コンサルティング会社を再定義する
株式会社 エル・ティー・エス 代表取締役社長 樺島 弘明

株式会社 エル・ティー・エス

樺島 弘明Hiroaki Kabashima

代表取締役社長

2015.10.06

会社の危機により突然社長に就任

本来、私は起業などまったく考えていませんでした。

大学卒業後、私はある外資系保険会社に就職しました。その後、コンサルティングも手掛けるITベンチャーに転職し、大手金融機関や製造業の営業改革をお手伝いしていました。ところが、自社が経営に行き詰まり、プロジェクトの停止という事態に陥ったのです。

事業停止により、私たちが失業することはかまいません。しかし、小さなベンチャー企業に仕事を依頼した、クライアントの担当者に多大なご迷惑をおかけするのは何としても避けたかった。そこで、私たちはプロジェクトを担当していた6人で受け皿となる会社を設立し、その仕事を丸ごと引き継いだのです。

半年ほどでそれがうまくいき、なんとか責任を果たせました。ようやくホッとしたのも束の間、今度は創業メンバーの社長が体調を崩して仕事ができなくなるという事件が発生しました。同時に銀行からは「引き落としができない」という連絡。慌てた私たちが口座を確認すると残高は僅わ ずかで、財務諸表を見ると大赤字。しかも株主企業に7000万円もの借金がありました。

もはや倒産は避けられない状況でしたが、私たちには「まだ何もやりきっていないのに、会社をたたむのは嫌だ」という思いがありました。そこで、倒産を覚悟の上で私が社長に就き、事業の継続を決断したのです。

でも「やるだけやって、ダメなら仕方ないよね」という軽い気持ちでは絶対に上手くいきません。私たちは、自分自身に覚悟を問うために、3ヵ月間は給料ゼロ。向こう1年の給料は、社会人1年目水準と定めて走り出しました。

それによって腹が据わった私たちは、まさしく寝る間も惜しんで働きました。1年間の休日も3、4日程度。まだ27歳前後とみんな若かったため、たまに飲み会などもしていたのですが、夜10時に終わるとそのまま会社に戻って仕事をしたりもしました。

メンバーはもともと優秀な人間ばかりでしたので、本気を出せば風向きが変わります。それがお客様にも伝わったのか、大きな仕事が次々と舞い込み、7000万円の借金は1年半で返済しました。必死な毎日でしたが、今考えると、たくさんの難問に真正面からぶつかる日々はとても貴重で楽しい経験でもありました。

人格に優れたコンサルタントを増やす

現在、主力の一つとなっている事業は、ITシステムを導入する際のコンサルティングです。これはITを活用して業務改革を実現したい側と、それを提供する側とを円滑に繋ぐ仕事です。

たとえば、A社がITシステムを導入して、何らかの業務を効率化したいとします。その時、そのシステムを開発する会社(ベンダー)と取引をするわけですが、専門知識や経験をもつ担当者がA社にいない場合、品質やプロセスなどにおいてベンダーとの間に齟齬が生まれ、うまく協力関係を作れず、双方が納得いく取引にならない場合が少なくありません。そこで当社のコンサルタントが双方の間に入り、問題の可視化やその解決策の提案、期待する要件の伝達などを行い、プロジェクトを理想的なゴールに導くのです。

この立場でコンサルティングを行う会社は非常に少なく、しかも100名以上のコンサルタントがいる会社は、国内には当社を含め5社しかありません。クライアントからすると、プロジェクトの専門家がパートナーになることで自分たちがやりたいことの実現に近づけますし、また、ベンダーにとっても、プロジェクトが健全に進むため私たちの存在は歓迎されています。すべての関係者から喜ばれることが、この仕事の大きな魅力と言えるでしょう。

もちろん、この仕事ならではの難しさもあります。プロジェクトの成功とは、設定されたゴールを達成するだけではありません。システムが導入されて業務が円滑にまわる、効率が向上することはもちろんのこと、お客様と私たちの協働プロセスであるプロジェクトを通じて、お客様側の人材が成長し、「仕事って大変だけど面白い」「また一緒に仕事がしたい」と思ってもらえることも欠かせません。そのため、コンサルタントには、能力だけではなく、人格・人物も問われることになります。

一般的にコンサルタントは、「頭は切れるが、少し嫌な感じの人間が多い」と言われます。たとえば、友人との飲み会で「君の話の要点は三つだね」と言ったり、横文字を好んで使ったりして賢く見られるように振る舞う人も多いです。恋人との会話中に「結論から先に言ってくれない?」などと言ってしまう神経の持ち主も1人や2人ではありません。

コンサルタントは、人格や人物を問われる仕事でありながら、現実はそうでもないという状況がもどかしい。クライアントから頼られることも多いので、自分を賢く見せることが大切であると誤解し、自分は何でも物事をわかっていると錯覚してしまっているかもしれません。

私はこのようなコンサルタントの実状とイメージを変えたいと思っています。そのため、採用基準は明確で、当社が求める人物像は「賢い、フットワークが軽い、性格がいい」という三つ。これらを満たさないと務まらない仕事と再定義したいのです。著名な経営者も述べていますが、人として「終わっている」人間に、いい仕事など絶対にできませんから。

そこで当社では、日本を代表する企業で役員などを歴任されていた方々に顧問やアドバイザーについてもらい、若手の育成を図っています。世の中で超一流と言われる方々の物事の考え方、謙虚さ、勉強熱心さ、教養の深さ、オーラなどを若い時から感じて学んでほしいのです。お付き合いを重ねることで、しっかりした礼節も学べます。

現在、日本のコンサルタント人口は約2万人です。当社はそのうちの百数十人ですので、まだ影響力はありません。しかし、当社が500人、1000人と増えていき、その誰もが優れた人格を備えた人間であれば、「コンサル業界は、頭がいいだけでは通用しない」という認識に変化していく可能性もあるでしょう。

そして、いずれは世界的な外資系コンサルファームと肩を並べるブランド力を備えていくことが当社の目標です。私の世代でそこまで成長させるのが理想ですが、遅くとも次世代までには実現するつもりです。

それは決して夢物語ではないと思っています。クライアントは当社の仕事ぶりを「よくわかってる」という表現で評価してくれます。著名な外資系コンサルとも仕事をしている皆さんですが、プロジェクト成功には何が必要で、その実現を支えてくれるのは当社だと思ってくれている。これは何よりも嬉しいことです。

樺島 弘明

Profile

1975年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業後、 ING生命保険株式会社入社。
その後、ITベンチャーにて営業担当ゼネラルマネジャー。
2002年3月にLTS設立に参画し取締役に就任。同年12月より現職。

Contact

株式会社 エル・ティー・エス

東京都新宿区新宿2-8-6 KDX新宿286ビル2F(受付)
http://lt-s.jp/

関連書籍

書籍
「これから働くならこの会社でしょ」

働くって、こんなにおもしろいことだったんだ。就活、転職、起業のヒントがきっと見つかる!
斬新な発想が光るベンチャー企業25社トップからの熱いメッセージ集。

ご購入はこちら

週間アクセスランキング