人との出会いから生まれるビジネスは楽しい

HUGS Co., Ltd. 代表取締役 黒川 治郎

黒川 治郎Jiro Kurokawa

HUGS Co., Ltd.

代表取締役

2015.04.26

実は住んでよし、仕事をしてよしのカンボジア

私が代表を務めているHUGSは、カンボジアで二つの事業に取り組んでいます。一つは農地開発と農場経営。そしてもう一つは日本企業へのカンボジア進出支援です。私は日本で農業の経験はもちろん、勉強をしたこともなく、カンボジアに来るまでは、まさか自分が農業に携わることになるとは思ってもいませんでした。

初めてカンボジアを訪れたのは2010年7月、31歳のときです。私は27歳のときに起業し、当時は日本で焼肉店やゴルフスクールといったフランチャイズビジネスの支援事業などを行っていました。しかし日本では、資金調達の課題を抱えているベンチャー企業を、金融機関が支援する仕組みが整っていないなど、国内で事業を展開することにやりにくさを感じていました。そうしたこともあり「このまま国内にとどまっていても面白くない。だったらやっぱり海外に出よう」と決めたのです。

実は私の生まれは、当時父が駐在員として赴任していたイラクのバグダッドです。小学生のときには、やはり父の仕事の関係で半年間ほどシンガポールに住み、19歳のときにはサッカー選手になることを目指して10ヵ月ほどイギリスにサッカー留学をしたこともあります。そのため、日本の事業をたたんで海外に飛び出すことに対しては、ほとんど抵抗感はありませんでした。むしろ「いずれは自分も海外で会社を経営したい」という気持ちのほうが強かったくらいです。

海外に出ることは決めたものの、大切なのはどこの国に行くかということ。私は自分の居場所を見定めるために、アジアやヨーロッパ、アフリカのさまざまな国を訪ねました。そのときの訪問先の一つにカンボジアがあったのですが、直感的に「ここだ」と思ったんです。

カンボジアの最大の魅力は人びとの笑顔です。いつどこで誰と会っても、屈託のない、ニコニコとした笑顔が返ってきます。またビジネスでいえば、外資系企業でも現地企業と合弁を組むことなく単独で法人を設立することが可能であり、利益の海外持ち出しも無制限となっています。街でもUSドルが9割方は通用します。ビザの取得も容易であり、そして親日的です。実は住んでよし、仕事をしてよしの環境なのです。

そうと知った私は、カンボジアに訪問した時点で、すぐに移住を決断。日本で新築したばかりの一戸建てを無事売却すると同時に、2011年2月に家族と一緒に移り住んできました。

地雷を撤去しながら農地を開拓し、雇用を増やす

カンボジアという国の魅力に惹きつけられて移住したものの、何の仕事をするかはノープランだった私は、さまざまなことに取り組むうちに見つけていくことにしました。

現地で知り合った仲間と協力して最初に行ったのは、孤児院の子どもたち55人を日本に招待する活動です。けれども、そのときに感じたのは、寄付やボランティアに頼った活動には限界があるということでした。というのも、カンボジアの人たちは寄付に慣れきってしまっていて、与えられることが当たり前のようになっています。どうせビジネスをするのなら、彼らの自立につながるようなことをしたい。心からそう思いました。

そのときに浮かんだのが農業でした。元々カンボジアは農業国で、約8割もの人が農業に就いています。しかし農地の開発が遅れ、労働生産性も低いため、農業国でありながら農業後進国でもあります。そこで私たちが携わることでカンボジアの農業を活性化し、農家の経済的自立に貢献できないものだろうかと考えたのです。当時メンバーの中には、農業を経験したことがある者は誰一人いなかったのですが、長年農業に取り組んでいる現地の方と、ご縁でつながりができたのが大きかった。この人たちの役に立ちたいと思ったのです。

現在HUGSでは、カンボジアのシェムリアップからタイ国境近くの一帯で、約1000ヘクタールの農地を開発し、農業のほか養豚や養鶏も手がけています。

1000ヘクタールの農地の開発は、自分たちで農業用の重機を購入して、開墾するところから始めました。そこでは主にキャッサバという芋を栽培して、タイやベトナムに輸出しています。キャッサバというと日本では馴染みがありませんが、芋の中では世界的にはジャガイモに次いで生産量が多いのです。そのほかに日本向けとしてショウガやゴマの栽培を検討しています。

実はカンボジア国内には、カンボジア内戦時に埋設された地雷がまだ500万発残っているといわれています。そこで農業によって得た収益の一部を、地雷撤去を行っている民間団体に活動費として提供しています。そしてこの民間団体が地雷を撤去した土地を、私たちが新たに開墾してキャッサバ用の農地に転換し、さらにその農地で働いてもらう人を現地で雇用することで貧困層の生活向上を実現させるというのが、私たちが描いているビジネスのスキームです。

1000ヘクタールの農地を開発するための資金については、日本の企業約30社に投資をしていただきました。だから私の役割は、カンボジアの農家の人のためにもそしてサポートしてくださっている日本の企業の方のためにも、この事業をやり抜くことだと思っています。

今にして思えば、私たちの長所は専門性がないところだと思っています。まず人との出会いがあって、その人に共鳴して、その人のために何ができるか、その人と一緒に何ができるかを考えます。そしてビジネスプランを立て、一度事業を動かし始めたらやり遂げる。そういうスタイルのほうがやりがいも感じられるし、何より楽しいんですよね。

黒川 治郎

Profile

1979年イラク・バグダッド生まれ日本育ち。
学生時代は、プロサッカー選手を目指して、イギリスに留学する。社会人になり一部上場企業のトップセールスマンとして活躍したあと、27歳で起業し、東京都内で飲食店など複数店を経営する。著しい発展を遂げるアジアに目を向け、2010年にカンボジアを訪問。同年にカンボジア現地法人HUGSを共同代表らとともに立ち上げた。2011年には家族とともにカンボジアへ移住。

1000ヘクタールの農地を経営するほか、プノンペンの中心に10店舗以上の日本の店が集まるJapanStreetを作るなどさまざまな事業を展開。現在までに300名を超える経営者をカンボジアへ導き、日本企業のカンボジア進出支援も積極的に行っている。

Contact

HUGS Co., Ltd.

B-RAY TOWER 5th fl oor, No166, Norodom Blvd,Tonle Bassac, Chamkarmon, Phnom Penh,Cambodia
EMAIL : info@hugs-int.com
URL : http://hugs-int.com/

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