世界に出る理由は「そこにお客様がいるから」

株式会社フューチャースピリッツ 代表取締役 谷孝 大

谷孝 大Dai Tanitaka

株式会社フューチャースピリッツ

代表取締役

2015.04.23

関係作りに2年費やした上海の合弁会社設立

フューチャースピリッツは、サーバーのホスティングサービスを主力事業とする会社です。多くのホスティング会社がサーバーのレンタルに終始するのに対し、当社ではサーバーの運用・保守・管理にまで自社対応しています。当社のような低価格でこうした付加価値サービスを提供している会社は、非常に少ないと思います。

当社が付加価値サービスを提供しているのには、お客様に鍛えていただいたという面が大きいですね。当社は、EコマースなどのBtoCビジネスをやっているお客様が中心です。Eコマースは、どんなにアクセスが集中しても1秒たりともサーバーが落ちることが許されないシビアな世界です。そのシビアな環境で培ったノウハウが、今の私たちの技術力のベースになっています。

私たちが上海に進出することになったのも、お客様から声をかけていただいたのがきっかけです。私たちのお客様が成長著しい中国のマーケットに注目して、次々と調査に乗り出したり、進出し始めた2007年頃、中国でのホスティングサービスについての問い合わせが数多く寄せられるようになりました。

「サーバーなんてどこにあっても同じ」と思われるかもしれませんが、中国から日本のサーバーにアクセスしようとすると、かなりの時間がかかります。ちょうど日本の15年前くらいのインターネットの接続スピードの感覚です。また中国の場合は、国がネットの検閲を行っているために、突然ブロックをされて日本のサーバーにアクセスができないということも起きます。だから現地に進出した企業は、中国国内にサーバーを置かざるを得ないわけです。

ところが中国のデータセンターは、技術力にもサービスにも難があります。今はさすがにそんなことはありませんが、当時は金曜日の夜に何らかの理由で機械に不具合が起きてホームページにアクセスできない状態になったら、月曜の朝まで諦めるしかないというケースもありました。これはWebサイトをビジネスに活用している企業にとってはあり得ない環境です。そこで当社のような、サーバーについての高い運用・管理・保守技術を持ち、お客様の問い合わせにも営業がすぐに駆けつけ、しかも日本語対応する会社が求められたのです。

私も中国でのビジネスには関心がありました。会社設立の準備のために上海を訪れるたびに、新しいビルができて街の風景が一変しています。でも一歩路地に入ると昔ながらの家並みがあって、Tシャツ姿のおじさんたちが暇そうにトランプで遊んでいたりする。新しいものと古いものが入り交じった混沌たる様に魅力を覚えたものです。

ただし、初めて私が上海を訪れた2007年から、会社を設立した2010年まで、ずいぶんと時間がかかってしまいました。当初は自前で会社を作ることを考えていたのですが、やがて私たちのような業種はライセンス取得が難しく、合弁の道を探る必要があることがわかりました。しかも出資比率は私たちのほうがマイノリティになる。それもあってパートナー探しに時間を費やすことにしたのです。

今の現地でのパートナーとは、資本提携するまで2年ぐらいの年月をかけてじっくりと関係を築いてきました。「これでもし裏切られたなら、自分の見る目がなかったということだ」という諦めがつくぐらいには、コミュニケーションを取ってきたつもりです。また、先方のビジネスに私たちの技術力を提供するなど、当社と良好な関係を続けることのメリットも作っています。

外国の企業と資本提携をするときには、つい相手を警戒してしまいがちです。けれども「ビジネスを成功させて、お互いにハッピーになりましょう」という姿勢で臨めば、裏切られることはそんなにないと思います。逆にこちらが相手を利用しようとすれば、相手もこちらを利用しようとします。これは日本人だろうが中国人だろうが同じです。

上海では、私たちの日系企業向けのサービスが受け入れられ、今では1000社近い企業と取引をさせていただいています。最近は反日暴動のときの日系企業への破壊行動などの影響もあって、中国でのビジネスを躊躇する企業も多いようですが、それでも中国のマーケットに可能性を感じて、新たに進出する企業は確実に存在しています。当社の新規契約のペースも落ちていません。むしろブームに流されて中国進出を考える企業が減り、本気の企業ばかりになったと感じています。

私は一時的に日本商品への不買運動が起きたとしても、一度日本の商品の品質の高さを知ってしまった中国の消費者は、それを手放すことはできないと思っています。中国は日中問題だけではなく人権問題や民族問題などさまざまな問題を抱えていますが、それでもこれからマーケットは確実に伸びていきます。チャンスが大きい国だと思います。

世界各国で均質のサービスを提供できれば勝機がある

フューチャースピリッツでは2011年にマレーシアのクアラルンプール、2013年にタイのバンコクに、新たに現地法人を立ち上げました。中国でのサーバーの運用・保守・管理のノウハウがある程度溜まってきたので、このノウハウを活かしてほかの国でも同様のサービスを展開できるフェーズに入ってきたからです。

タイとマレーシアを選んだのは、やはりそこにお客様がいるからです。今のところ私たちの顧客は日系企業です。ですから日本の企業が進出しているところには、私たちも進出したいと思うのです。それは、将来的に東南アジア全域に拠点を設けることを意味します。毎年1〜2件ぐらいのペースで拠点を増やしていき、2017年には東南アジア10ヵ国でビジネスを展開しているのが目標です。

東南アジアは中国と比べれば、一国あたりの市場規模はとても小さいものです。ASEANで地域統合が進められているとはいうものの、国ごとに政治体制や経済状況やインフラの整備度がそれぞれ異なるので、大手のホスティングサービス会社にとっては参入しにくいマーケットでしょう。だからこそ小回りが利く私たちベンチャー企業にとってはチャンスが広がる市場です。

私たちの戦略は、ASEAN全体を面で押さえるというものです。それぞれの国単位では、日系のホスティングサービス会社はあります。しかし国を超えて事業を展開している会社はほとんどありません。私たちがタイやマレーシア、また今後展開を計画しているほかの国、例えばインドネシアなどでも、同じ品質のサービスを提供できる体制を構築すれば、お客様は、新しい国に進出するたびに新たなホスティングサービス会社を探す手間が省けます。

さらに、現在のお客様は日系企業ですが、やがては世界中の企業をお客様にしたいと思っています。例えばアメリカの企業がタイに進出するときにも、私たちのソリューションを選んでもらえるようになりたい。世界中の企業が世界でビジネスを展開するときに、そのベースを支えているのは日本の企業、フューチャースピリッツという状況を実現したいんです。

谷孝 大

Profile

1977年兵庫県生まれ。
少年時代からコンピュータに親しみ、プログラム開発をして雑誌への投稿などを行う。1996年大阪大学工学部に入学後、世界中に一瞬でつながるインターネットの可能性に魅力を感じて、フューチャースピリッツを個人事業として創業。1998年合資会社を設立。事業拡大に伴い、2000年6月京都リサーチパーク(KRP)へ活動の場を移し、有限会社フューチャースピリッツを設立(2001年1月に株式会社に改組)。サーバーホスティング事業を中心に、クラウドサービス事業、Webプロデュース事業を行う。2010年に中国の企業と資本提携、その後、マレーシア、タイにて現地法人を合弁で設立し、海外での事業展開を拡大中。

Contact

株式会社フューチャースピリッツ

京都本社
〒600-8815
京都府京都市下京区中堂寺粟田町91番地 京都リサーチパーク9号館 7F
TEL : 075-326-3700
URL : http://www.future-s.com/

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