いつでも運を活かして適応する力を整えておく
ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO 出口 治明

ライフネット生命保険株式会社

出口 治明Haruaki Deguchi

代表取締役会長兼CEO

2015.03.03

すべり止めで日本一の生命保険会社に

大学は京都大学の法学部に入りましたが、ちょうど学生闘争が盛んな時期で教室が封鎖されていました。学生時代は集中力が継続するので、多い時は1日15時間ほど読書をしていました。お腹が空いたら学生食堂でカレーを食べて、また本を読む生活です。

私は司法試験を受けて弁護士になろうと思っていたので、みんなが就職活動を始めても、さして興味はありませんでした。しかし、一緒に弁護士を目指していた友人が「すべり止めにどこかの企業を受けておこう」と言い出したので、付和雷同的に従いました。その頃の就職戦線は完璧な売り手市場で、「32社すべて内定をもらったけれど、50社くらいまで頑張ろうか」と冗談を言う同期がいたほどです。

友人の下宿のそばの三条京阪駅から電車に乗り、大阪に向かいました。京阪電車なので、淀屋橋駅に着きます。その駅の上に、日本生命の本社があり、友人が「この企業もたくさん採用しているらしい」と言うので行ってみました。

長髪、セーター、ジーパン姿の私たちを見て、何をしに来たのかと尋ねられたので、「2人とも将来は弁護士になりますが、司法試験に落ちた場合に備え、すべり止めを見つけるために大阪に来ました」と答えたところ、担当の方に「万が一司法試験に落ちたら、2人ともうちで引き受けます」と言われました。結局、司法試験に落ちたので、これもご縁だと思って日本生命に就職し、それから34年間勤めました。もともと生命保険という業界にも日本生命という企業にも興味がなく、日本生命が日本一大きな保険会社であることも知りませんでした。もしも大阪に行くのに阪急電車に乗っていたら、阪急百貨店に就職したかもしれません。私は、人生はそんなものだと思っています。

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO 出口 治明

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適応した人が生き残る

就職して最初の2年間は京都支社で働き、次の5年間は大阪本社の企画部、それから29歳で東京に来ると、43歳でロンドンに赴任するまで、途中1年間は日本興業銀行に出向しましたが、あとはMOF担、つまり現在の財務省の渉外担当を務めました。

1ヶ所に長く留まる従業員は珍しく、普通は2、3年で異動します。ちょうど金融制度改革が始まったので、その関係でMOF担を続けることになったのです。

私は、60歳でライフネット生命保険という、74年ぶりの戦後初めてとなる独立系の生命保険会社を開業しました。これもご縁であり、運だと思っています。

運は、偶然やってきます。棚から落ちてきたぼた餅を食べられる人は、たまたま棚のそばにいた人です。ただ、落ちてくるタイミングに合わせて走り出し、口を開いてぼた餅を食べることができるのは、適応する力を持っている人です。

例えば上司が、「この面白いプロジェクトを、誰か新人に任せてみよう」と思った時に、二日酔いでよれよれの新人と、元気いっぱいの新人がいたら、元気な新人に任せるでしょう。運が来るタイミングは自分でコントロールできなくても、いつでも運を活用する適応力は、自分で整えておくことができます。ダーウィンの進化論と同じで、運を活いかして適応したものだけが生き残ると考えています。

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO 出口 治明

Profile

1948年三重県生まれ。
京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当すると共に、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年6月より現職。主な著書に、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『直球勝負の会社』(ダイヤモンド社)、『仕事に効く 教養としての「世界史」』(祥伝社)など。

Contact

ライフネット生命保険株式会社

URL:http://www.lifenet-seimei.co.jp/

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