アジアで自分たちが提供できる価値を見極めたい

株式会社エー・ピーカンパニー 代表取締役社長 米山 久

米山 久Hisashi Yoneyama

株式会社エー・ピーカンパニー

代表取締役社長

2015.04.23

シンガポールの店を繁盛させるのは、難しくない

私たちエー・ピーカンパニーは、2012年10月にシンガポールで居酒屋「塚田農場」を初出店し、現在では現地で3店舗を展開しています。

年間40〜50店舗のペースで出店を続けている日本国内では、遅かれ早かれ、飽和状態となることは予想がつきますので、海外出店はその打開策の一手といえます。まだまだ試験的段階といったところですが、今は、開店と同時に行列ができる盛況ぶりで、滑り出しは上々です。とはいえ、アジアで日本食がブームとなる中、シンガポールに出した店を繁盛させること自体は、実はさほど難しくはありません。問題は、いかに持続性のある、本質的な価値を生み出していけるかということです。

私が危惧しているのは、昨今の東南アジアでは、現地のマーケティングに関するノウハウは豊富でも、肝心の食に関する知見がまったくない人たちが、日本食レストランや居酒屋を次々と立ち上げていることです。今なら和食の物珍しさもあって、それなりに繁盛するとしても、いずれは現地の人たちから飽きられてしまうのは目に見えています。日本食文化がようやく海外でも一般化しようとしているのに、それは残念なことです。私が海外出店を決めたもう一つの理由は、こうした現状を変えたいという気持ちもありました。

では、シンガポールにあるエー・ピーカンパニーと同業他社との違いは何かと問われれば、海外ではまだ私たちらしさを出し切れていないのも事実。国内店舗と同じ内装、接客レベルの高さ、美味しい料理に関しては自負していますが、エー・ピーカンパニーとしての本質的な価値を提供できているとは、まだ思えないのです。

生産者と外食産業を直結させることで実現した第1次産業の活性化

エー・ピーカンパニーの主力業態である「塚田農場」は、宮崎産地鶏を使ったメニューを中心にした居酒屋です。競合他社とのいちばんの違いは、多くの会社が問屋から食材を仕入れているのに対し、当社は自社養鶏場や提携農家で育った地鶏を、問屋を介さずに直接購入している点です。いわば、川上の生産者と川下の外食産業を直結させたビジネスモデルだといえます。

これにより、〝高品質低価格〞な商品・サービスの提供が可能になりました。今日の外食産業は、食材にこだわり、職人が丹精を込めて調理する〝高品質高価格〞の店と、海外から安い食材を仕入れるなどして徹底的にコストパフォーマンスを追求する〝低品質低価格〞の店に二極化しています。

私たちは、中間流通を省略したことにより、一般の専門店に比べ、圧倒的な低価格で地鶏料理を提供できるようになったのです。高品質高価格か、低品質低価格しか存在しなかった外食産業の中で、高品質低価格という新たな価値に挑戦したといっても過言ではないでしょう。

川上の生産者と川下の外食産業を直結させたことによって、もう一つ実現できたのが、第1次産業の活性化です。

今の日本は、農家の人たちの作った生産物が買い叩かれ、そこから複雑な中間流通を経て、消費者には高値で売られている構図があります。そのため、生産者の多くは低所得に悩み、この構図が農業や漁業の衰退を招く一因ともいわれているのです。しかし、私たちが直接農家と契約を結んで取引を始めることで、生産物が適正な価格で売買されるようになり、彼らの所得向上にも貢献できたと考えています。

また、自社運営をしている宮崎県日南市の養鶏場や食肉処理場、加工センターでは、約300人の従業員が勤務しており、地域の雇用の創出にも貢献しています。

私は自分たちの事業を、単なる外食産業だとは考えていません。第1次産業にまで深く関わっている以上、もっと広い概念である「食産業」を生業にしている会社だと定義しています。例えば、自社に養鶏場があることにより、私たちは生産者の方たちがどんな思いや苦労を重ねながら、地鶏を育てているか、肌で感じることができます。実際に、社員を宮崎の生産現場へ送り込んで実地体験をさせ、アルバイトにはその様子を映像で見せているのですが、そうすることで、彼らに「自分たちの役割は何か」を考えさせるのです。すると、食材を提供する意味を自ずと理解するようになり、生産者の思いや食材へのこだわりをお客様に一生懸命伝えようという意識に変わっていきます。

考えてもみてください。これまで日本の外食産業では、生産者と外食店が中間業者によって分断されていたため、生産者は消費者の求めを知らないまま、また外食店は生産者の思いを知らないまま、料理やサービスを提供してきました。

けれども本来は、川上のことをよくわかっている人間が、川下の仕事に携わるというのが、あるべき姿だと思うのです。私たちが、会社のミッションとして「食のあるべき姿を追求する」と謳っているのには、そんな意味があるのです。

米山 久

Profile

1970年東京都生まれ。
2001年にエー・ピーカンパニーを立ち上げ、飲食業に参入する。"みやざき地頭鶏" に出会い、2004年に居酒屋「わが家」を開業したことがきっかけで、2006年、宮崎県に農業法人を設立し、自社養鶏場と加工センターを立ち上げる。2011年には自社漁船による定置網漁を開始し、漁業での第1次産業への進出も果たす。そうした中で、飲食業が農水産業に直に関わることの重要性を感じ、日本の第1次産業を変え、さらに第6次産業のリーディングカンパニーとなることを目指す。2014年1月現在は「塚田農場」「四十八漁場」など15業態173店舗を展開中。2013年9月、東証一部上場。

Contact

株式会社エー・ピーカンパニー

〒105-0012
東京都港区芝大門2-10-12 KDX芝大門ビル9F
TEL : 03-6435-8440
URL : http://www.apcompany.jp/

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