
一度きりの人生“人生まるごと愛して”
夢に向かって邁進するのみ
家事代行サービスで
共働き家庭に笑顔を届け
愛であふれる社会をつくりたい
株式会社ベアーズ
取締役副社長
高橋 ゆき / Yuki Takahashi
家事代行サービスを提供する会社は、今でこそ数百社存在する。だが、まだ日本の一般家庭に家事を外注する発想が浸透していなかった時代に、掃除だけではない※マルチ型家事代行サービスのパイオニアとして誕生し、共働き家庭を支えてきたのが株式会社ベアーズだ。
(※マルチ型:料理、洗濯、片付け、ベビーシッターなど、オーダーメイド式のサービス )
専門技術を用いて家や家電を清掃するハウスクリーニングとは違い、ベアーズの推進している家事代行は、家族が日常的に行っている掃除や洗濯、料理などをサポートするというもの。夫の高橋健志とともにベアーズを経営する取締役副社長の高橋ゆきは、家事代行サービスが「日本の暮らしの新しいインフラ」のひとつとなるよう取り組みを行っている。
「家事代行は、女性の家事や育児の負担を軽減させるためだけのサービスではありません。女性がもっと輝いて笑顔になれば、きっと男性も幸せになる。そうして、家庭に優しい気持ちがあふれる社会を実現したい。この事業を通して、世界を愛で包みたいんです」
高橋は家事研究家としても活躍。メディアや講演、ドラマの監修などその活躍は幅広い。近年では、家事を専門的に学ぶ教育機関である『家事大学』を設立した。家事を人とシェアする新しい暮らし方の提案と雇用創出に加え、『ベアーズレディー』と呼ばれる家事代行スタッフの職業地位向上を目指している。
高橋は、日々の家事を「人生の所作」だととらえている。家族間の習慣や考え方を受け継いでいくものだからこそ、その内容は奥深い。
「たかが家事、されど家事。家事代行サービスや家事大学の力で、世界に誇れる日本の『家事道』を発信していきたいんです」
高橋は、写真家の父と起業家の母の間に生まれた。芸術家肌の父は、優しく人を癒す『月』のような人だったと高橋はいう。正義感が強く、繊細だった子ども時代を支えてくれたのも父だった。一方で、パワフルに会社を経営する母は、父とは真逆の人。例えるのであれば、灼熱の『太陽』。それでも忙しい仕事の合間をぬって、旅行に連れていってくれたこともある。父と母、それぞれ異なる形で愛を与えてくれたのだ。
25歳で勤めていた会社を辞め、出版社を立ち上げた母。当時は女性の起業は珍しく、高橋は苦労する母の姿をそばで見てきた。だが、周りは母のきらびやかな姿しか見ておらず、「成功者、お金持ち」とささやくように。そんな母の元から生まれた高橋も、何不自由ないお嬢様だと言われるようになった。
「周りから、お嬢様扱いされるのが本当に嫌で。小さい頃から地に足をつけて、自分の力で生きていこうと決めていました。反骨精神だったのかもしれませんが、親の七光りに甘えている、なんて一ミリも言われたくない子だったんです」
そんな幼少期を過ごし、短大の英文科に進学。カナダ留学が決まっていた卒業間近、困難に襲われた。突然、祖母が倒れてしまったのだ。そしてなんと、祖母を看病していた母までも倒れてしまう。カナダに行っている場合じゃない、そう思い留学は取り止め、日本で働くことを決意。IT企業の求人を偶然見つけ、面接を受けてみることに。卒業を目前にひかえた時期での応募だったため驚かれたが、事情を話すと「それならウチで」と内定が決まった。
採用された役職は、ソフトウェアのパッケージソフトを販売する営業職。唯一の女性営業職だったが、信頼できる上司や同期、お客さまに恵まれ、ノルマも達成していた。そんな日々が楽しいと感じていた半面、次第にやりがいが薄れていった。そして、IT企業を辞め母の会社に入社することを決断する。
母が経営していたのは、出版社。高橋は、経営者向けに新聞記事をクリッピングして届けるサービスを立ち上げるなど、事業に奔走した。そんな矢先、さらなる試練が高橋を襲う。
高橋が26歳のとき、母が経営していた会社が倒産したのだ。まさかそんなことが起こるなど、思いもしなかった。だが、破産管財人となった弁護士事務所から『同社の債権・債務の情報を提供しながらアシストしてくれる人が欲しい』と言われ、自ら手を挙げその役を買って出た。
「母は、25歳で会社を設立して、30 歳で私を産んでここまでやってきた。周りは経営者としてのきらびやかな母の姿だけしか見ていないかもしれない。でも、母だって人間です。苦労して泣いたり、病に伏せたりしながら頑張ってきたことを知っている。母の血と汗と涙がつまった会社の最後の花道を整えるのが、私の志事だと思ったんです」
前触れもなく一文無しになり、初任給から貯めていたお金も家族のために捧げた。しかし、破産管財人の下で働いた経験は、いわば両親からの人生の最高の贈り物だととらえている。会社が存続する上で必要なものや、破産した会社が処理される仕組みを学ぶことができたからだ。何より、会社の大きさと関係なく慕われる人間になることが大事だということも学んだ。
