リーゼントヘアでソーシャル・チェンジを目指せ
マイクロソフト シンガポール シニアマネージャー 岡田 兵吾

マイクロソフト シンガポール

岡田 兵吾Hyogo Okada

シニアマネージャー

2015.06.05

たった1人でも世界は変えられる

ヘアスタイルをリーゼントにするようになったのは、就職活動を始めた時です。映画とハードボイルドを愛するロン毛青年で、夢は国際ジャーナリストであった。長髪を切っても、反骨精神を忘れたくなかった。それから20年、どの会社でもこのスタイルを貫かせてもらえたことを感謝しています。

子どもの頃から海外には強い憧れがありました。洋画や「ベストヒットUSA」が大好きでしたし、海外に出たジャーナリストの本なども好んで読んでいました。大学に入ると、新歓コンパで帰国子女の女の子たちが流暢な英語で楽しく会話をしていて衝撃を受けます。自分も英語を学びたいと、ESSに入部。すると、先輩がインド旅行から帰ってきて「インドなんて行けるのか!すごい!」と驚き、ますます海外に出たいという想いが強くなりました。

最初に海外に出たのは、大学1年生の夏です。入学祝いなどをつぎ込み鑑真号という船で上海に渡ってバックパッカーをしました。初めての海外旅行で一気に自分の世界が開けた気がしました。2年生に上がる前の春休みには渡米し、長距離バスのグレイハウンドでロサンゼルスからニューヨークまで横断します。

大学4年生の時に、交換留学制度を使ってアメリカの大学に留学。日本では工学部でしたが、留学中は「国際関係学」と「宗教学」のダブルメジャーを専攻。またキリスト教系の仲間たちと週2回、障害者やホームレスのための家作り、炊き出しのボランティアに精を出しました。

そんなある日、お世話をした障がい者の方が、出ない声を振り絞って必死で感謝の言葉を述べてくれました。彼はアメリカ人だけど障害のせいできちんと英語が話せない、それでも感謝の心は私に伝わったのです。英語は大事です。言葉はすごく大事です。でもそれだけじゃない、言葉が拙くても人は伝え合うことができるのだと気づかせてくれました。

アラバマでハリケーン災害があった時は、復興支援ボランティアとして駆けつけました。そこで公民権運動の母、ローザ・パークスのスピーチを聞くという幸運に恵まれます。この小さな女性が世界を変えたのだ、彼女の勇気がマルコムXやキング牧師を動かしたのだと思うと感無量でした。そして、彼女の言うとおり「One person can change the world」なんだと思いました。

会場ではキング牧師夫人をはじめ、皆が「リーン・オン・ミー」を歌いました。自分よりも大きな黒人が涙をぼろぼろ流します。その体験すべてが、ストレートに魂を打ちました。そうだ、皆で世界を変えよう。社ソーシャル・チェンジ会変革のために、自分はジャーナリストを目指そう、と思ったのです。この集会で私はCNNから取材され、その映像は全米に流れて、私は一躍時の人となりました。

1年間の留学を終え帰国し、自分はこれだけの経験をしてきたのだから必ずジャーナリストになれると信じていましたが、見事玉砕!夢破れました。激しい失意の中、留学中に受けたアドバイスを思い出しました。「ボランティアを続けたいと思っているなら、お金を集める仕組みを作れる人になることが先決だ」と。コンサルタントは「企業の医者」。

アクセンチュアにて「コンサルタントとして社会変革」を新たな決意としました。アクセンチュアでは海外派遣プログラムの1期生となり、アメリカでグローバルなチームでコンサルティングを経験しました。帰国後、やはり海外に行きたいという思いが募り、海外就職を目指すもなかなか決まらない。やっとのことで日系企業のベルギー支店の職が内定しました。しかしその直後、その会社からベルギー支店閉鎖の知らせが届き、ふたたび海外への道は閉ざされたと思ったのです。そこに、ニューヨークで転職活動をしていた時のエージェントから「シンガポールはどう?」と打診されます。

当時は明るい南国は性に合わないと思ったのですが、マイクロソフトがゲーム機のXboxをローンチし、日の丸家電と今後競合すると騒がれていた頃に、このXboxのローンチに関われる仕事でした。上司となる女性はスタンフォード大学で学んだ台湾人女性で、彼女の下で勉強できるのも魅力的に感じ、シンガポールへの転職・移住を決めました。

シンガポールに来てアジアの醍醐味を知りました。ヨーロッパはEUという経済圏がまとまっているし、アメリカも個性的な州が集まっていてもやはりUSという集合体です。アジアの場合は、国ごとに文化、宗教、言語、人種、通貨すべてばらばら。市況もどんどん変わる。欧米を経験している人でも手こずる、ユニークなマーケットです。

最小の力で最大のインパクトを

マイクロソフトには「世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を最大限に引き出すためのお手伝いをする」という企業理念があります。そして常に「働きがいのある会社」ランキングでナンバーワンとなることを目指しています。

しかし、シンガポールの人気就職先ランキングで日系企業の名前は出てきません。日本的な思考のリーダーシップがここでは通用しないからでしょう。私自身、「仕事が優先でプライベートは二の次」という日本的な感覚を共有できず苦労しました。私が残業するような上司でいては、ローカルの部下は誰もついてこないのです。

