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社会が求めるサービスを
創り出す

ディップ株式会社

冨田 英揮 Hideki Tomita

代表取締役社長 兼 CEO

「ピンチはチャンス」――困難を好機に変える、発想の転換

ところが、再びピンチが訪れる。東証マザーズへの上場3日前になり、ヤフーから提携解消を通告されたのだ。「こんな状態で上場しても、すでに株主となってくれた人々を裏切ることになる」。そう考えた冨田は、上場を断念した。

しかし、上場当日に予定していた東京湾のディナークルーズパーティは中止しなかった。提携も上場も消え、イベントまで中止しては、社員の士気が下がると考えたからだ。

「これはヤフーからの『卒業パーティ』だ!と(笑)。実際、前々から集客をヤフーに依存することに危機感を持っていたので、自社で集客力を高める戦略を準備していたんです。提携解消は自社ブランドを強化するチャンスなのだと、皆に伝えました」

すると、社員たちのモチベーションは下がるどころかさらに高まり、ある社員からは「ヤフーとの提携がなくなるのが楽しみです!」という声さえ上がった。

全員でクルーザーからベイブリッジを眺め、再チャレンジを誓ったわずか5ヵ月後、ディップは晴れて東証マザーズへの上場を果たす。

上場によって得た資金を投じたのは「人材」だった。200人規模の新卒採用を実施し、ディップならではの風土を形成することに力を注いだ。

しかし、再び大きな壁が立ちはだかる。2008年のリーマン・ショックにより、求人マーケットは3分の1にまで縮小し、人材サービス会社の多くが人員削減を行った。そんな環境下でも、ディップは「人こそが財産」を信念に、一度もリストラを行わなかった。

これを機に、景気に左右されない事業の必要性を感じ、医療・介護マーケットに着目。ここで誕生したのが看護師の転職支援サービス『ナースではたらこ』である。

「変化への対応はベンチャー企業にとって不可欠だ」と冨田は言う。

「私のモットーは『ピンチはチャンス』。追い込まれたときはいつも、視点や角度を変え、なんとかこの状況を好転できないかと考えています。リストラをしなかったのは大正解でした。逆風下でも彼らを守り育て続けたことで、景気回復後のダッシュ力がすごかった。もし彼らがいなければ、現在の業績拡大はあり得なかったでしょう」

ディップには成長意欲の高い人材が集まり、一人ひとりが「ディップを自分たちで創り上げる」という気概を持つ組織となった。

強いブランド力を築き上げた今、経営の根幹を揺るがすような大きな危機はそうはやってこないだろう。しかし、基盤が固まって安定しつつある環境下においても、社員が成長できる機会を提供し続けたいと冨田は考える。

例えば、人材ビジネスの枠にとどまらない新規事業に取り組むほか、社員が新規事業を提案するチャンスとして「ドリームインキュベーション制度」などを設けている。スキルアップを目指す人には、ビジネススクールを無料で受講できる制度も用意した。

「人間、同じことをしていると飽きるもの。だから、仕事をマンネリ化させず、常に変化やチャンス、刺激を提供してあげたい。Dream・Idea・Passionの理念に共鳴して集まってくれた仲間だからこそ、一人ひとりの成長のために何が必要かを考えることが、私の責任だと感じています」

インタビュアーの目線

「夢・アイデア・情熱」のフレーズには勢いある社風を感じますが、勢いだけではないよう。IBMやヤフーといった大手との提携にも、浮足立つこともあぐらをかくこともなく、リスクを含めた「その先」をしっかり見すえ、地道な戦略をも遂行できるからこそ、時流をとらえた成長を実現しているのでしょう。人材業界が一気に冷え込んだリーマン・ショック時、リストラをしなかったことにも驚きました。「人こそ財産」の本気度が伝わります。

インタビュー・編集/垣畑光哉青木典子ニシブマリエ

Profile

1966年愛知県生まれ。1990年、株式会社地産入社。その後、父が手がけるゴルフサービス会社や英会話スクールなどの運営を手がける。1997年ディップ株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。

Contact

ディップ株式会社

東京都港区六本木3-2-1 六本木グランドタワー31F

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