
真面目におもしろいことをしよう!企業のビジネスが輝くような“世界観(ストーリー)”を世に展開し、顧客とのコミュニケーションを力強く後押しする
数字で人の魅力は計れない
SNSマーケで大切なことは
「その人」をよく知ること
何のために働くか?
私は家族のために働きたい
株式会社Lintus
代表取締役
李 雨瀟 / Yuxiao Li
大きな瞳にきゅっと上がった口角がつくる、弾けんばかりのビッグスマイル。瀟洒な洋服に身を包んだ彼女の名は、李雨瀟(り・ゆいしょう)。PRやキャスティング業を担う株式会社Lintus(リンタス)の代表を務めつつ、自身もインフルエンサーとしていくつものSNSで発信を行っている。
Lintusという社名には、彼女の想いが詰まっている。自身の名字「リ」に始まり、世界への扉を思わせる「international」、そして仕事を通して「私(I)」だけの世界を「私たち(US)」の世界に変えていきたいという願いを社名に込めた。
「私は自分のいいところは自信を持って言えないけど、誰かのいいところなら永遠に挙げられます。社会の中で生きていく以上、他人への見え方一つでいろんなことが変わってきてしまいます。だからクライアントの良いところを見つけて、どう発信していくかを一緒に考える。この特技は、PRにもキャスティングにも活かされています」
SNSマーケティングの世界では、フォロワー数やエンゲージメント数など数字で価格を決めることが多いが、李は数字をあまり意識していない。それは、数値化できない部分に価値が詰まっていることを知っているからだ。それぞれのインフルエンサーが持つ魅力やファンの特性、ときには彼女ら自身もまだ気付いていない才能の芽を見抜き、クライアントとインフルエンサー双方にとってWin-Winとなるベストマッチングを創出する。設立から日が浅いながらもLintusへの仕事の依頼が絶えないのは、こういった丁寧な仕事ぶりが評価されている証だろう。
PRやキャスティングを生業にするようになったきっかけは、李自身が読者モデルを経験していたこと。「モデルを始めてから人生が変わった」――過去、自分に自信を持てなかった彼女だが、発信を通して自己肯定感を高めていったという。発信が持つパワーを誰よりも信じているのだ。
李が生まれたのは、中国の北京。幼稚園の頃、両親の仕事の都合で来日した。日本語がまったく話せず、李の記憶に残っているのは、中国人であることを理由に周囲からからかわれていたこと。異国の地で生きるため、母親からはスパルタ教育を受けて育った。
「毎朝、母が出す日本語の小テストがあったんです。子どもながらに悪知恵が働いて理由を付けて朝の勉強をサボろうとすると、いくら遅刻しようがそれが終わるまでは本当に学校に行かせてくれなくて。私が大きくなってから苦労しないようにという母なりの努力だったと思うのですが、遊びたい気持ちにフタをしてきたことは今のパーソナリティにも多少影響していると思いますね」
中学生になったとき、李はダンス部に憧れを抱いたものの、友達に誘われ入部したのは体操部だった。夕飯のメニューを決めるときも、好きな色を選ぶときも、友達を優先させ自分のことは後回しにするタイプだった。
「今でも割とそうなのですが、私には『本当にこれがしたい』というものが正直あまりないんです。家族を大切にしたい、家族に幸せになってほしい、それ以外の欲求が薄いような気がします。勉強勉強の毎日を渋々こなしていたのも、自分のためというより、母が喜ぶ顔を見たいという理由でした」
そんな李だったが、高校生のときに初めて「自分がやってみたいこと」を見つける。渋谷を歩いているとき、ファッション誌「ViVi」の読者モデルにスカウトされたのだ。反対する母を押し切り、その世界に飛び込んだ。
一見、芸能界は外見だけで判断される場所と思われがちだが、李が見た世界はそうではなかった。そこで知り合ったミスコン出場者やアナウンサーたちは、キラキラしていながらも努力を惜しまない人たちだった。私も「可愛い」と「努力」を両立させて働きたい。そう思った李は、大学を卒業すると化粧品会社に就職した。
化粧品会社では、工場や販促部などさまざまな部署をまわり、その後店舗開発を行う直営店事業部に配属になった。その部署の女性本部長が、前のめりに学んでいく李の姿に早々に気付き、直々に面倒を見てくれる存在となった。李個人のためにスキルアッププログラムを作成してくれたり、取引先の重役との会食をセットしたりと、後継者を育成するように、手塩にかけられている実感があった。
しかし、李は部長の厚意にそのまま身を委ねるわけにはいかなかった。なぜなら、当時役職についていた多くの女性マネジャーは家庭を持つことをあきらめ、身を粉にして働いていたからだ。キャリアウーマンとしての生き方に憧れを抱きつつも、李にとって結婚と子育てのない人生は想像できなかった。すべてを費やしてくれた母親から一時は離れたいと思ったものの、自分にとって「家族は切っても切り離せない存在である」と気付く。
