障害者の仕事・教育に
おける課題を解決し、
「誰もが挑戦できる」
社会を創造する

株式会社D&I

杉本 大祐Daisuke Sugimoto

代表取締役社長

善意に隠された“偏見”に疑問を抱き、独立起業

福井県の海沿いにある田舎町に生まれた杉本は、幼少期から中学生まで同じ仲間と育ってきた。中には、障害があったかもしれないと思う子どももいたが、当たり前のように一緒に過ごしてきたため、特別視することはなかった。小さなコミュニティだったからこそ、誰に対しても分け隔てなく、正直に接する姿勢が身に付いた。気心知れた友人と育ってきたことで、今の飾らない人柄が形成されたようだ。

高校まで福井で過ごし、大学進学を機に上京。大学時代はアルバイトに明け暮れた。やりたいことが見つからないまま卒業が迫り、当時大量募集していた企業に就職を決めた。ハードな営業活動が有名だった出版社で2年間、教材販売に従事。退職後、1年間フリーター生活を送った。

地方の商店でアルバイト中、店の非効率な採用活動に疑問を感じたことがきっかけで、人材業界に興味が湧いた。そして、人材派遣業の株式会社グッドウィル・キャリアに入社。その後、当時の代表が新たに設立した株式会社ジェイブレインに移った。

そこで任されたのが、新規事業の障害者雇用支援サービスだった。杉本は早速、営業活動を開始したが、思わぬ壁にぶち当たった。企業、行政機関、福祉施設、どこへ行っても「障害者をビジネスにするのか」と非難され、取り合ってもらえない。

「こんな時代錯誤の市場があるのか、と驚きました。まさに“腫物に触る”感じ。誰にとっても働くことは当たり前なのに、何かと理由をつけて行動に移さない。『障害者にできるわけがない』と決めつけることこそ、偏見ではないか。ある種の気持ち悪さを覚え、憤りを感じました。それ故に、一生かけてでも自分がやらねばならない、と思ったのです」

粘り強く営業を続け、1人で始めた事業は、気付けば10人の組織になっていた。そして障害者自立支援法の施行を機に、障害者雇用の潮流が変わると、杉本たちのサービスが少しずつ受け入れられるようになってきた。すぐの雇用には結びつかなかったが、「サービスをきちんと体系化すれば、雇用はもっと進むはず」。そんな希望を見出すことができた。

ところが、3年後、リーマンショックが発生し、人材サービスを本業とする会社本体が影響を受け、縮小を余儀なくされた。

「この事業は上手くいかないことだらけ。だからこそ、面白みとやりがいを感じていました。世の中がまだ追い付いていない分野に市場を創ることができれば、もっと障害者雇用が活性化する。この事業を続けたい。そう考え、D&Iの設立に踏み切りました」

障害者雇用促進事業と教育事業を成長させながら、杉本が次に目指すのは、障害者の真の「自立」だ。これまで「就職」を出口として経済面での自立を一つのゴールととらえていた。しかし、障害者も親が先立った後は、独りで生きていかなければならない。

そこで現在、実現に向け計画を進めているのが、障害者対象のシェアハウス事業だ。経済、精神、生活面のバランスを整えるための支援を目的とし、独り暮らしのためのトレーニングの場としてサービスを提供していく予定だ。

杉本はいつも、社員には「普通って何?」と問いかける。自分自身が持っている『普通』という概念が、時には自分の成長を阻むことがあるからだ。既成概念や偏見、思い込みを一度捨て去ることで、豊かな発想が生まれ、新しいことに挑戦できると考えている。D&Iは、経験や社歴に関係なく、意欲のあるメンバーにはどんどん仕事を任せる風土だ。

「創業時に決めた企業理念、『BEYOND ALL BORDERS』には“壁を乗り越える”という意味を込めています。私は『障害者』という一括りにされた言葉が好きではありません。障害者である前に僕らは同じ人。同じ人なのに障害や病気という壁があるなら、それを越えられる社会をつくりたい。『挑戦したい』と思う人には、その壁を越えていけるよう『人と人』として向き合いながら、全力でサポートしていきます。また、働き方改革の一環で推奨されているテレワークは、障害者の在宅雇用と親和性が高く、今後の需要と拡大が見込めます。まだまだ可能性を秘めたこの業界で、『壁を乗り越え、誰もが挑戦できる社会』を目指し、これからもたくさんの挑戦をしていきます」

インタビュアーの目線

はにかんだ笑顔と穏やかな語り口で、人をホッとさせる雰囲気を持つ杉本社長。誰に対しても「腹を割って話をするほうが心地良い」と仰います。デリケートな事業分野だからこそ、杉本社長の正直で率直な姿勢が多くの企業や保護者の方、社員の皆さんから信頼を集めるのでしょう。一方でビジネスパーティーなど、多くの人と交流する場は苦手なのだとか。遠慮なく意見を交わせる社員の皆さんと過ごす時間を一番大切にしているそうです。

インタビュー・編集/青木典子高橋奈巳 撮影/平山諭

Profile

1974年生まれ。福井県出身。大学卒業後、人材サービス会社で人材派遣、人材紹介、他アウトソーシング事業を経験。2005年より株式会社ジェイブレインで障害者雇用支援事業を立ち上げ、2009年に株式会社D&Iを創業。障害者が「当たり前に挑戦できる社会」を創出するため、障害者の雇用支援、教育事業を展開中。

Contact

株式会社D&I

東京都港区芝5-14-13 アセンド三田3F

http://d-and-i.jp