海外で働く時には、次のような感覚が必要です。

(1)仕事だけでなく、家族・趣味・ボランティアの時間を大切にする者が偉い。(2)最小の努力で最大のインパクトを起こした者が偉い。(3)部下が残業するほど大量に仕事を与えた上司は無能。(4)やるべき仕事が終わればさっさと帰宅。(5)労働時間は自由にしてよいが、着任時に「Job Description」(職務記述書)で合意した成果は必ず出さないとクビ。(6)結果が出せず、職を替えることになっても問題なし。転職を活かしキャリアを最大化する。

日本で働くのとは大きなギャップがありますが、良し悪しは自分の判断です。今では私も、家族と過ごしたり友達と遊ぶ時間を大切にしています。ボランティアもしますし、仕事はできるだけ素早く、最小限の労力と時間で最大のインパクトを出すことを心がけています。

マイクロソフトに入ってから、リーダーとしてステップアップしていくには国際的な知識と資格が必要だと考えるようになりました。そこで、世界トップ10に入る評価を受けているスペインIEビジネススクールに通い、エグゼクティブMBAを取得しました。

日本人は資格よりも、現場での経験を評価する。アジアの新興国は歴史も浅いためマネージャークラスでも大学を出ていない人もいる。彼らが必要な標準的な知識を学んで取得するのが、MBAなどの資格です。自分もローカルの人間を部下として使うにあたり、そうした標準プロトコルが絶対に必要だと感じました。

エグゼクティブMBAは、マネージャークラスの人間がさらに上の役職を狙うために通うプログラムなので、スイス銀行のグローバルマーケティングのトップや、大手企業のCFO、ヘッジファンドの人間など、年齢もキャリアも多様でかつ優秀な人たちに出会えました。MBAに通わなかったら出会えなかった人たちです。

こうしたクラスメイトたちに触発され、さらにグローバルな視点を広げるために、デロイトコンサルティング東南アジアに転職し、アジア全域で日系企業の海外進出をお手伝いすることとなりました。

2年ばかりするとマイクロソフトの以前の上司から、アジア全域のオンラインビジネスの立ち上げを手伝ってほしいと声をかけられました。デロイトで日本企業のお手伝いをすることにやりがいを感じていたので、最初は戻る気はなかったのですが、彼が熱い志を持つ素晴らしい上司だったので、もう一度一緒に働きたいと思い、戻ってきたのです。

海外で働く時に語学はもちろん必要だけど、それよりも重要なのはパッション、伝えたいという気持ち、自分は何をしたいのかという想いそのものです。

まずは海外へ出て、多様性を尊重し受け入れるということを肌で感じてほしい。

Step out of you comfort zone!(居心地のよい場所から飛び出せ)です。

留学はとてもよい機会です。特にアジアに留学すれば、シンガポール人やフィリピン人などのアジア人たちがいかに優秀か思い知ることができます。圧倒的な悔しさは、きっと自分を伸ばすきっかけになるでしょう。

私自身は、最近は日本のグローバル化に貢献できることは何でも取り組むようにしています。ソーシャル・チェンジをしたい、世の中を変えたいと言い続けてきたら、想いを同じくする人たちと次々と出会えるようになりました。彼らと力を合わせて、より良い社会を目指す変革を起こしていきたいと思っています。

STAY GOLD!

岡田 兵吾

インタビュアーの目線

ネット上で見る華麗すぎるキャリアと、〝リーゼントマネジャー〞という称号、その風貌から、どんな強面なのかと思ってお目にかかってみたら、同僚に気さくに声をかけながら、オフィスをくまなく案内してくれる、気遣いとサービス精神の塊のような方でした。仕事もプライベートも高次元なバランスで謳歌している姿が本当に格好いいと思います。

書籍「世界を動かすアブローダーズ ~ 日本を飛び出し、海外で活躍するビジネスパーソンたち 」から掲載】


Profile

同志社大学工学部卒業後、アクセンチュア(日本、米国)、デロイトコンサルティング(シンガポール)、マイクロソフト(シンガポール)のグローバル企業3社で19年間、業務・ITコンサルタントとしてシンガポール・日本・アメリカをベースに活躍。
シンガポール移住12年目。永住権保持者。現職マイクロソフトにおいては、CSR(社会事業)委員、組織・文化改革リードも兼任。人生目標『ソーシャル・チェンジ』を目指し、人材育成支援、貧困層ボランティア、NPO向け経営支援に従事。世界トップビジネススクールIEエグゼクティブMBA取得、同アルムナイ・シンガポール支部初代会長。シンガポールドラッカー学会理事。シンガポール和僑会理事。ダイヤモンド・オンラインにて『STAY GOLD! リーゼントマネジャー岡田兵吾の「シンガポール浪花節日記」』連載中。

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書籍
「世界を動かすアブローダーズ ~ 日本を飛び出し、海外で活躍するビジネスパーソンたち」

日本の国内だけで働くこともいいけれど…
一度きりの人生は、海外へ目を向け、自分の可能性と仕事の幅を拡げよう!

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ウェブサイト:http://www.abroaders.jp/

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