その後、香港の会社の経営者から声がかかり、夫と2人で香港に渡ることになる。そして、香港で第一子を妊娠、出産。不安だった海外での子育ては、スーザンというメイドの献身的なサポートによって支えられた。香港では、当時からメイドを雇うことが当たり前に行われており、彼女は料理や掃除をするだけでなく、高橋の精神的な支えになった。「たとえゆきさんが倒れてしまっても、私がこの子を抱っこしてあげられるから」という言葉には、1人で頑張る必要はないよという存在感の大きさに心を打たれたという。
日本に帰国した後、第二子を授かる。だが、日本に戻ってからの暮らしは、期待していたよりも不自由だった。香港のように20代の共働き夫婦が利用できるメイドサービスがなかったからだ。
日本は今後共働きが当たり前になっていく。母親が誇りを持って働き続けていくのは、ごく普通のこと。そんな世の中を前提として考えたとき、メイドサービスつまり家事代行がない暮らしはあまりに忙しすぎて「夫婦」「家族」「自分」という大切なものの存在が見えなくなってしまうのではと危機感に苛まれた。
「家事代行を通じて、ひとつでも多くの家庭に、そして社会に笑顔を創出したい。だから私たちは世界を愛で包むため、ベアーズレディという現実的な実働部隊を家庭に提供していこうと思ったんです」
こうして1999年、「家事代行の産業を創ろう!」を高橋夫妻の合言葉に、家事代行サービスを行う株式会社ベアーズが産声を上げる。
母の会社が倒産したとき、母の周りにいた人たちは次々と離れていった。その姿を思い出すと、今でも心が痛む。会社の経営者としてではなく、人として必要とされる存在にならなければいけない。あのときの経験が心技体を充実したベアーズの社員、『ベアーズびと』を育てたいという想いを生んだ。
ベアーズびとには3つの柱がある。まず、ベアーズの哲学(ベアーズフィロソフィー)を共有していること。次に、その哲学を持ちながら自分を見失わないで個性を発揮できるDNA。そして、絶えず知識や技術を磨き続ける実現力だ。また高橋は、経営者としても個人としても、『そこに愛はあるのか?』と自問自答することを自身の行動基準にしている。
「お客様へお手紙を1通書くにしても、お電話の受け応えひとつにおいても『そこに愛はあるのか?』ということがすべてです。社員も互いに問い掛け合って欲しいです」
今後は、経営者として家事代行サービスの社会的存在価値の素晴らしさをもっと伝えていきたいと言う。また、社員にも人生を悔やまないような仕事をして欲しい。この人生でよかった、と思える方向に伴走していくことこそ使命だと考えている。
祖母や母の看病、会社の倒産といった試練を経験し、ベアーズ設立2年後に過労で自身も体調を崩し入院したこともある。困難の連続のようにも見える過去の出来事もすべて財産だと誇る高橋には、だからこそ伝えたいメッセージがある。
「振り返った時にいい人生だったと思うためには、『今ココ』を一生懸命生きるしかないんです。今をあきらめて生きると、過去も全部否定することになる。今、この瞬間に自分の人生のピントが合っていれば、過去にどんな苦悩があったとしても、よかったと理解できるんです。ベアーズで働く社員たちにも、それを伝えていきたいですね」
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「考えるのではなく、感じること」を語る高橋さんの言葉は、聴く人を時に翻弄しながらも、どこか心地よい刺激を頭や心に与えてくれる不思議な力に満ち溢れています。同席した若手取材スタッフたちの名前をすぐに覚えてしまい、その名を何度も呼び掛けては、愛情たっぷりに言葉のキャッチボールを楽しまれる様子からは、多くのファンを抱える所以が伝わってきました。
家事代行サービスのパイオニアであり、リーディングカンパニーである、株式会社ベアーズの取締役副社長。 同社が創業以来、日本社会へ提唱している「利用者への新しい暮らし方」「従事者としての日本の新しい雇用創造」には、高橋ゆき自身の原体験が大きく影響している。 社内では主にブランディング、マーケティング、新サービス開発、人材育成担当。 家事代行サービス業界の成長と発展を目指し、2013年一般社団法人全国家事代行サービス協会設立以来、副会長を務め、2019年4月より会長に就任。 経営者として、各種ビジネスコンテストの審査員や、ビジネススクールのコメンテーターを務めるほか、家事研究家、日本の暮らし方研究家としても、テレビ・雑誌などで幅広く活躍中。 2015年 には世界初の家事大学設立、学長として新たな挑戦を開始。 2016年のTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」でも家事監修を担当した。 1男1女の母。
インタビュー・編集:垣畑光哉、川辺美希/撮影:新見和美
「人」「食」「社会貢献」を起点にビジネス総合力を身に付け、即戦力として活躍
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