空室を病児保育施設に転用女性が安心して働ける社会の構築を目指す

有明こどもクリニック 院長 小暮裕之

小暮裕之Hiroyuki Kogure

有明こどもクリニック

院長

2016.04.13

休診日は祝日のみ、有明エリアの頼れるホームドクター

地域の医療に役立ち、社会福祉にどう取り組んでいけるのか。私は医師として、自分で課題を発見し、解決することで、地域住民のみなさんが安心して生活できる社会づくりに役立ちたいと考えています。

たとえば、私が院長を務める有明こどもクリニックは、2014年4月から休診日を祝日のみとしました。これは、有明エリアの子育て世代の不安を解消したかったからです。

開業当初の休診日は、週2日。それでも、他院が休みの日でも病気のお子さんを診られるように、日曜日は診療していたのです。しかし、有明エリアの人口が増えるにしたがって、患者さんの数も増えていきます。そうすると、休診日の翌日には、診療しきれないほど混雑するようになりました。その問題を解消するために、診療日を増やしたというわけです。

診療日を増やした理由は、もう一つあります。2014年春、これまで有明エリアの小児診療の中心施設であった昭和大学豊洲クリニックが移転。かわりに、昭和大学江東豊洲病院が新設されたのですが、こちらは急性期病院で、紹介状がない場合には初診時選定療養費5400円が必要です。それまで、当院と昭和大学豊洲クリニックの休診日は補完関係にあったのですが、小児科のない空白の曜日ができることになり、患者さんも大変困っていました。そこで、祝日以外を診療日としたのです。その背景には、昭和大学江東豊洲病院の小児科の先生たちに、非常勤として診療してもらえるようになったことも後押しとなりました。

現在、患者数は、年間のべ3万8000人。必然的に患者さん一人あたりの診療時間は短くなりますが、これまでの経験と最新の医療情報を習得することによって、適切な診療を行えているという自負はあります。今後も、前線に立って診療をしながら、地域の医療に貢献していきたいと思います。

子どもを総合的にケアする小児総合診療

私が目標とするのは、〝小児総合診療〞です。それは、どういうことか。病気やケガなどの症状を診るだけではなく、なぜ、そのような結果になったのか、防ぐためにはどうすればよいのかなど、患者さん自身をケアするということです。症状だけではなく、人を診ることで、予防にもつなげたい。そのためには、本人の成長や発達、小児患者の家族に寄り添っていくべきだと考えています。

思い返すと、私が小児科医を志したきっかけも、総合的に患者さんに向き合える医師になりたいと思ったからです。医師の専門分野は、世間のイメージとは違い、かなり細分化されています。肝臓、胃、心臓など、臓器ごとにバラバラになっているんです。私は、医師はできるだけゼネラリストであるべきだと思っています。人を総合的に診療できる医者になりたい。人が生まれて成長していくその過程を診たい。家族を診たい。こうした医師像に一番近かったのが、小児科医だったのです。

小児総合診療を意識し始めたのは、勤務医時代に日本の小児医療の現実を知ってからです。当時、日本の新生児医療および乳児医療における救命率は、先進国の中でもトップレベルを誇っていました。しかし、幼児に対する治療となると、がくんと成績が落ちて、下から数えたほうが早いくらいだったのです。

幼児の死因として大きな割合を占めるのは、不慮の事故ですが、子どもの事故をケアする医師というのは少ないのです。外科医には子どもを苦手としている人が意外に多くいますし、子どもが専門の小児科医は外科的治療を苦手としていたりと、幼児の救急医療分野が宙に浮いているわけです。その問題を解消するため、私は、小児の救急医療と集中治療を勉強しました。そうすれば、重症の子どもたちを救えるはずだと思ったのです。

さらに、実際に診療を続けていくうちに、両親や祖父母などの保護者にひと言でも指導できていれば、未然に病気やケガを防ぐことができたのではないかというケースに数多く出合いました。自分が地域の最前線に立って、家庭をも含んでケアしていけば、もっと苦しむ子どもを救えるはず。家庭だけでなく、地域のホームドクターになりたい。こんな思いで開業したのが、「有明こどもクリニック」です。現在では、クリニックを拠点として、病児保育施設をつくり、社会の役に立ちたいと考えています。


書籍「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言 」から掲載】


Profile

2010年9月開業。院内は、病気の子どもが緊張せずに診療時間まで待てるように、ポップなブロック細工の内装で飾られています。開業当初の休診日は、火曜日と土曜日の週2日制でしたが、有明エリアの人口急増による需要の高まりを受け、2014年に祝日のみ休診の体制へと変更。小児総合診療を信条に掲げ、病気やケガなどの症状を診るだけでなく、事故や病気を未然に防ぐことを目標としています。院長の小暮先生は、日本の問題点である少子高齢化を危惧し、子育て世代の女性が安心して働ける社会づくりに尽力。空室やオフィスビルを利用した病児保育サービスのシステムづくりを模索しています。

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書籍
「空室が日本を救う!イノベーティブ企業22社からの提言」

日本社会が抱える課題の一つに空き家、空きビルなどがある。この課題解決に必要なのが発想の転換、アイデアである。人口が減少し、若者たちのワーキングスタイルが変わりつつある今、スペースの用途を単に住まいやオフィスに限定する従来型の発想では、本当の意味での課題解決には結びつかない。外国人や企業、シングルマザーなど入居困難者や介護、保育、クラウドソーシングなどといった用途で空きスペースを必要とする人が増えている現状を鑑み、自由な発想でスペースを活用していく事こそが解決の糸口となる。そして、こうした取り組みは空室問題の解決だけではなく、女性就労や子育て支援、医療、介護、インバウンドなど、一見空室とは関連性がないようにも思える様々な日本の課題を一括して解決する可能性を秘めている。そこで、本書では画期的な発想で空室問題の解決にあたる20社の実例や知見、ビジネスモデルを紹介する。

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