「外で稼ぐか、家で子どもと過ごすか。私の両親は、日本で生き延びるために稼ぐ方を選んだので、私は家でいつも一人だったんです。今でも、友達と一緒にいても消せない寂しさがあります。だから、私は自分の子に同じ思いをさせたくない気持ちをずっと持っています」
これから長期間にわたって育ててもらった後に辞めたのでは、部長に対する裏切りになるのでは――そう考えた李は、3年弱で化粧品会社を去ることにした。
退職後、個人事業主として日本企業の中国進出の手伝いや、通訳の仕事を買って出るように。それらの仕事と並行して、AmebaブログやInstagramを通して自身のライフスタイルを発信していた。若くして独立し、自由に生きる彼女の姿は多くの人を魅了し、ブログやSNSでファンが付くようになっていった。
「自分は外国人で、学歴もあるわけではない。いろいろなコンプレックスを持っていても、『自分の好きなことをして生きているよ』ってことを伝えたくて発信を続けていました。モデル業も継続していましたが、複数の出演依頼を見て『私より○○ちゃんが適任ではないか』と思うことが頻繁にあったんです。それが、キャスティング業の始まりです」
人を励ますつもりで行っていた発信だが、一つひとつのコメントから自分が励まされることも多かった。この体験をもっと広めたい。自分が前に出ていくより、素敵な周りの人々をみんなに知ってもらいたい。そんな想いでキャスティングを始めたが、プライベートでも自然と友人の背中を押すことが多くなっていった。
「すごく素敵な写真を撮る女の子がいたんです。絶対にもっと有名になるし写真家として活躍できる!と言い聞かせ応援。すると、みるみるうちにフォロワー数が増えていって、今では海外の撮影案件を請け負ったり、作品が1枚数万円で売れたりするような人気フォトグラファーに。何よりうれしかったのは、発信して周囲から反応を受け取ることで、彼女自身がとても生き生きした表情を見せるようになったことです。一人ではなかなか踏み出せないことでも、味方がいれば安心して挑戦できる。そんな環境をつくっていきたいです」
今でも寂しさを抱えていると話す李だが、寂しさが薄まる瞬間がある。それは、友人やクライアントなど、人と一緒に何かに向けて取り組んでいるときだ。誰かを助けることで、自分も助かる。そんな感覚があるからこそ、社名に「US」とあるように、人とのつながりや信頼を大切にしている。
そして李には今、最も幸せにしたい相手がいる。それは、自分に愛情を注いで育ててくれた母親だ。母親との会話の中で、「恩返しをしたいから」と欲しいものを尋ねたとき、自分の心の奥底にある気持ちに気付いたのだ。
「『ママはあなたたちを育てることにしか興味がなかったから、今何をやりたいかがわからない』と言うんです。私はこれを聞いて、号泣してしまいました。母のためにいくらお金をかけようが、私と一緒に過ごす時間以上に親孝行になることはないんだなって。私は、家族のために生きていきたい。仕事はもちろん頑張りますが、家族の存在は常に私の価値基準になっています」
李は今後、Lintusのチームを家族のように育てていきたいと話す。これまでは主に自分一人で動いていたが、チームをつくればより影響範囲も広くなるからだ。家族もチームもインフルエンサーも、皆の背中を押すことが彼女の生きがい。発信を通して自信をつけてきた李にとって、発信の素晴らしさを社会に伝えていくことがミッションなのだ。
幼い頃からさまざまな困難を乗り越えてきたという李さん。インタビュー中も終始笑顔で、それを感じさせない華やかさがありました。しかし、言葉の一つひとつから彼女の強さが滲み出ていました。何に対してもまっすぐな意見から、多くのクライアントが彼女の真摯な仕事を評価していることがよく伝わってきました。これから新たな挑戦として、チームで活動をしていきたいのだとか。どんなチームになるのか、今から楽しみです。
1987年、中国生まれ。5歳より日本に移り住む。高校在学時に、ファッション誌「ViVi」にスカウトされ、読者モデルとしての活動を始める。明海大学在学中には、テレビ番組やラジオ番組、ファッションショーなどに出演するなど、読者モデルとしての活動の幅を拡大。2009年、大手化粧品会社に就職。2011年に退職し、独立。フリーでPRや中国語の通訳、翻訳を行う。2017年、株式会社Lintusを設立。モデルのキャスティング業を担いながら、Instagramとアメーバブログを中心に情報発信を行う。
(ブログはこちら:https://ameblo.jp/li-yuisho)
(Instagramはこちら http://instagram.com/YUISHO_RI/)
インタビュー・編集:垣畑光哉、ニシブマリエ/撮影:平山諭
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フリーランスを活用する企業のリアルな声を、事業開発に活かす新しい営業職
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