちを転換することができました。自分は「ノー」と言った瞬間に、人から必要とされなくなる。与えられた仕事を、しっかりやるしかないじゃないかと思ったからです。

そうして、がむしゃらに目の前の仕事をこなしていく中で実感しました。「人から期待してもらえるのは、なんて尊いことなんだ」と。仕事の面白さ云々ではありません。人の役に立ち、喜んでもらえる。「頼むぞ」と言ってもらえる。それだけで、その仕事は十分やるに値します。成長の糧となります。仕事とは、そういうものなのです。

若鍋 孝司

Profile

株式会社ニチレイ人事部にて制度改革・研修業務に従事。株式会社セルムを経て、2006年に株式会社ファーストキャリアを設立、代表取締役社長に就任。企業における本質的な若手人材育成の実現を推進している。著書に、『20代でファーストキャリアを築ける人、築けない人』『草食系男子×肉食系女子、どちらが育つか?』(ともにファーストプレス)がある。

Contact

株式会社ファーストキャリア

東京都渋谷区恵比寿1-19-19 恵比寿ビジネスタワー7F
http://www.firstcareer.co.jp

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