廃墟化が進む団地を高齢者住宅に転用 独自のインフラ整備で、一億総活躍社会を実現
株式会社日本生科学研究所 代表取締役社長 青木 勇

株式会社日本生科学研究所

青木 勇Isamu Aoki

代表取締役社長

2016.04.13

慣れ親しんだ地域で、いつまでもいきいきと暮らせる社会

日本生科学研究所は、「日生薬局」をはじめ、「日生保育園ひびき」や在宅介護サービス、学校給食の食材卸し、住まいなど、医療・介護・福祉・生活支援・住まいに関するサービスをトータルに提供する企業です。そして、これらの事業と連携し、1984年から「健康・安心・絆ライフラインの創造」というインフラ基盤整備を目指しています。

具体的には、医療・介護・福祉・生活支援・住まいの5つの要素をつなぐことで、地域で生まれ育ち、歳を重ねた人々が、住み慣れた街で最期を迎えるまで、暮らし続けられるようなサポート体制の実現が目標です。

2012年、厚生労働省も「地域包括ケアシステム」を提言していますが、これは私たちが目指す社会像と一致します。厚生労働省の言葉を借りると、「地域包括ケアシステム」とは、「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進」すること。

それは、地域住民の力を借りながら、ときには高齢者が地域のために力を貸し、単純に寿命を延ばすだけでなく、住み慣れた地域で自分らしくいきいきと生きがいを持って暮らせるような社会です。地域全体が病院で、道路が病院の廊下、サービス付き高齢者向け住宅がナースステーション、そして、公民館がコミュニケーションの場となり、0歳から高齢者までが相乗効果を出しながら暮らせる仕組みづくりを実現しているのです。

こうした環境整備は、これからの日本にとって急務です。ご承知のとおり、日本は少子高齢社会に突入しており、社会保障費も激増。すでに行き詰まりを見せ始めています。さらに、2025年までには、団塊の世代のほぼすべての人口が75歳に到達して、さらに膨大な高齢者の社会保障費がかかるようになります。そうなると、日本の財政は確実に危機に陥るでしょう。こうした状態を未然に防ぐためにも、医療も介護も予防・維持・改善型サービスを実施し、元気で長生きできる人を増やすことが重要です。少子化と高齢化は車の両輪ととらえ、一億総活躍社会を実現することが日本の財政危機を防ぐ一番の策と考えています。

「地域包括ケアシステム」で社会保障費を7桁削減

私たちが目指す「健康・安心・絆ライフライン」「地域包括ケアシステム」としてのモデルを埼玉県の和光市で実践しています。

同地では当社が和光市からの委託を受け、「和光市新倉高齢者福祉センター」と「和光市北地域包括支援センター」を運営しています。前者は、〝介護予防小規模多機能型居宅介護〞と〝老人福祉センター的機能〞を担い、〝介護・予防〞を主目的としています。一方後者は、高齢者・障害者・子育てなど、トータルな支援が目的です。2012年には天皇皇后両陛下の行幸啓を賜りました。

くわえて、同地では、サービス付き高齢者向け住宅「日生オアシス和光」も運営。こちらは、施設内に通所介護、訪問介護、居宅介護支援、定期巡回、診療所、調剤薬局、配食サービスなどのさまざまな機能を持つ高齢者の住まいです。

2009年には、国土交通省による「高齢者居住安定化モデル」にも選定され、安倍内閣総理大臣をはじめ、塩崎厚生労働大臣や三浦老健局長、アセアン・日本社会保障ハイレベル会合の13ヵ国の方々なども視察に来られています。

高齢者の健康寿命の延長を目指すこれらの施設では、要介護度が高レベルだった人々が
どんどん改善するケースが増えています。要介護度3だった方が介助を不要とするまでに改善し、地域の支援事業に参加。さらには、今度は自らがリーダーとなって支援することで、毎日の生活に生きがいを持つ人も多数現れるようになりました。若い頃に植木屋をしていた人は庭を整え、元大工は椅子の綻びを修復する先生になり、スタッフや利用者に手を貸してくれるといった具合です。

こうしてやりがいを得た高齢者の人生は充実し、さらにいきいきと、健康で充足した暮らしを送れるようになります。その結果、和光市北エリアでは、2014年には17人分の介護費用を9ヵ月で270万円削減することができました。

この和光市での取り組みは全国でも注目を浴びていて、天皇陛下をはじめ、多くの施設や自治体の方が視察にみえています。また、当社でも、研修会を開くなどして、ノウハウをコーチングしています。介護事業者、サービス提供責任者、ケアマネジャー、包括支援センターの職員、行政の担当者など、セグメントを細かく分け、段階別にトレーニングを施していったところ、全国で多大な成果を得ることができました。

たとえば、介護保険料の上昇率が28・8%と全国ワースト1だった自治体が、当社の研修を受けた次の期には、上昇率を4・6%にまで抑えることに成功しました。これは、全国でもトップの成績。また、東京都内のある自治体でも、他区の介護保険料が軒並み上昇する中、唯一その区だけ保険料を抑えることができたというケースもあります。

こうした実例からもわかるように、「地域包括ケアシステム」というのは、高齢者に活力を与え、介護保険料削減に大きな効果をもたらします。これを全国に拡大していけば、どれだけ効果が上がるのか計り知れません。


Profile

2016年に創業50周年を迎える給食事業を展開する「日本生科学研究所」は、学校給食食材の卸売りを行う「株式会社給食普及会」としてスタート。ある研修をきっかけに、「人の輪」を大切にする理念を確立し、1983年頃から、少子高齢化社会への対応を開始。医療分野として、調剤薬局の「日生薬局」を開業、日本生科学研究所を設立しました。その後、介護分野サービスの提供を開始し、給食普及会と合併。医療・介護・福祉・住まいの総合企業として成長してきました。2011年には、国土交通省のモデル事業として第一号の住まいを運営。次いで2014年には、UR都市機構と協力し、入居者の激減した団地をサービス付き高齢者向け住宅に改装。管理・運営しています。今後も、空室を利用し、団地全体をサービス付き高齢者向け住宅ととらえる地域包括ケアを展開。医療・介護・予防・保育・生活支援・住まいなどの地域課題の解決に尽力していきます。

関連書籍

書籍
「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言」

日本社会が抱える課題の一つに空き家、空きビルなどがある。この課題解決に必要なのが発想の転換、アイデアである。人口が減少し、若者たちのワーキングスタイルが変わりつつある今、スペースの用途を単に住まいやオフィスに限定する従来型の発想では、本当の意味での課題解決には結びつかない。外国人や企業、シングルマザーなど入居困難者や介護、保育、クラウドソーシングなどといった用途で空きスペースを必要とする人が増えている現状を鑑み、自由な発想でスペースを活用していく事こそが解決の糸口となる。そして、こうした取り組みは空室問題の解決だけではなく、女性就労や子育て支援、医療、介護、インバウンドなど、一見空室とは関連性がないようにも思える様々な日本の課題を一括して解決する可能性を秘めている。そこで、本書では画期的な発想で空室問題の解決にあたる20社の実例や知見、ビジネスモデルを紹介する。

ご購入はこちら

週間アクセスランキング